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地域包括ケア病棟の評価を2つに分けることを検討

地域包括ケア病棟の評価を2つに分けることを検討

【中医協・入院医療等分科会】回復期リハ病棟は手厚い人員配置の評価を検討

 中医協の「入院医療等の評価・調査分科会」(武藤正樹分科会長)は7月21日、厚生労働省が提示したデータに基づき、地域包括ケア病棟入院料や回復期リハビリテーション病棟入院料をテーマに議論した。委員からは、地域包括ケア病棟について、「急性期病棟等と連携して患者を受け入れる機能」と「自宅等から患者を受け入れ、在宅療養を支援する機能」を分けて評価すべきとの意見が相次いだ。回復期リハ病棟は、リハビリ専門職の配置や患者の機能改善、退院後のリハビリの提供が論点になった。
 同分科会では、2016年度診療報酬改定の附帯意見に基づき、入院医療関連の調査を実施し、その結果を踏まえて議論している。今回は「地域包括ケア病棟入院料・管理料」「回復期リハビリテーション病棟入院料」の詳細なデータが示された。その上で、厚労省が論点を示したが、まだ明確な方向性を示すものにはなっていない。以下、今回示されたデータをみていく。
地域包括ケア病棟の役割を議論
 地域包括ケア病棟の届出病床数は増加傾向にあり、2016年10月時点で5万2,492床である。地域包括ケア病棟等は2014年度改定で導入され、その役割は①急性期からの受入れ(ポストアキュート)②在宅・生活復帰支援③緊急時の受入れ(サブアキュート)と整理されている。ただ病院の特色により、これらの機能のうち、どれを中心に担っているかには違いがある。
 入院患者の状況をみると、院内の他病棟から転棟した患者の割合が90%以上の病院が全体の45%を占める。さらに、自院に7対1、10対1の一般病棟のある病院で、入棟前の場所が「自院の7対1、10対1」である患者の割合が90%以上の病院は、約3割と多い。
 自院の中で、7対1、10対1の病棟から地域包括ケア病棟に転棟させてポストアキュートの機能を活用するケースが多いとみられる。
 地域包括ケア病棟の患者のうち入棟前の場所が「自宅等」である患者(サブアキュート)の割合が10%未満の病院は全体の35%を占め、逆にサブアキュートが90%以上を占める病院は13%だった。サブアキュートの役割を活用する病院は少ないことが確認された。
 平均在院日数をみると、入棟前の場所が「自宅」の患者は28日で短く、「自院の7対1、10対1病床」の患者は54日で長かった。
 地域包括ケア病棟に入院する患者の医学的な状況では、入棟前が在宅等の場合、「患者の状態が不安定で急性期の治療を行っているため、退院の見通しが立たない」が26.7%だが、在宅以外からの入院では7.9%と低く、入棟前が自宅等の方が、重症患者の割合が高い。
 提供している医療内容をみると、全体で、検体検査やX線単純撮影などが、生体検査、CT・MRI に比べて多い。
 また、手術の実施は患者全体の3.5%にとどまっており、輸血や胃ろう増設などが多い。リハビリは平均すると約7割の患者が受けている。
 在宅医療の提供状況をみると、地域包括ケア病棟のある病院で、往診・訪問診療を行っている病院や、訪問看護部門や訪問看護ステーションがある病院は約半数にのぼる。約3割が在宅療養支援病院の指定を受けている。
 これらのデータを踏まえ、厚労省は、「急性期病棟等と連携して患者を受け入れる機能」と「自宅等から患者を受け入れ、在宅療養を支援する機能」に着目して、患者の状態や医療の内容に応じた評価を検討することを論点とした。委員からは、両者の機能のどちらを担うかで、診療報酬の評価を分けるべきとの意見が相次いだ。ただ具体的にどのような基準で分けるかについては「患者の重症度の違いが把握できていない」、「入棟前の場所の違いだけで分けるのは難しい」など、同日のデータでは明確に分離できないとの意見が多かった。
退院直後のリハビリが課題に
 回復期リハビリテーション病棟入院料については、①リハビリ専門職の病床配置②患者の状態と機能の改善③退院直後の患者へのリハビリ提供─が論点となった。なお、2016年度改定で導入されたアウトカム評価はまだ調査結果が出ておらず、論点になっていない。
 回復期リハ病棟における専従PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)のリハビリ専門職の病床配置をみると、施設基準で定める人員よりも手厚く配置する病棟が多い。専従のPT3名、OT2名、ST1名を求める入院料1では、合計15人以上配置している病棟が少なくなく、中には40人近く配置している病棟もある。また、入院料2、3でも入院料1の基準以上で配置している病棟がある。
 このため、手厚い病棟配置に対する評価を今後の課題とした。
 患者の状態をみると、地域包括ケア病棟は「骨折・外傷(脊髄損傷以外)」が多いのに対し、回復期リハ病棟は「脳梗塞」が最も多い。患者の日常生活自立度は、回復期リハ病棟の方が低い。平均在院日数は回復期リハ病棟の方が倍以上長い。委員からは「回復期リハ病棟を機能の改善を目的とする病棟に統一できるか」との問題提起があり、機能改善を評価する指標が求められた。
 回復期リハ病棟退院後も何らかのリハビリを必要とする患者は6割以上を占めるが、退院1カ月後のFIM(機能的自立度評価表)の運動項目の合計点数が有意に低下することを示すデータがあり、退院後に必要なリハビリを早期に受けられる体制が課題となっている。現行の疾患別リハビリテーション料では、退院直後にリハビリを行った場合の評価がないため、退院後のリハビリに円滑につなげる仕組みが必要との認識を共有した。

全日病ニュース2017年8月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 地域包括ケア病棟入院料と回復期リハ病棟を議論|第895回/2017年6 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170601/news03.html

    2017年6月1日 ... 中医協総会(田辺国昭会長)は5月17日、次期診療報酬改定に向けた入院医療の議論
    で、地域包括ケア病棟入院料と回復期リハビリテーション病棟をテーマとした。地域包括
    ケア病棟に関して、国公立の7対1病院が自院の患者を転棟させる ...

  • [2] 地域包括ケア病棟への移行

    https://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/pdf/141007_5.pdf

    2014年10月7日 ... 地域包括ケア病床を返上し、全床7対1入院基本料の届出を行った後に、改めて地域
    包括ケア ... 回復期リハ病棟から地域包括ケア病棟への転棟は可能か? ... 自院の10
    対1病棟から自院地域包括ケア病棟に転棟した場合、救急・在宅.

  • [3] 地域包括ケア病棟 対象患者の拡大や回リハとの機能の違いの明確化が ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150701/news11.html

    2015年7月1日 ... このうち、地域包括ケア病棟入院料に関して、事務局(厚労省保険局医療課)は、回復
    の機能にそって患者を幅広く受け入れるために、病態 ... 患者の59%が自院の急性期
    病床から、18%が他院の急性期病床から、12%が自宅からの入棟。

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