全日病ニュース

新型コロナ対策の全体像と新しい経済対策

常任理事会で猪口会長が説明

　全日病の猪口雄二会長は11月20日の常任理事会で、新型コロナの第６波対策としてまとめられた「取組の全体像」および「新たな経済対策」について説明した。
　新型コロナウイルス感染症対策本部が11月12日に決定した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」は、この冬に予想される第６波に備えるためにまとめられた。今夏のピーク時に比べて３割増の3.7万人が入院できる体制を11月末までに構築する方針を示しているほか、自宅・宿泊療養者の対応、医療人材の確保、ITを活用した稼働状況の「見える化」、さらなる感染拡大時の対応などを盛り込んでいる（２面参照、４～５面に資料）。
　このうち病床確保については、都道府県と医療機関が書面を締結することにより、感染ピーク時において確保病床の使用率が８割以上となることを確保するとしている。緊急包括支援交付金の病床確保料は、来年１月以降も継続するが、確保病床の８割以上の稼働が求められることになる。
　また、感染力が２倍を超えて医療のひっ迫が見込まれる場合には、近県の医療機関から人材を派遣して応援することも計画されている。
　ITを活用した稼働状況の「見える化」では、G-MISやレセプトデータを活用し、12月から医療機関別の病床の確保・使用率を毎月公表するとしている。猪口会長は、具体的な公表の方法は近く示される見通しであると述べた。

12月から医療従事者の追加接種開始
　医療従事者のワクチンの追加接種は12月から始まるスケジュールで、すでに11月に市町村から接種券が送付されている。医療従事者の１・２回目の接種は都道府県が担ったが、追加接種は市町村に変更となった。しかし、VRSの入力に遅れがみられ、猪口会長は、医療機関の責任で医療従事者に接種することも考える必要があると注意喚起した。

病床確保料の単価を見直す
　一方、11月19日に閣議決定した「新たな経済対策」では、新型コロナ対策の全体像の内容を盛り込んでいるほか、ワクチン・検査パッケージを活用して経済活動の再開を進める方針を示している。
　医療提供体制の強化は「全体像」と同様の内容だが、病床確保料について、病床利用率が一定の基準を満たさない場合には病床確保料の単価を見直すほか、確保病床に対する休床病床の割合に上限を設定する考えを示している。１床のコロナ病床をつくるために何床まで休床を認めるかということで、猪口会長は、具体的内容は近く示される見込みと述べた。
　また、公的部門における分配機能を強化するため、看護、介護、保育、幼児教育の現場で働く人の収入を引き上げる考えを示している。春闘に向けた賃上げ議論に先んじて、保育士・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に収入を３％程度（月額9,000円）引き上げる措置を来年２月から前倒しで実施することとした。
　看護については、コロナ医療を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、段階的に収入を３％程度引き上げることとし、来年２月から１％程度（月額4,000円）引き上げる措置を前倒しで実施するとした。来年10月以降の対応は、2022年度予算編成過程で検討し、必要な措置を講ずる。２月からは補助金で、10月からは診療報酬で対応する形となる。
　これに関連して猪口会長は、四病院団体協議会が11月15日に病院に勤務する看護補助者（介護職）の処遇改善を求める要望書を後藤茂之厚生労働大臣に提出したことを報告（８面参照）。これによって看護補助者、PT・OT 等のコメディカルの処遇改善に充てることができるよう柔軟な対応を認められることになったと説明した。なお、対象はすべての病院ではなく、ある程度の救急医療を行っている病院となる見込みだ。