全日病ニュース

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回復期リハ病棟 アウトカムいかんで「1日6単位超の疾患別リハは入院料に包括」

回復期リハ病棟 アウトカムいかんで「1日6単位超の疾患別リハは入院料に包括」

【2016年度診療報酬改定】
廃用症候群に対するリハを独立項目に。体制強化加算の医師専従要件を緩和

 中医協総会における2016 年度改定の審議は最終局面を迎えた(1 面記事を参照)。以下に12月2日、12月9日、12月11日における議論の要旨を紹介する。

12月2日の中医協総会 個別事項(5)リハビリテーション

◎リハの質に応じた評価に関する論点
 回復期リハ病棟のリハは医療機関ごとのリハの効果に基づく評価を行なうこととし、提供量に対する効果が一定の実績基準を下回る医療機関は、1 日6 単位を超える疾患別リハの提供を入院料に包括してはどうか。
◎廃用症候群のリハに関する論点
・廃用症候群に対するリハは脳血管疾患等リハから独立した項目にしてはどうか。
・急性疾患に伴う安静によって生じた廃用症候群については、原疾患に対する治療の有無にかかわらず、廃用症候群に対するリハの対象としてはどうか。等
◎維持期リハに関する論点
・要介護者被保険者の維持期リハの介護保険への移行の例外とすべき状態等として現行規定以外にどのようなものがあるか。
・脳血管疾患等リハ又は運動器リハを実施している、将来介護保険によるリハが必要と考えられる要介護者に対して、標準的算定日数の3分の1が経過する日までを目安に、介護保険によるリハの体験等の提案を評価してはどうか。また、そのような対応を伴わずに行なわれる疾患別リハの評価を見直してはどうか。
・体験として必要な介護保険のリハを医療保険のリハと併用できるようにしてはどうか。
◎施設基準等における人員配置の弾力化に関する論点
1)心大血管疾患リハビリテーション料
・例えば、循環器科や心臓血管外科の標榜がなくても、一部の疾患について、心大血管疾患リハの経験を有する医師が実施する場合などは実施できるようにしてはどうか。
2)リハ職の専従規定(略)
3)回復期リハ病棟入院料1 体制強化加算
・回復期リハ病棟の専従常勤医が入院外診療にも一定程度従事できるようにしてはどうか。
◎早期からのリハ実施の促進等に関する論点
1)ADL 維持向上等体制加算
・質や密度の高い介入を行なっている病棟のADL 維持向上等体制加算の評価を充実させてはどうか。
・例えば、入院直後に全身麻酔を伴う手術を行なった患者は手術日前後のADL 低下を除いて評価できるようにしてはどうか。
2)初期加算、早期加算、慢性疾患等の取り扱い
・「治療開始日」を基準に一定期間算定可能とされている初期加算と早期加算は発症や手術の日に基づいて起算することを原則としてはどうか。また、慢性疾患(廃用症候群を含む)は初期加算と早期加算の対象外としてはどうか。
・廃用症候群を含む慢性疾患に対する疾患別リハの標準的算定日数を超過したかの判断及び回復期リハを要する状態の判断に際しては、当該疾患と最初に診断された日(慢性疾患を複数回診断する場合でも医学的に一連のものはこれに含む)を起算日としてはどうか。
◎リハに関するその他の論点
1)医療機関外におけるリハ
・一定条件の下、医療機関外で行なわれるリハも疾患別リハとして評価してはどうか。
2)リンパ浮腫(略)
3)摂食機能療法(略)
【主な議論】
 この日は、まず、2016 年度改定に対する意見が支払側・診療側の双方から示された。また、「消費税率8%への引上げに伴う補てん状況」が報告された(1面を参照)。
 診療側の中川委員(日医副会長)は廃用症候群に対するリハの見直しを肯定した上で、「前改定で引き下げた点数を戻す」ことを求めた。介護保険リハへの移行に向けた医療保険リハとの併算定を認める案には、「まずは試行としてはどうか」と提案した。
 リハの提供量に対する改善効果が一定の実績基準を下回る回復期リハ病棟は1 日6 単位を超える疾患別リハを入院料包括とし、算定を認めないという事務局(厚労省保険局医療課)の提起に、診療側の猪口委員(全日病副会長)は、「患者特性によってリハの効果には差が出る。高齢や認知症などの患者は1 日6単位では足りないかもしれない」と反対した。
 また、維持期リハにおける介護保険と医療保険の併算定に関連して「今は通所リハよりも訪問リハのニーズが高い」と指摘、病院や診療所が訪問リハにより取り組めるような措置を求めた。
 リハにかかわる専従規定を緩和する案には賛成を表明。その上で「専従は常勤が前提とされてるが今や短時間労働が増えているので常勤換算を認めるべき」と、ADL 維持向上等体制加算の評価充実に対しても「その普及を図るなら、まずは、25 点という低い点数の引き上げが肝心」と注文をつけた。
 慢性疾患に対する疾患別リハや回復期リハ提供の判断にあたって最初の診断日を起算日とする案で、「慢性疾患を複数回診断する場合も医学的に一連のものはこれに含む」とある点にも、「急性発症の疾患はともかく、慢性疾患は他疾患の併発ごとに状態は悪化をたどる」として、「一連とするのは止め、診断ごとの起算を認めるべき」とした。
 さらに、「医療機関外でのリハも疾患別リハとして評価する」案には、「生活の色々な場面での訓練が重要。色々な場面でのリハを一連として20 分とするのではなく、場面場面で切って算定できるようにすべきではないか」と要望した。
 一方、支払側は維持期リハの介護保険移行に関する経過措置の再延長に反対した。要件を緩和する項目は点数も見直すべきと主張。ADL維持向上等体制加算について要件を追加して評価を高める案には賛成を表明する一方で、初期、早期、ADL維持向上等体制と3段階にわたる加算の整理を行なうことを提案した。

