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ホーム全日病ニュース(2021年)第999回/2021年12月1日号診療側が療養病棟の経過措置の存続を主張

診療側が療養病棟の経過措置の存続を主張

診療側が療養病棟の経過措置の存続を主張

【中医協総会】中心静脈栄養で嚥下機能評価の取組み促す対応を検討

 中医協総会(小塩隆士会長)は11月19日、2022年度診療報酬改定に向け慢性期入院医療をテーマに議論を行った。療養病棟入院基本料の経過措置(注11)の存続の是非や、医療区分3の該当項目である中心静脈栄養を適切に管理する上での嚥下機能評価の促進などが課題となった。
 日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「療養病床も新型コロナの影響を受けている。すぐに終了ということになれば、現場が混乱し患者への影響も大きい」と訴え、2022年度以降も、療養病棟入院基本料の経過措置(注11)を存続させることを主張した。
 協会けんぽ理事長の安藤伸樹委員も、「経過措置であることの趣旨を踏まえれば、早期に終了することが望ましい」としつつ、「なぜ経過措置の病棟が残ってしまっているかのさらなる分析を含め、慎重に結論を出すべき」と述べた。
 経過措置の病棟は、看護職員配置が25対1で、医療区分2・3の該当患者割合の要件がない。点数は療養病棟入院基本料2の15%減算となる。療養病棟への質問では、約5割の病院が現状維持の意向を示している。また、移行できない理由では、「医療区分3と医療区分2の患者の合計が5割以上」を満たせないとの回答が最も多い。
 経過措置(注11)の療養病棟をうまく活用している実態も明らかになっている。調査によると、経過措置(注11)の療養病棟では、リハビリの実施回数・単位数が入院料1・2よりも多く、レセプト請求点数も入院料2よりも高い。ただ、そこで実施されているリハビリは基本的には介護保険の対象となる「廃用症候群」の患者が最も多い。厚労省は、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟入院料では、質を担保した疾患別リハビリテーションが実施されるための施設基準を設けていると説明した。
 医療区分については、医療区分3の中心静脈栄養の適切な管理が論点となった。医療区分3で、「中心静脈栄養を実施している状態」が該当項目である割合は最も多く、4割強を占める。
 一方、中心静脈栄養の患者に嚥下機能評価を実施しているかをみると、実施の割合は入院料1で25.4%、入院料2で32.6%、経過措置(注11)でゼロ%であった。半数程度の患者が嚥下機能障害なしと評価されており、約9割の患者で入院中に嚥下リハビリが実施されたことがなかった。
 こうした状況に対し、入院医療等の調査・評価分科会では、「嚥下機能評価やリハビリテーションの実施をより促進させるなど、中心静脈栄養からの離脱を評価する視点の検討が必要ではないか」、「これまでどおり医療区分3とすることが適切かどうか、引続き検討が必要ではないか」といった指摘が出ていた。
 厚労省は、「嚥下機能評価の有無別に、抜去の見込みを比較すると、嚥下機能評価ありの患者の方がなしの患者と比較して、抜去予定のある患者の割合が高かった」ことなどを説明。嚥下機能評価の取組みが促進される評価のあり方などが論点となった。
 城守委員は、「医学的な理由により抜去が難しい中心静脈栄養の患者がいることを理解した上で、療養病棟入院基本料で嚥下機能評価の取組みが評価される仕組みを取り入れてはどうか」と提案した。健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「中心静脈栄養が医療区分3の該当項目であることが、嚥下機能評価がきちんと実施されていないことの誘因となっている」と指摘した。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、医療区分3の「褥瘡に対する治療を実施している状態」の「留意点」で、「入院又は転院時既に発生していた褥瘡に限り、治癒又は軽快後も30日に限り、引き続き医療区分2として取り扱うことができる」との規定を踏まえ、「中心静脈栄養においても抜去後の一定期間、医療区分3に該当することを認めれば、抜去することの取組みが促進されると思う」と提案した。
 なお、2020年度改定でも、中心静脈栄養に対し、「患者又はその家族等への説明及び他の保健医療機関等に患者を紹介する際の情報提供」や「院内感染対策の指針を作成すること」などが要件に追加された。調査では、「中心静脈栄養以外が選択されるようになった」との回答が、施設調査で最多であったとの結果が得られている。

緩和ケア病棟で疼痛を数値評価
 同日の総会では19日、緩和ケア病棟や障害者病棟も議題となった。
 緩和ケア病棟については、がん患者の疼痛管理の数値評価の要件化が論点となった。「新版がん緩和ケアガイドブック」では、1~ 10点の疼痛の強さや、持続する痛みや突出する痛みであるかのパターンの評価を推奨している。現状では、緩和ケア病棟入院料1の1割程度、入院料2の2割程度の施設で数値評価が実施されていなかった。
 障害者病棟については、栄養サポートチームの介入後、BMI や血清アルビミン値が、一般病棟よりも改善した割合が高いとのデータが示された。栄養サポートチーム加算は、障害者施設等入院基本料では算定できないことから、対象に加えることが論点となった。

 

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    2021/02/15 ... 口雄二会長(日本医師会副会長)は「民 ... なお、療養病床については、1月13 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は2月. 3日、新型コロナ重症化リスク ...

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