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ホーム全日病ニュース(2018年)第931回/2018年12月15日号患者の意思を尊重した終末期医療を目指して...

患者の意思を尊重した終末期医療を目指して

患者の意思を尊重した終末期医療を目指して

【ホスペックスジャパン2018】木村常任理事がセミナーで講演

 病院・福祉設備機器の展示会ホスペックスジャパン2018が11月20 ~ 23日に東京・有明のビッグサイトで開かれ、木村厚常任理事が21日に終末期医療をテーマに、会場内のセミナーで講演した。木村常任理事は、終末期の医療に対する関心が高まっていることを指摘。全日病の「終末期医療に関するガイドライン」を説明して、終末期の迎え方について、国民・患者の理解を求める活動が必要だと強調した。セミナーは、全日病と日本医療法人協会の共催となっている。
 かつての終末期医療は、1分1秒でも長く生きることが最良とされ、スパゲティ状態で、意識がないまま病室で亡くなることが多かった。木村常任理事は、「あまり苦しまずに尊厳を保った亡くなり方を望む人が増えている。多死社会を迎え、終末期の過ごし方を考えなくてはならない時代になった」と述べ、終末期医療に対する国民の意識が変わってきたことを指摘した。
 木村常任理事は、終末期医療をめぐる国際的な状況を説明。世界医師会が1981年の総会でリスボン宣言を採択し、患者の権利を認めて尊厳死(消極的安楽死)を容認することを確認した。その後、世界的に尊厳死や在宅死など本人の希望を尊重する動きが広がっている。
 日本医師会においても1992年にリビングウィルで患者が尊厳死を希望していれば積極的な延命治療を中止してよいとする報告をまとめている。しかし、リビングウィルが作成されることは少なく、患者の意思を尊重した終末期医療が一般に普及しているとは言えない。
 終末期医療の選択において、まず尊重されるのは本人の希望だが、本人の意識がなかったり、事前に意思を示していない場合は、家族に判断を求めることになる。しかし、独居の高齢者や、家族がいても遠くにいて判断できない場合などは難しい状況になる。
 終末期医療について日常的に考えたり、家族と話し合ったりする機会は少ないのが現状であり、医療現場で対応に苦慮することも少なくない。「家族が連絡を拒否するケースもある。家族全員の意向を確認することは困難なことも多い」(木村常任理事)。
 こうした状況を踏まえて、全日病は2016年11月に「終末期医療に関するガイドライン」をまとめ、患者の意思を尊重した終末期医療の選択について指針を示した。木村常任理事は、ガイドラインの内容を説明し、「遠くの親戚より近くの他人ということもある。代理人を決めて任せられるようにすることも大事」と述べた。
 2018年度の診療報酬・介護報酬改定では、終末期においてACP(アドバンス・ケア・プラニング)の考え方に基づいて対応した場合の点数が設定された。ACPとは、将来の医療およびケアについて、本人を主体に家族や近しい人、医療・ケアチームが繰り返し話し合い、本人の意思決定を支援するプロセスのことで、本人の人生観や価値観、希望に沿った医療およびケアを具体化することを目標にしている。
 木村常任理事は、生前の意思表明の重要性を国民に知ってもらう活動が必要であることを指摘するとともに、終末期医療については、画一的な法制化は望ましくないとする全日病の立場を説明した。
 全日病・日本医療法人協会の共催セミナーでは、このほかに下記の講演が行われた。
◇医療と介護の連携における介護医療院の役割を考える=全日病常任理事 土屋繁之
◇平成30年度診療報酬改定について=全日病医療保険・診療報酬委員会委員 杉村洋祐 福井 聡
◇医師の偏在と働き方改革から見えてくるこれからの医療の在り方=国際医療福祉大学赤坂心理・医療福祉マネジメント学部長 高橋 泰
◇ICTを使った治し支える医療への転換を本格化=全日病副会長 織田正道
◇医療機関の消費税問題-10%引き上げへの対応=日本医療法人協会会長代行 伊藤伸一
◇4月診療報酬改定の影響予測=石井公認会計士事務所所長 石井孝宜
◇医療現場での働き方改革と病院給食=日本医療法人協会副会長 小森直之

 

全日病ニュース2018年12月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] Untitled

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2008/081215.pdf

    2012年3月7日 ... 終末期医療のあり方で、全日病、救急、緩和ケア、尊厳死協会が見解. シンポジウム「
    終末期医療のあり方一ガイドライン、あるいは法制化は必要か」から. 全日病の「終末期
    医療の指針案」. 「救急医療における. 全日本病院協会常任理事 木村 ...

  • [2] 終末期医療に関するガイドライン

    https://www.ajha.or.jp/topics/info/pdf/2009/090618.pdf

    しかし、人は暮らしの中で家族と死の迎え方につ ... 終末期の定義も曖昧であり、さらに
    医療提供側と患者・家族が治療方針など ... 医療現場では、患者一人ひとりの尊厳
    守り、患者の意思を尊重する努力が行なわ .... 社団法人全日本病院協会 常任理事.
    池上 直己. 慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室 教授. 木村. 厚. 社団法人
    全日本病院 ...

  • [3] 第644回

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2006/060715.pdf

    終末期医療とは、がん患者に対する般病床、療養病床があり、終末期医思想が
    見え隠れしている。 ... 後は必ず終末期・死を受け入れなけ 「医療従事者にとって尊厳死
    の法制 ...... ケアの取り組み、在宅看取りの実施、 員の木村常任理事が、「当協会として
    .

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