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ホーム全日病ニュース(2020年)第958回/2020年3月1日号医療機関の評価の視点とするタスク・シフトの業務項目示す

医療機関の評価の視点とするタスク・シフトの業務項目示す

医療機関の評価の視点とするタスク・シフトの業務項目示す

【厚労省・タスクシフト/シェア検討会】事例を医療勤務環境改善センターの助言に活用

 厚生労働省は2月19日、医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会(永井良三座長)を開催した。現行制度の下で、タスク・シフト等が可能な業務のうち、特に推進する業務案を厚労省が示した。これらの業務項目を、評価機能が医師の時間外労働に関してB水準・C水準の指定を受けた医療機関に行う評価の視点に加える方向だ。
 厚労省は、これまでのヒアリングで提案された現行制度下で実施可能な業務のうち、「医師側団体(病院団体を含む)から提案された業務」、「特に長時間労働を行っているとされている複数診療科に関連する業務」、「月間で削減可能と推計される時間数が長い業務」などの考え方で、特に推進する業務の項目を示した。
 職種に関わりなく推進するものとして、◇説明と同意◇診察前の予診・問診◇各種書類の下書き・仮作成◇患者の誘導―をあげた。
 職種ごとに推進するものは、表のとおり。看護師について特定行為、助産師について助産師外来・院内助産などをあげた。
 これらの項目を中心に、どの職種にどの業務をシフト/シェアするかの判断は、それぞれの医療機関が行う。医療機関におけるタスク・シフト/シェアの取組みを推進するため、厚労省は、B水準・C水準の医療機関が医師の時間外労働の短縮に向けて策定する医師労働時間短縮計画の項目「管理者のマネジメント研修」、「医師全体に対する説明会」、「全職種の意識変革に関する取組」において検討する方向を示した。
 さらに、評価機能がB水準・C水準の医療機関に行う評価の中で、タスク・シフト等の取組みの評価の視点に、厚労省が示す業務項目を加える案を示し、異論は出なかった。
 厚労省はまた、評価機能による評価において、「S」「A」とされた項目について、評価結果と具体的な取組み内容を公表し、都道府県の医療勤務環境改善支援センターが医療機関に対して勤務環境改善を助言する際に活用するとの案を示した。これに対して日本医師会の今村聡委員が反対。厚労省は、勤務環境改善支援センターの助言に活かせる仕組みであればよいとして、公表の仕方を見直す考えを示した。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「2024年以前にも、タスク・シフト等を推進している医療機関の事例を収集すべき。また、B水準・C水準ではなくなった医療機関においてどのような取組みがされていたかが他の医療機関の参考になるので、タスク・シフト等の推進でB水準・C水準だけに焦点を当てるべきではない」と主張した。
 裵英洙委員は、タスク・シフト等を推進した後の医療安全上のアウトカムをチェックすべきと指摘した。
 一方、タスク・シフト等を進める上で法令改正が必要な業務についても引き続き議論を行った。静脈路の確保を診療放射線技師と臨床検査技師にシフトすることについて、厚労省は両資格の養成課程に必要な教育内容を追加し、すでに資格をもつ者には研修受講を義務づける案を示した。日本看護協会の斎藤訓子委員は、現行の教育カリキュラムの内容や医療安全の視点に基づき「看護師が行うほうが、医師の業務時間短縮のためには現実的」と慎重姿勢を示した。
 猪口委員は、「タスク・シフト等は現行の業務に基づき議論するのではなく、将来的に十分な教育や研修を受けた人が安全に医療行為を行えるようにしていくという議論である。前向きな検討をお願いしたい」と述べた。
 救急救命士の医療機関内での活用については、救急・災害医療提供体制等のあり方に関する検討会から議論の状況が報告された。

 

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