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ホーム全日病ニュース(2020年)第963回/2020年5月15日号訪問診療拒否される場合の在宅医療の診療報酬で特例

訪問診療拒否される場合の在宅医療の診療報酬で特例

訪問診療拒否される場合の在宅医療の診療報酬で特例

【中医協総会】「臨時の医療施設」の診療報酬の取扱いも決定

 中医協総会(小塩隆士会長)は4月24日、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う対応で、在宅医療などにおける特例を了承した。在宅時医学総合管理料等で求められている訪問診療の代わりに、電話等による診療を行った場合でも、在医総管等の算定を認める。医療従事者が訪問診療を拒否される事例が生じているためだ。また、地域で医療機関が不足した場合の「臨時の医療施設」の開設について、診療報酬の入院基本料は結核病棟入院基本料を準用し、他の加算などは通常通りの施設基準・選定要件とすることを決めた。
 なお、同日の中医協総会はオンライン会議の形式で行い、初めてYouTubeによるライブ配信により公開した。
 在宅医療等における一連の対応は、患家の患者・家族が新型コロナウイルスへの感染を恐れて、医療従事者に訪問しないよう要請する事案が生じていることを踏まえたものだ。厚生労働省は、患者が訪問を拒否する場合でも、まずは医療上の必要性を説明し、患者・家族の理解を得ることを前提として、それでも訪問を控えてほしいとの要請があった場合を想定した対応と説明している。
 在宅時医学総合管理料(在医総管)や施設入居時等医学総合管理料(施設総管)は、在宅医療が必要な患者に在宅療養計画を作成し、定期的に訪問診療を行い、総合的な医学管理を行った場合を評価している。在医総管では、単一建物の患者が1人で、月2回以上訪問診療する場合は月5,400点、月1回訪問の場合は月4,500点である。
 今回の特例では、月2回訪問診療の在医総管の場合、4月は訪問診療を1度も行っていなくても、算定できるようにする。5月以降の取扱いでは、最初の1カ月に限り、電話等再診が1回含まれていても算定可能とする。ただし、2カ月以上連続で、訪問診療1回と電話等再診1回の組み合わせとなった場合は、診療計画を変更し、月1回訪問診療の在医総管に変更してもらう。
 月1回訪問の在医総管の月1回訪問の場合、4月は電話等再診のみであっても算定できるようにする。5月以降は通常通りの取扱いとなる。
 あわせて、外来での特例と同じく、新型コロナウイルス感染症の患者(疑い事例を含む)に対する必要な感染症対策を講じた上での往診を「院内トリアージ実施料」(1回300点)として評価する。
 訪問看護ステーションによる訪問看護においても、同様の趣旨で対応する。月に1回は訪問看護を実施した上で、電話等による病状確認や療養指導を行った場合でも、特例的に、訪問看護管理療養費等を算定できるようにする。あわせて、新型コロナウイルス感染症の患者(疑い事例を含む)に対する必要な感染症対策を講じた上での訪問看護を「特別管理加算」(月2,500円)として評価する。
 中医協委員からは、「理学療法士や作業療法士が実施した場合も算定できるのか」との質問があった。森光敬子医療課長は、「今回は、電話等による病状確認や療養指導を行う場合の特例であるので、看護職員が実施する必要がある」と回答した。
 薬局による訪問薬剤管理指導では、電話等による薬歴管理、服薬指導、服薬支援、薬剤服用状況、薬剤保管状況および残薬有無の確認などを実施した場合に、薬剤服用歴管理指導料を特例で算定できるようにする。歯科の初診からの電話等診療に対応
 医科においてはすでに、初診からの電話・オンライン診療で診療報酬を算定できるようになっているが、同日、歯科における取扱いも決めた。電話・オンライン診療による初診料は、通常の261点より低い185点となった。通常の71%の点数だが、医科の初診料は74%の点数であり、若干、医科の減額幅の方が小さくなっている。「歯科訪問診療3」の点数を準用している。また、電話・オンライン診療を行う以前から、「歯科疾患管理料、歯科特定疾患療養管理料」を算定していた患者に対して実施した場合は、管理料として55点を算定できるようにする。
 歯科診療は、ほぼ処置または処方を伴う。このため、処置ができない電話・オンライン診療においては、処方を実質的な算定要件にして、処方がなければ、診療報酬が発生しない健康相談・受診勧奨の取扱いにするとの考えが示されている。

「臨時の医療施設」は結核病棟を準用
 地域で医療機関が不足し、やむを得ず、「臨時の医療施設」を開設する際の診療報酬の取扱いも決めた。「臨時の医療施設」は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくもの。都道府県知事が医療提供に支障が生じると判断すれば、都道府県行動計画で定める「臨時の医療施設」を開設できる。実施例は、まだない。
 「臨時の医療施設」は、消防法上の防火対象物や建築基準法の特殊建築物として課される技術的基準が緩和される。医療法第4条に規定する「病院等の開設」に関する規定の適用除外となる。ただし、医療法上の「総則」、「医療に関する情報の提供」、「医療の安全の確保」の規定は適用されるため、機能や収容できる入院患者に応じて、諸規定が適用されることになっている。
 診療報酬上の取扱いについて、入院基本料は「結核病棟入院基本料」を準用することを決めた。森光医療課長は、「特措法に基づいて応急的に医療を提供する臨時施設であることを踏まえ、柔軟な人員配置基準などに対応できる入院基本料となっている」と説明した。入院診療計画等の基準は、実情に応じた柔軟な運用とする。例えば、計画の簡素化や標準的なフォーマットの使用で構わない対応を図る方向だ。
 各種加算については、新型コロナウイルス感染症の中等症・重症患者の受入れで特例的に対応した診療報酬(救急医療管理加算、二類感染症患者入院診療加算など)も算定可能とする。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「『臨時の医療施設』は(軽症者が収容されている)ホテルなども該当するのか」と質問。森光医療課長は「医療提供体制をどうするかは都道府県知事の判断で、様々な形があると思う。ただ、病院にする場合は、それに相当する体制を整える必要がある。それができなければ、診療所という形で医療提供施設として認める場合もあると思う」と述べ、今後の状況に応じた判断が行われるだろうとの考えを示した。

 

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