全日病ニュース

死亡事例受け「体調悪い高齢者は接種延期を」

【厚労省・副反応合同部会】ワクチンの安全性には「重大な懸念なし」

　厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は４月23日と30日、新型コロナワクチンの副反応報告を検討し、安全性に重大な懸念は認められないとして接種を継続する方針で一致した。高齢者が接種後に死亡した事例を踏まえ、23日には複数の委員から、体調の悪い高齢者には接種を延期するよう厚労省がメッセージを出すべきとの意見があがった。
　４月25日までの時点で、新型コロナワクチンの接種者数は271万8,090人と推定されるが、副反応疑い事例として報告されたのは4,402例（0.16％）。重篤な事例は511例（0.02％）。死亡例は10例あったが、いずれについても専門家は「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できない」と評価した。
　新型コロナワクチンは、これまで医療従事者を対象として接種されてきた。４月12日からは、高齢者への接種も始まり、初日の12日に接種を受けた102歳の女性が、16日に死亡していたことが報告された。死因は誤嚥性肺炎、気管支喘息、心不全。女性は４月に誤嚥性肺炎と診断され、抗菌剤での治療を受けていた。専門家は「高齢であることに加え、もともと全身状態があまり良くなかった可能性がある」と指摘。基礎疾患の経過に関する詳細な情報が不足しているため、ワクチン接種と死亡との因果関係は評価できないとした。
　今後、高齢者へのワクチン接種が進められるが、ワクチンの供給が十分ではないため、接種の機会を逃したくないと思う高齢者本人や高齢者施設関係者が、多少の体調不良があると認識しながらも予定通り高齢者への接種を行ってしまうケースが生じる可能性がある。23日の会合で委員から、「接種予定日に、高齢者の体調が悪い場合は接種を延期するよう、国がメッセージを出すべき」「主治医が接種を延期する判断をしやすくするため、基準をわかりやすく示すべき」との意見が出された。30日の会合では、基礎疾患の状態が悪化している場合などは慎重に予防接種の適否を判断する必要があることを確認した。
　アナフィラキシーは４月25日までに633件報告されており、そのうち94件が国際的な基準であるブライトン分類１～３と評価された。
　23日にはワクチン接種会場でアナフィラキシーの症状が出た場合に備えて、接種会場で緊急的な医療処置をどこまで準備すべきかの議論もなされた。日本医師会の宮川政昭委員は、「アナフィラキシーが起きた患者にアドレナリンを打ち、できるだけ早く医療機関に救急搬送することを徹底することが大事だ」と述べた。