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ホーム全日病ニュース(2021年)第999回/2021年12月1日号2022年度改定に向け中医協で急性期入院医療を議論

2022年度改定に向け中医協で急性期入院医療を議論

2022年度改定に向け中医協で急性期入院医療を議論

【中医協総会】急性期一般入院料1にメリハリつけることを議論

 中医協総会(小塩隆士会長)は11月10日、2022年度診療報酬改定に向けて、入院医療等の調査・評価分科会の議論を踏まえ、急性期・高度急性期入院医療と在宅医療を議論した。一般病棟の急性期一般入院料1を届出した医療機関のうち、手術件数等に応じて評価を分けることや、「重症度、医療・看護必要度」の見直しが議論された。

治療室の有無で手術の実績に差
 厚生労働省は、急性期一般入院料1を届け出ている医療機関において、治療室(救命救急入院料、ハイケアユニット入院医療管理料、特定集中治療室管理料)を届け出ている医療機関のほうが、治療室なしの医療機関よりも、全身麻酔の手術件数や人工心肺を用いた手術件数、救急搬送の受入れ件数などが多いと指摘(下図参照)。その上で、「充実した急性期入院医療を担っている医療機関の評価に対する評価」を論点にあげた。
 支払側からは、「急性期一般入院料1の医療機関のなかでも手術の実績に差があることがわかった。急性期入院医療の評価にメリハリをつける新たな切り口となる」などの意見が出された。
 これに対して、診療側の日本医師会の城守国斗委員は、急性期一般入院料1の医療機関のなかでも、より充実した急性期医療を担う医療機関を、現行より高く評価する方向を提案した。その一方で、「中小の医療機関にはユニットを分ける構造的な余裕がなかったり、看護の手厚い配置がしにい事情があり、特定入院料がとれていない場合があり、治療室がないという評価になっている。しかし、これらの病院でも、ナースステーションの横に処置室をおいて、その処置室で手厚い看護の体制で、重症患者や救急患者を診ている現状がある。そういう状況もあるので、このような病院への評価については、しっかりとした対応をしていただきたい」と述べ、治療室のない医療機関の評価を引き下げることには反対した。

必要度の項目見直しに賛否
 一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」について、厚労省は見直しの論点として◇A項目の「心電図モニターの管理」「点滴ライン同時3本以上の管理」「輸血や血液製剤の管理」◇B項目の項目間の相関が高い場合があること◇術後経過日数の実態を踏まえC項目をどう考えるか―をあげた。
 支払側からは、A項目の評価項目である「心電図モニターの管理」と「点滴ライン同時3本以上の管理」の2点をA項目から除外すべきとの主張がなされた。とくに心電図モニターの管理の項目については、入院医療分科会から、「純粋に患者の状態を反映しているとは必ずしも言えない」という指摘がなされたことを踏まえて、「次回改定で必ず解決すべき問題だ」と強く見直しを求める声があった。
 これに対し診療側の城守委員は、「これまで、診療報酬改定のたびに評価項目の変更をすること自体、医療現場にとって負担になっている」と述べ、見直しに強く反対した。

RRS導入を評価する方向
 厚労省は、重症患者への対応を評価することを論点にあげた。患者の急変の兆候を捉え、死に至るような急変を未然に防ぐ取組みとして、「院内迅速対応システムRapid Response System(RRS)」がある。このRRS は、主に病床規模の大きな病院で導入されており、RRSの導入が院内死亡を減少させるとのエビデンスがある。
 また、救急・集中治療領域においては、家族が患者の代理の意思決定を強いられ、それが家族の負担になっているため、支援を行う「入院時重症患者対応メディエーター」の養成が進められている。
 厚労省はこれらを論点にあげ、診療側も支払側も診療報酬で評価する方向で一致した。
 日本病院会副会長の島弘志委員は「院内で急変する患者に全職員が対応できるようなトレーニングを実施した場合には、きちんと評価したほうがよい」と述べ、RRS の評価を求めた。

高度急性期の見直しでも賛否
 高度急性期医療については、特定集中治療室管理料、救命救急入院料2・4におけるA項目の該当患者割合の実態を踏まえて、特定集中治療室用の評価票における「心電図モニターの管理」と「輸液ポンプの管理」を除外することが議論された。評価項目からの見直しを求める支払側に対し、診療側は慎重な対応を求めた。
 また、特定集中治療室管理料を算定する患者において、A項目の基準を満たすがB項目では満たさないのはわずか1.7%であることから、B項目の廃止について意見の応酬があった。

重症患者の搬送を評価へ
 在宅医療に関する議論では、救急搬送診療料に新たな区分を設け、重症患者の救急搬送を評価する方向で概ね一致した。
 救急搬送診療料は、患者を救急用の自動車等で保険医療機関に搬送する際に、診療上の必要から、自動車に同乗して診療を行うことを評価したもの。
 コロナ禍では、重症患者を転院させるための搬送が行われ、ECMOを装着した患者の搬送もなされた。しかし、現行の算定要件では、入院患者を他の医療機関に搬送する場合には救急搬送診療料を算定することはできない。
 これについて城守委員は、救急搬送診療料に新たな評価の区分を設け、現在、学会により作成されている重症患者搬送のガイドラインに従った対応をした場合を評価することを提案した。
 協会けんぽ会長の安藤伸樹委員も、「ECMOを装着した患者の搬送の重点化という方向は理解する」と述べ、具体的な要件設定についてさらに議論するよう求めた。
 緊急往診加算について、成人と小児の要件を分けて設定することが議論された。現行では、緊急往診加算は急性心筋梗塞や脳血管障害、急性腹症等の場合に算定できるが、小児では急性の呼吸不全やけいれんなど、成人と異なる理由で緊急の往診が必要となる場合がある。診療側は、小児の病態を踏まえて評価を工夫するよう求め、支払側も理解を示した。

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211115.pdf

    2021/11/15 ... 算定できるようにすることを論点とし. た。医療的ケア児については、 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は10月 ... 道府県ナースセンターに対する大幅な.

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