全日病ニュース

医師の業務移管の提案で医療団体や関係職種から意見聴取

【タスク・シフティングに関するヒアリング】日医は総論的な意見を表明

　厚生労働省は６月18日に、第１回目の「医師の働き方改革を推進するためのタスク・シフティングに関するヒアリング」を開催した。厚労省は医師の働き方改革を実現するため、医師から他業種へのタスク・シフティングを重要施策と位置付けており、今後の本格的な議論に向け、30を超える職能団体からヒアリングを行う方針だ。
　同日は、日本医師会がタスク・シフティングについて、総論的な意見を述べたほか、◇日本義肢装具士協会◇日本視能訓練協会◇日本医師事務作業補助研究会◇日本言語聴覚士協会◇日本臨床工学技士会◇日本脳神経外科学会◇日本病理学会◇日本形成外科学会─から意見をきいた。
　日医の今村聡副会長は、タスク・シフティングの具体的な業務について、日医内で議論を行っているとしつつ、「現段階で表明できるものはない」と述べ、総論的な見解のみ示した。
　基本的な方針として、「医師によるメディカルコントロール（医療統括）」の下で、業務を行うことを原則とした。「新たな職種の創設ではなく、既に認められている業務の周知の徹底、並びに、それらが実践されていない場合の着実な検証を実行するべき」と述べた。
　具体的には、チーム医療における病院薬剤師や医療秘書の活用をあげた。
　法令改正や現行法解釈の業務改革をするのであれば、「適切なプロセスを経て行うべきである」とする一方で、「AI等のICTの活用は、医師のタスクをサポートするものとして、推進していくべき」との見解を示した。
　一方、日本脳神経外科学会は、移管可能な業務として、以下をあげた。
　◇血管撮影・血管内治療後の圧迫止血・止血確認・圧迫解除◇気管チューブの位置の調整、呼吸器管理、中心静脈カテーテルの抜去等◇鎮静が必要な患者、アレルギーのある患者の検査立会い◇血管内治療の介助業務◇脳卒中の初期対応◇救急車での患者搬送の際の同伴◇カンファレンス・回診の記録・オーダーなど入院業務の補助─など。
　その上で、タスク・シフティング全般について、「看護師から別の職種へのタスクシフト」が必要と主張した。
　また、日本病理学会は、◇手術検体等に対する病理診断における切り出し補助業務◇画像解析システムによるコンパニオン診断等に対する計数・定量判定補助◇分子病理診断におけるデータ解析◇デジタル病理画像の取り込み・機器の調整・データ管理等◇病理診断報告書のチェック─と、臨床検査技師を念頭に、認定制度などを伴う業務移管などをあげた。
　日本形成外科学会は、◇創傷治癒遅延症例に対する創管理業務◇各種再建手術における関連各科との調整業務◇美容医療に関するカウンセリング業務─などをあげた。特に、美容医療に関するカウンセリング業務について、詳細な説明を行った。
　関係職種からは、移管可能な業務について、以下が提案された。○日本義肢装具士協会（足部ケア、切断者への断端管理に関する指導、障害者総合支援法による補装具費支給における完成用部品の選択等の義肢装具等補助装具の使用の決定など６業務）○日本視能訓練協会（白内障および屈折矯正手術におけるオペレーター業務、脳障害などの後遺症に対する視機能回復訓練、訪問時の視機能検査業務および視機能評価など４業務）○日本医師事務作業補助研究会（検査手順の説明業務、医療記録（電子カルテの記載）、登録症例等の各種統計資料の作成の３業務）。基本的には、現行制度で可能であり、診療報酬などによる普及に向けた対応を求めた。○日本言語聴覚士協会（高次機能障害などの評価に必要な臨床心理・神経心理学検査種目の選択・実施および検査結果の解釈、嚥下訓練などにおける食物形態等の選択、嚥下検査全般の適応の判断と実施、結果の解釈など３業務）○日本臨床工学技士会（血液浄化に用いるカテーテル留置時の清潔補助、不要カテーテルの抜去、気管カニューレの交換、鼻咽頭エアウェイの挿入および抜去、内視鏡検査・治療時の処置具の捜査などの補助など29業務）