全日病ニュース

災害医療コーディネータの位置づけを議論

【厚労省・救急災害医療体制検討会】秋頃をめどに活動要領

　厚生労働省の救急・災害医療提供体制の在り方に関する検討会（遠藤久夫座長）は８月１日、災害時に都道府県が設ける保健医療調整本部に置く災害医療コーディネータの役割や組織の位置づけをめぐり議論した。DMAT（災害時派遣医療チーム）やAMAT（全日本病院協会災害時医療支援活動班）など、被災地で活動する保健医療活動チームの調整のあり方が課題となっている。
　直近では、西日本を中心とする豪雨災害で、様々な保健医療活動チームが支援活動を行った。また、災害の都度、新たな課題も生じており、特に、熊本地震ではコーディネータの位置づけが不明確で、調整不足が生じた。保健医療活動チームが現地で長く待機したり、連携不足で支援が必要な場所への派遣がない事態も生じた。
　保健医療活動チームには、公的な位置づけのあるDMATや日本赤十字社の救護班、DPAT（災害派遣精神医療チーム）のほか、JMAT（日本医師会災害医療チーム）やAMATなどがある。厚労省は、これらのチームを指揮し、情報連絡系統を明確にする体制を調整本部に設ける方針だ。
　災害時の医療体制は、基本的には都道府県が担う。保健医療調整本部を置き、保健所と連携しつつ、①保健医療活動チームに対する指揮または連絡および派遣調整②保健医療活動チームと情報連携③収集した保健医療活動に係る情報の整理および分析を一元的に実施する体制を目指している。

　災害医療コーディネータは地元の人が望ましい
　災害医療コーディネータは、調整本部に置く都道府県災害医療コーディネータと、避難所を管理する市町村との調整役を受け持つ地域災害医療コーディネータに分かれる。同日の議論では、調整本部の災害医療コーディネータが保健医療活動チームを統括する役割を担うべきとの意見が多かった。大阪北部地震の際のDMAT調整本部では、そのような体制が敷かれ、２人いる副本部長のうち１人が、その役割を担当した。
　全日病常任理事の猪口正孝委員は、災害医療コーディネータは地域の関係者が任命されるべきと主張。「地域のことがわかる災害医療コーディネータを災害医療のテクニカルな知識を持つ外部のチームが支援する形がよい」と述べた。「特に、地域災害医療コーディネータは、地域の医療機関を熟知している地元の人が望ましい」とした。
　厚労省は、同日の議論を踏まえ、秋頃をめどに都道府県に示す活動要領をまとめたい考えだ。
　また、厚労省は、７月25日付けで、ドクターヘリの安全運航のための取組みの通知を発出したことを報告した。神奈川県でドクターヘリが落着する事故があったことを踏まえ、安全運航の体制を強化するのが目的だ。
　ヘリを運用する「ドクターヘリの導入促進事業」の事業者は、補助要綱で設置が求められている「運航調整委員会」に加え、必要に応じて、「安全管理部会」を設置する。安全管理部会は、実際にドクターヘリに関連する業務に従事する人で構成する。
　役割は、①運用手順書案の作成②安全管理方策に関する協議③インシデント・アクシデント情報の収集・分析等とし、その結果を運航調整委員会に報告する。インシデント・アクシデントを速やかに報告し、深刻な事故につながらない体制を整える。