全日病ニュース

医師養成課程の偏在対策全体を分科会が議論

【医師需給分科会】総合診療医のあり方と必要数も検討

　厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」（片峰茂分科会長）は２月13日、医師養成課程における医師偏在対策全体を今後、分科会として検討していくことを決めた。総合診療医のあり方を含め、必要な養成数も考える。同分科会は、近くマクロ需給推計を行い、将来の必要数を見込んだ上で、医師養成数の見直しを議論するが、実効性のある医師偏在対策の検討も引続き続ける。
　医師養成課程においては、地域枠を含め医学部入学の段階、臨床研修制度の段階、専門医研修の段階がある。医道審の医師臨床研修部会や専門研修部会などが別に設定されているが、お互いが調整しつつ、同分科会が全体の偏在対策をまとめる方向だ。なお、専門医研修は日本専門医機構が行っているが、医療法により、国は都道府県の意見を聴いた上で、必要な措置を求めることができる（右図参照）。
　総合診療医のあり方と必要数の推計も課題に盛り込んだ。ただ、名称を含め総合診療医については、委員から様々なイメージが示され、共通認識と目指す方向性を一致させることが、今後の課題となった。その際に、キャリアパスを描けないことが、総合診療医が増えない大きな理由との指摘が相次いだ。
　全日病副会長の神野正博委員は、「日本専門医機構の総合診療専門医を専攻する医師はまだ少ない。しかし、医療機関で総合医的な医療を行っている医師は少なくない。全日病では、総合医育成事業を実施しており、医師のキャリアパスの一助としている。他の医療団体も総合医育成事業を実施しており、そのような医師も数に入れて議論する必要がある」と主張した。

都道府県別診療科ごとの必要医師数病院勤務医の推計で医師不足顕著に
　専門医研修の段階で、日本専門医機構は今年度の募集から、従来の大都市のある５都府県（東京、神奈川、愛知、大阪、福岡）に対する募集人数上限（シーリング）をやめて、新たに都道府県別診療科ごとのシーリングを導入した。その基になっているのが厚労省の推計である。今回厚労省は推計を精緻にする観点から、技術的な提案を行い、分科会として了承した。
　具体的には、①基礎データを最新のものに更新する必要があるときや、医師確保計画の策定サイクルに合わせて、推計を見直す②算出結果は目安であり、施策に利用する際は、幅を持たせて運用する③地域の実態や総合診療医のあり方などを検討する視点を持つ─。
　また、前回の分科会で、診療科別必要医師数の推計において、追加的に、病院勤務医だけの試算をすることを決めた。同日、厚労省が机上配布で暫定版の計算結果を提示した。
　神野委員は、推計結果の特徴を質問。厚労省は、「全体の推計結果よりも、病院勤務医の推計結果のほうが、将来の必要医師数と現状の医師数の差分が大きく出る傾向が示された」と述べ、医師不足の現状が顕著に表れることを説明した。診療所で働く医師が多い診療科ほど、その傾向が強まるが、神野委員は、「病院勤務医の比率が正しいか。資料をみると、（精神科医など）異論のある診療科もありそうだ」と精査を求めた。