全日病ニュース

全日病ニュース

医師の副業・兼業で緊急調査を実施

医師の副業・兼業で緊急調査を実施

【日医アンケート調査】労働時間通算の厳格化に危惧

 日本医師会は1月29日、「医師の副業・兼業と地域医療に関する緊急調査」の結果を発表した。医師の働き方改革への対応が議論されている中で、副業・兼業問題が最大の懸案事項に浮上している。調査から、労働時間の通算が厳格化されることにより、大学からの派遣医師の引上げが起こることなどへの不安が大きいことがわかった。
 医療機関調査では、8,343施設を対象にウェブでアンケート調査を実施し、44.5%の3,713病院から回答を得た。調査は昨年12月13日から28日に実施した。回答者の61%を医療法人が占める。次いで多いのが市町村の9%。
 医師の常勤数は「5~9人」が最も多く、28.8%、次いで「1~4人」が28.5%、「10 ~ 19人」が16.6%となっている。非常勤数は「20 ~ 49人」が最も多く28.1%、次いで「10 ~ 19人」が24.4%、「5~9人」が17.6%となっており、非常勤医師が多いことが示された。医療機関として、「専ら医師を派遣する病院」は4.4%に過ぎず、「専ら医師を受け入れている病院」が83.3%で大部分を占める。
 勤務医の副業・兼業を「病院長等が許可した場合のみ認めている」のは48.9%で、「各医師の自由意志にまかせている」は30.8%となっている。
 労働法制上、複数勤務の労働時間は原則通算する必要があるが、「通算に反対」が28.0%を占めた。医師への労働時間規制が施行されることへの不安では、「宿日直体制が維持困難になる」が最も多く、79.8%だった。「派遣医師の引上げ」を懸念する意見は62.9%。施設基準の中で、医師の人員配置基準を満たせなくなることへの不安も上がった(複数回答)。
 自由意見では、「都市部を除く全国の地域の病院の診療体制は、ほとんどが大学からの派遣に頼っている。一般の求人は医師にはそぐわない」、「これをやるなら競争原理が働く程度の医師の数の確保が必要だと思う」、「副業・兼業ありきで業界が回っており、病院に医師が常駐しなくてもよいかどうか国民レベルで議論が必要」、「兼業・副業の労働時間を把握すること自体が困難。医師本人からの申告等がなければ無理である。申告しない医師も多い」、「副業・兼業は単なる労務の提供としてだけではなく、技能の錬磨や地域医療の経験としての意味を重視していく必要がある」など、様々な意見が寄せられている。
 一方、大学病院・大学付属病院である医育機関への調査では、副業・兼業に関する取扱いで、「病院長等が許可した場合のみ認めている」が74.5%で多く、「各医師の自由意志にまかせている」は5.5%に過ぎなかった。「労働時間の通算に反対」は43.6%で、医療機関全体よりも多かった。
 同調査は、結果を踏まえ、「医師の働き方には様々なパターンがあり、一般の労働者と同じような副業・兼業への対応を医師の働き方へ単純に当てはめることによって、混乱が生じることを危惧する」とまとめている。

 

全日病ニュース2020年3月1日号 HTML版