全日病ニュース
「重症度、医療・看護必要度」「病棟群単位」が最後の大きな論点
【報告 2016年度診療報酬改定 これまで中医協の議論より】
「重症度、医療・看護必要度」「病棟群単位」が最後の大きな論点
全体的に抑制傾向のリハ見直しには注意が必要。夜勤看護は実態的に改善
中医協委員(全日病副会長) 猪口雄二
平成27年12月11日の中医協総会における議論をもって大まかな論点整理は終了した。今後、12月21日頃に予定されている改定率の決定に従い、具体的な項目、点数が決定されることとなる。今回、これまでの中医協における議論について、主要な内容についてここに報告する。
●医療経済実態調査の結果(11月4日)は、一般病院の損益率が▲ 1.7%から▲ 3.1%に低下、民間病院では一般病棟入院基本料7 対1 の赤字が▲ 1.3%(前々期▲ 0.4%)となり、一般病院の病床規模別ではすべての規模で連続赤字、という結果となった。全日病の経営調査の結果も、総じて悪化という結果である。
●「消費税調査」の結果(12月2日)は、5%より8%の引き上げにおける診療報酬改定の対応による補てん状況は、マクロでは概ね補てんされているものの「ばらつき」が見られた、とされている。今後、この「ばらつき」について十分検証していくことを確認した。
●在宅医療に関しては、長期間にわたる重症者の医学管理の評価、1ヵ月に1回の医学管理の評価、同一建物における同一日診療の評価の組み換え等で、大きく点数設定が変化すると考えられる。
●二次救急については、夜間休日救急搬送医学管理料のさらなる評価、t - PA実施および冠動脈の検査・治療は「緊急手術を要する状態」として加算1を算定できる等の見直しが行われよう。しかし、我々は、より多くの状態、疾患について評価するよう要望している。
● DPCにおいては、①機能評価係数Ⅱの各項目重み付けの標準化、②入院期間Ⅲの点数調整、③「重症度、医療・看護必要度」「持参薬」「医療区分、ADL区分」のEF統合ファイルへの記入が計画されている。ソフト変更のかかる手間、費用についても十分考慮するよう申し入れている。
●リハビリテーション関係は大幅な見直しが行われそうである。まず、回復期リハについては、ベッド数や診療報酬の増加が著しいため、抑制の方向が打ち出されているが、その方法論として、アウトカム評価による単位数の抑制が打ち出されており、大きな焦点となっている。
また、廃用症候群が疾患別リハの一つに位置付けられ、多くの疾患・状態がここで算定することとなるようである。維持期リハについても、入院以外は強く抑制されそうである。このように、リハビリテーションは全体的に抑制傾向が強く、今後も十分注意する必要がある。
●夜間看護72時間の規定については、平成18年改定の導入以来大きな論点となってきたが、今回、月平均夜勤時間数の計算対象に含まれる従事者を一定程度拡大する方向が打ち出された。
具体的には、月当たりの夜勤時間数が16時間以下の者は夜勤時間数の算定から外されていたがそれを計算式に含むよう変更する等の見直しとなりそうである。看護基準による入院基本料の設定は変更されないが、実態的な改善が行われると考えられる。
● 7:1 入院基本料の病床数はやや減少に留まっているが、実際の入院患者数は前年度より大きく下回っており、空床率が増加していることが想像される。
・「重症度、医療・看護必要度」は大きく見直される。A横目に「無菌室治療」「救急搬送」が入り、B項目に「危険行動」「指示が通じない」が入る。さらにM項目として「術後管理」が入る。そして、重症者の算定は「A項目2 点+B項目3 点」「A項目3 点」「M項目1 点」の患者数の合計となる。
・これにより重症者の数は増加することとなるが、問題は現行の15%がどうなるかである。シミュレーションの結果からは25%というラインが強く打ち出された。これにより影響を受ける病床数は9.9%とされている。しかし、この数値は7:1 病床の35%が他の病床区分に変更することが前提となっており、実際には45%の病床が影響を受ける。日病協実務者会議では、急ぎ、各病院でシミュレーションを施行中であるが、実際に25%ラインとなると大問題となろう。
・上記の改正に伴い、これまで7 対1 入院基本料を届け出ていた病棟が他の入院基本料に届出を変更する際に、一時的な仕組みとして、一部の病棟に限り、病棟群単位で7 対1 入院基本料の届出を併せて認める、という案が打ち出された。
この一時的とはどのぐらいかという質問が多かったが、2年後の見直しとなると選択する病院が多くなるのではないだろうか。
●「手術・処置の時間外加算1」の見直しとして病床規模に応じた緩和が出ている。これについては、本当に必要である多忙な診療科では届け出できないという意見が多かったので、改善の方向となろう。
また「常勤配置の考え方」として、施設基準において複数の非常勤従事者の常勤換算を認める、育児・介護休業法で定める期間は週30時間で常勤扱いとする、という考え方が出された。これは四病協の要望事項が認められたことであり、喜ばしい。
以上のように、平成28年度も多岐に渡る診療報酬の変更項目が設定されている。特に、「重症度、医療・看護必要度」「病棟群制度」については、提示された内容を踏まえ、今後も大きな論点にする必要がある。
今後、内閣府による改定率の決定がなされた後、それに則った点数設定が行われ、諮問に対する答申案が作成され、さらに細かい通知等が作成されることとなる。全く気の抜けない時期であるが、会員諸氏からのご意見を頂き、他団体との連携を行いながら、実のある診療報酬改定が実現できるよう努力したい。