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ホーム全日病ニュース(2020年)第973回/2020年10月15日号来年度の概算要求は今年度と同水準の約33兆円を計上

来年度の概算要求は今年度と同水準の約33兆円を計上

来年度の概算要求は今年度と同水準の約33兆円を計上

【厚労省】新型コロナ対応緊要予算や医療などの自然増分は含めず

 厚生労働省は9月25日、来年度概算要求を公表した。新型コロナ対応などの経費は、年末までの予算編成過程で決定するため、要求額に含めず、今年度予算と同水準の約33兆円(32兆9,895億円)を計上した。厚労省予算の大部分を占める医療や介護など制度に基づく社会保障費も、高齢化などで給付費が伸びる自然増が、現時点では見込めないため、今年度と同額(30兆8,562億円)。全体の姿がみえにくい異例の概算要求となった。
 最近の概算要求では、医療や介護などの社会保障費が次年度にどれだけ伸びるかを見込み、一定の枠(シーリング)により、増加分の一定額を抑制することを踏まえた要求を行ってきた。基本的には、高齢化等で伸びる部分については、厚労省の要求を財務省は認めており、その枠内での増減が予算編成過程で行われる。
 来年度の要求額は、自然増を含まずに今年度と同額の30兆8,562億円。厚労省は、新型コロナの影響で、今年度の経費が予測できず、来年度の伸びが見込めないためと説明した。特に、4~6月の患者減による医療費の落ち込みがあり、夏以降の状況が把握できていない。
 自然増の増額を見込むことができれば、一定の枠内で、例年通り、様々な制度改正の財源配分が行われる。来年度は介護報酬改定があり、また、これまで2年に1度だった薬価改定が毎年行われる最初の年度となる。ただ、現在薬価調査が行われているが、実施の是非は新型コロナの影響を勘案し、決定することになっている。そのほか、社会保障・税一体改革やアベノミクスの新三本の矢に含まれる事項も、予算編成過程で取扱いが決まっていく。
 厚労省の裁量的経費による施策については、例年であれば、予算配分のメリハリをつけるため、全体の予算削減とあわせ、重点事項への手厚い配分を実施するための政府全体の枠を設け、そこへの要望事項を概算要求で示してきた。今回は新型コロナ対応など「緊要な経費」を予算編成過程で配分する。しかし全体の規模は示されておらず、要求額には含めなかった。これらを踏まえると、約33兆円に、自然増と「緊要な経費」が加わり、数兆円規模の予算が上積みされることになる。
 厚労省の政策予算は、「ウイズコロナ時代に対応した社会保障の構築」とされ、「緊要な経費」を除いた要求額が記載された。重点事項の柱は、①ウイズコロナ時代に対応した保健・医療・介護の構築②ウイズ・ポストコロナ時代の雇用就業機会の確保③新たな日常の下での生活支援─とした。全体として今年度と同水準となっている。

3本の柱で緊要・新規予算など要求
 「ウイズコロナ時代に対応した保健・医療・介護の構築」では、まず「新型コロナと戦う医療・福祉提供体制の確保」がある。多くが今年度の第一次、二次補正での対応を継続する新規予算となっている。金額は予算編成過程での検討となる。
 具体的には、いずれも新規で、◇受入れ病床の確保や療養体制の確保など新型コロナ感染症緊急包括支援金による体制整備◇新型コロナ患者受入れ医療機関等における陰圧化等の施設整備◇介護・福祉サービス提供体制の継続支援◇福祉施設における感染防止対策◇福祉医療機構による医療・福祉事業者への資金繰り対策◇国立病院機構における医療提供体制の整備─がある。
 情報の効率的な取得や医療用物資・医薬品原薬などの確保では、「医療機関等情報支援システム(G-MIS)の機能拡充等」、「医療のお仕事Key-Net等を活用した医療人材の確保」、「マスク等医療用物資の備蓄・医療機関等への配布」、「医薬品の安定確保のための施設整備や備蓄への支援」の新規予算を要求する。検査体制の充実やワクチン・治療薬の開発・確保でも同様に、様々な項目を掲げた。
 PCR検査関連では、抗原検査を含めた行政検査の費用や、高齢者や基礎疾患のある人への検査の支援、民間調査機関の活用、検査試薬の買上げ、検疫所の検査体制強化などを実施する。保健所の強化では、応援派遣のための潜在看護師を活用した人材バンクの創設や、新型コロナウイルス感染者情報把握・管理システム(HER-SYS)の改修をあげた。現在開発が進められているワクチンの買上げや、日本医療研究開発機構(AMED)での研究開発支援の費用も要求した。
 一方、地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者の働き方改革は、新型コロナにより議論が中断した分野であり、基本的に新型コロナ関連の予算は入っていない。今年度とほぼ同額の1,064億円を計上した。
 地域医療介護総合確保基金の要求額は、前年度と同額の796億円。地域医療構想では、病床の機能分化・連携を進め、医師偏在対策では、医師確保のための感染防止対策の研修の支援も盛り込んだ。勤務環境改善に取り組んでいる医療機関に対しても、引き続き支援を行う。
 地域医療構想を推進するための病床機能再編支援では、今年度に創設した病床ダウンサイジング支援を継続する。2021年度は消費税財源を用いることを明確化する法改正を行う予定となっている(84億円)。
 そのほか、医療提供体制の整備関連の新規予算をみると、医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度が今年度から始まったことから、予算を2億円から4億円に倍増させている。医師の働き方改革の準備の新規予算では、「評価機構」の設立の準備で2億円を要求した。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース 2017年2月1日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170201.pdf

    2017年2月1日 ... 者として計上しているためである。で ... 査・薬価改定⑤後発品の薬価のあり方.
    ⑥その他に ... 次期改定. は薬価制度の抜本改革や費用対効果評. 価の本格的導入
    などもあり、例年以上. の過密スケジュールとなりそうだ。年.

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年8月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200801.pdf

    2020年8月1日 ... に対しては、◇薬価調査・薬価改定◇. 医療機関経営◇オンライン診療の3 ... り
    、1兆6,279億円を計上した。 新規事業には、◇重点医療機関の病 ... 社会保障
    給付費の上限(シーリング). については、例年の骨太方針で方針 ...

  • [3] 「急性期、医療・看護必要度」の妥当性が論点に

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190915.pdf

    2019年10月20日 ... 月5日、次期診療報酬改定に向け、同. 分科会の診療 ... 薬価改定による財源が
    例年ほどには期. 待できない ... 円─を計上している。 健康確保措置 ... 診療科・都
    道府県別のシーリングの問題点を協議し、年内に結論. 日本専門医 ...

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