12月9日の中医協総会 入院医療(7)

◎急性期入院医療に関する論点
・平均在院日数が長い医療機関では診療密度が低い傾向がみられるが、こうした医療機関についてどう考えるか。
・急性期医療の必要な患者像を適切に評価し、急性期医療の機能分化を進めるための、7 対1 病棟における「重症度、医療・看護必要度」該当割合の水準についてどう考えるか。
・7対1病棟等における在宅復帰率の評価の見直しについてどう考えるか。
◎入院基本料の病棟単位による届出に関する論点
・7対1を届け出ていた病棟が届出を他入院基本料に変更する際に、一時的な仕組みとして、一部病棟に限り、病棟群単位で7 対1の届出を併せて認めることについてどう考えるか。
【主な議論】
 この日は、まず、改定基本方針が報告された(別掲記事を参照)。
 事務局は、すでに提起済みの一般病棟用「重症度、医療・看護必要度」の見直しを、A項目については、「7. 専門的な治療・処置」に「無菌治療室での治療」を加えた上で、8として「 救急搬送(搬送日より1〜2日間程度)」を新設。B 項目については「危険行動」と「診療・療養上の指示が通じる」を追加する、と整理。
 さらに手術等の医学的状況を表わすM 項目(①開胸・開頭の手術=術当日より5 〜7 日間程度、②開腹・骨の観血的手術=術当日より3 〜5 日間程度、③胸腔鏡・腹腔鏡手術=術当日より2 〜3 日間程度、④その他の全身麻酔の手術=術当日より1〜3日間程度)を新たに設け、「A得点が2 点以上かつB得点が3 点以上」「A得点が3 点以上」「M得点が1 点以上」のいずれかに該当する場合に重症者とみなす考え方で臨むことを提案した(3面の図を参照)。
 さらに、①一般病棟入院基本料の平均在院日数要件の引き下げ、② 7 対1 における「重症度、医療・看護必要度」該当患者割合の引き上げ、③ 7 対1 病棟等における在宅復帰の評価の見直しを提起した。
 事務局は、新たな該当患者割合で試算した結果、23%とすることで7対1は減床に転じ、25%では現在の病床数に対して2.9%〜4.9%の幅で、28%では9.1%〜11.1%の幅で減床すると予測。
 在宅復帰の評価の見直しについては、計算式と在宅復帰率の水準をともに変更する可能性を示唆した。
 事務局は、また、7 対1 病床の移行を促すために、7 対1 入院基本料の届出を他の入院料に変更する場合に限って、一定期間、一定数の病棟を7 対1 入院基本料として届け出ることができる“特例措置”の導入を提案した。