全日病ニュース

全日病ニュース

控除対象外消費税 「10%引上時は困難だが、10%の間に解決すべき課題」

控除対象外消費税
「10%引上時は困難だが、10%の間に解決すべき課題」

 【全日病の2014年度夏期研修会】
野田毅氏が語る。診療報酬による対応も困難視。2018年を念頭に抜本策を検討か

 全日病の2014年度夏期研修会が熊本県支部(山田一隆支部長)の担当で、8月31日に熊本県阿蘇市で開かれ、阿蘇立野病院の上村晋一理事長、熊本県看護協会の高島和歌子会長、自民党税制調査会の野田毅会長が講演した。
 上村氏は「阿蘇地域における医療の現状」と題し、人口当たりの医師数や医療従事者数が熊本県11医療圏で最も少ない阿蘇医療圏における医療機関連携の取り組みを紹介した。
 阿蘇地域の入院患者の圏域内受診率は4割以下と低く、住民の多くは他圏で受診している。急性脳卒中の9割、急性心筋梗塞の10割など、重症救急患者の約7割が他の医療圏に流出している。
 上村氏は、「昔から圏域で自己完結というのが夢であった」と述懐した。その現状を変えたのは地域医療再生基金で、23億円が阿蘇の医療連携強化や救急医療再生に投入された。
 その中心が「中核病院の機能強化・整備プロジェクト」で、公立(阿蘇市国民健康保険)の阿蘇中央病院が療養病床を転換するなど急性期に特化した上で新築移転、阿蘇医療センターと改名、この8月に診療を開始した。
 阿蘇中央病院の再生は公立病院改革プランにもとづくもので、地方公営企業法の一部適用から、指定管理者を配置して全部適用へと転換、収益向上を目指す態勢を整えた。
 このプロジェクトに地域の医療機関は「阿蘇中央病院経営改革委員会」を立ち上げて協力、救急患者は阿蘇医療センターに集めるという連携体制が構築されたという。
 上村氏は、「これで圏内の受療率が2割上がった。我々は過疎地における医療再生のモデル地域になろうとしている」とプロジェクトを高く評価した。
 その上で、「公的病院周辺の民間病院は何をすべきか」と提起。①連携の充実、②役割分担の徹底をあげ、「急性期は阿蘇医療センターにまかせ、その後の回復期以降を民間がしっかりやっていく」と整理。「急性期をまかせた医療センターをしっかりとしたものにして地域全体の底上げを図りたい」と今後を展望した。
 高島氏は「地域における看護提供体制の今後の展望」と題して、県内の看護提供体制を概括した上で、今回の医療法等改正が突き付けた課題に看護提供者がどう対応していくべきかを具体的に論じた。
 続いて登壇した野田毅自民党税制調査会長は「消費税引き上げが医療界に与える影響と病院の今後の対応」という演題で、医療消費税をめぐる状況を解説した(別掲)。  

□野田毅自民党税制調査会長の講演要旨

 3党合意の一体改革は消費税10%を前提としたもの。消費税の引き上げは10%が一歩で、8%は半歩に過ぎない。医療と介護の計画期間が一体となる2018年には、10%を超えた長期の展望を出せるだけの説得力のある絵を出すべき責任が政治の側にある。
 軽減税率については60団体からヒアリングしている。我々はその導入を10%の話としては予定していない。医療界からもそういう要請があったが、それがいかに難しいかご理解いただきたい。
 8%のときには病院団体にご理解いただいて、我慢してもらった。その時に「10%のときにはなんとかしてほしい」という話があり、我々は頭に置いている。
 しかし、この問題を本格的にやろうとすると、法人税の課税のあり方の問題を含め、根本から見直していく必要があるテーマと連動していく。同時に、診療報酬のあり方と連動してくると思うので、部分だけとってうまくいくということになかなかならない。
 しかし、どこかでやらなければならない。このままずるずるやっていったら絶対うまくいかない。これは分かっている。
 ではどの段階でやるのか。10%になったときではなく、その次のステップではしっかりしていかなければならない。といって、今のままの延長で10%のときも知らん顔というわけにはいかない、ということは我々も承知している。
 診療報酬で(消費税を)カバーするという論理には難しい問題がある。保険者にすれば「消費税が上がったら保険料がなんであがるのか」という話になりかねない。これに自己負担も関連してくる。
 これらの問題をどう乗り越えるか、つまり、診療報酬のあり方の問題とこの問題が連動してくることも併せて考えておかなければいけない。
(以下は会場からの質問に答えて)
 この問題を診療報酬体系の中だけで乗り越えるというのは至難の業だ。診療報酬体系のやり方そのものも含めて見直す必要がある。次回改定では、そんなことを頭に置きながら対応する必要がある。
 そのときには今の消費税の扱いも頭に置きながら対応するが、それらがセットしてできあがるのが2018年ということを頭に置きながら勉強を重ねる必要があると、個人的にタイムスケジュールを考えている。この問題は3年ぐらいかかる仕事だ。