全日病ニュース

新型コロナで悪化した病院経営を国の補助金が下支え

【中医協総会】医療経済実態調査の結果が示される

　厚生労働省は11月24日の中医協の調査実施小委員会（秋山美紀小委員長）に医療機関や歯科、薬局の医業経営などの実態を明らかにするための医療経済実態調査の結果を報告した。
　病院の中で、医療法人の損益差額の収益に対する割合（損益率）は、2019年度の1.8％に対し2020年度は0.1％と悪化したが、新型コロナ関連の補助金を含めると、2.3％まで回復している。
　医療法人の収益の大部分を占める医業収益は▲0.9％、介護収益は▲64.6％で介護の減収率が大きい。全体では、患者数や手術などが減って医業収益が低下した影響が大きいと考えられる。一方、医業・介護費用は0.4％でわずかに上昇した。
　今回の調査では、新型コロナの影響を把握するため、例年よりも詳細な項目に分けて分析した。
　有効回答数（年度集計）は病院が1,218施設（有効回答率52.8％）、一般診療所が1,706施設（同54.8％）、歯科診療所が625施設（同58.7％）、薬局が904施設（同47.8％）で前回調査と同程度だが、病院の回答率はわずかに低下した。
　病院の他の設置主体の損益状況をみると、国立は2019年度の▲1.7％ が2020年度は▲9.2％に悪化し、新型コロナ補助金により、6.8％まで回復した。公立は同▲14.2％が同▲21.4％に悪化し、新型コロナ補助金により、▲7.3％に回復した。公的は同▲0.2％が同▲3.0％に悪化し、新型コロナ補助金により、5.4％まで回復した。
　新型コロナ対応の指定別に分けると、重点医療機関は同▲5.4％が同▲10.7％に悪化し、新型コロナ補助金により、2.2％まで回復した。協力医療機関は同▲4.4％が同▲8.0％に悪化し、コロナ補助金により、▲3.4％になった。
　新型コロナから回復した患者を転院により受け入れた実績のある病院は、同2.3％が同0.1％に悪化し、新型コロナ補助金により、1.2％になった。
　このように病院については、どの類型においても、損益率の水準に違いはありつつも、2020年度診療報酬改定を挟み、新型コロナの感染拡大により、損益が悪化し、新型コロナ補助金が経営を下支えしたことが確認できた。日病・全日病・医法協の３病院団体による病院経営状況調査の結果でも、同様の傾向が示されている。

診療所も補助金でわずかに回復
　診療所の損益率をみると、個人は2019年度の31.8％が2020年度は28.0％に悪化し、コロナ補助金により、わずかだが28.8％に回復した。診療所の医療法人は同6.5％が同3.8％に悪化し、コロナ補助金により、わずかだが4.2％に回復した。なお、個人の場合は、損益差額に開設者の報酬と、設備投資の内部資金が含まれている。
　歯科診療所の損益率をみると、個人は同29.7％が同28.1％に悪化し、コロナ補助金により、30.1％に回復した。医療法人は同6.6％が同6.3％に悪化し、コロナ補助金により7.1％に回復した。歯科は新型コロナの感染拡大による損益率の低下が比較的、小さかった。
　薬局の損益率をみると、個人は同11.4％が同9.9％に悪化し、コロナ補助金により、10.4％に回復した。医療法人は同6.6％が同6.4％に悪化し、コロナ補助金により、6.6％と同水準に戻っている。