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ホーム全日病ニュース(2021年)第999回/2021年12月1日号地ケア病棟の機能に応じた評価のあり方で賛否

地ケア病棟の機能に応じた評価のあり方で賛否

地ケア病棟の機能に応じた評価のあり方で賛否

【中医協総会】2022年度改定に向け回復期入院医療を議論

 中医協総会(小塩隆士会長)は11月12日、2022年度診療報酬改定に向け、入院医療等の調査・評価分科会の報告を踏まえ、回復期入院医療をテーマに、地域包括ケア病棟入院料等と回復期リハビリテーション病棟入院料などの評価をめぐり議論した。外来については、来年度以降に位置づけられる医療資源を重点的に活用する外来に対する診療報酬の評価を議論した。

特定の機能に偏った地ケア病棟
 地域包括ケア病棟については、2014年度改定の導入時に期待された①急性期からの受入れ②在宅からの受入れ③在宅復帰支援の3機能の一部だけを担っている病院の評価が論点となった。地ケア病棟の届出病院数・病床数はともに増加傾向にある。中医協では、「3機能を前提に点数を設定していることから、機能が偏った医療機関については、その機能に応じた点数とすべき」との意見が出ている。
 厚生労働省は、地ケア病棟入院料・管理料における患者の入棟元の割合の分布から、「自院の一般病棟からの入棟割合が8割以上の病棟」と「自宅等からの入棟割合が8割以上の病棟」を抽出し、分析を行った。その結果、患者の状態が安定している割合は、「自院の一般病棟からの入棟割合が8割以上の病棟」で82.0%、「自宅等からの入棟割合が8割以上の病棟」で59.2%であった。
 レセプト請求点数をみると、入棟後7日間の患者一人当たりの1日平均単価は、「自院の一般病棟からの入棟割合が8割以上の病棟」で3,000点程度、「自宅等からの入棟割合が8割以上の病棟」で3,300点程度。それほどの差ではないが、特定入院料等がほとんどを占めているためで、包括対象の出来高換算の部分をみると、リハビリテーションの提供でかなりの差がある。
 患者の主傷病名では、一般病棟から入棟した患者は「大腿骨転子部骨折・大腿骨頸部骨折」が多く、自宅等から入棟した患者では「腰椎圧迫骨折」の患者が最も多く、次いで「肺炎」「心不全」が多いという結果になっている。
 日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「地ケア病棟は様々な機能を担っており、3つの機能を均等に果たすことを前提とした病棟ではない。近くに在宅療養支援診療所・病院がなければ、自宅等からの受入れは少なくなるし、近くに急性期病院がなければ、自院で治療し転棟させることになる」と、地ケア病棟が設立趣旨からして多機能であることを強調。評価に差をつけることには慎重な姿勢を示した。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員も、入棟元が一般病棟であるか療養病棟であるかの違いを含めて、「偏っているからダメということではない。今回の資料は、地ケア病棟を今後どう育てていくかという観点で、これから前向きに検討するためのものと理解している」と述べた。
 一方、支払側の委員は、各地ケア病棟で機能が異なり、結果として医療資源投入量が異なるのであれば、それに応じた評価を設定すべきと主張した。
 地ケア病棟入院料・管理料に関しては、そのほか◇療養病床で地ケア病棟入院料等を届け出ている場合は、平均在棟日数が長く、救急実施の割合が低い◇地ケア病棟入院料等の病院で入退院支援加算1を届け出ている割合は約4割で少ない◇自院のDPC対象病棟からの転棟時期を2018年のDPCデータと比較すると、地域包括ケア病棟への転棟時期の最頻値は、より長い日数となっていた─などを課題とした。

FIMで第三者評価の導入を検討
 回復期リハビリテーション病棟入院料については、入院料5・6が新規届出を行う場合の入院料であるところ、実績指数が悪い・FIM(機能的自立度評価票)の変化が小さいことなどから、他の入院料に移行できないまま何年も入院料5・6を引続き届け出ているケースが問題視された。
 これについて、支払側からは、入院料5・6の存在自体に疑念を示したほか、届出の期間に上限を設けるべきと主張した。これに対し、城守委員は、「2020年度改定でも回リハ病棟入院料の見直しがあった。改定直後に新型コロナの感染拡大もあり、2022年度改定で大幅な見直しを行うべきではない。今回のデータで入院料5・6を廃止するというのは暴論」と述べた。
 FIMの評価の精度を上げるという観点では、第三者評価の導入が論点となった。過去数十年間の推移において、入棟時FIMの低下が続いていることが指摘されており、実績指数についても2019年と2020年を比較して、2020年の方が高い傾向にあった。
 入棟時FIMが低く出れば、退棟時FIMとの差が大きくなるので、実績指数が高くなる。治療後早期のリハビリ開始が増えている状況もあるが、入棟時FIMを低く評価してしまう誘因があることは否定できない。
 こうした中で、日本医療機能評価機構が実施している病院機能評価の認定を受けた病院と認定のない病院を比べると、認定のない病院で運動FIMが低い傾向が示された。具体的には、認定なし病院では、入院時の「日常生活機能評価点数」が同じ点数であった場合の入院時運動FIM得点が、認定ありの病院と比べ、有意に低く評価されていることがわかった(下図参照)。
 ただ、城守委員は、第三者評価はまだ十分に普及していないとして、要件化には慎重な検討を求めた。

救急医療管理加算などを議論
 個別事項では、診療録管理体制加算や入退院支援加算、救急医療管理加算などの課題が示された。
 病院のサイバーセキュリティ対策の底上げが求められているが、中小病院や診療所では職員に対する教育の実施も、あまり行われていない実態が報告された。診療録管理体制加算を念頭に、診療報酬での対応が論点となったが、診療報酬よりも補助金での対応の望ましいとの意見が委員からは多かった。
 本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子供であるヤングケアラーへの対応も論点となった。ヤングケアラーを早期に発見し、適切な支援につなげる医療機関の取組みを入退院支援加算で評価することに、診療側・支払側の双方が賛成した。
 救急医療管理加算については、加算2を算定する患者の病態の内訳で「その他重症な状態」である患者の割合が最も高く、60%以上を占めることが指摘された。これに対し、支払側の委員から、「重症な状態を明確にして、将来的には加算2は廃止すべき」(松本真人委員・健康保険組合連合会理事)との意見が出た。
 加算1については、患者の意識レベルを評価するJCSがゼロの患者であっても、「非開胸的心マッサージ」や「人工呼吸」といった緊急性が高いと考えられる処置が行われていることがわかった。また、Burn Indexがゼロの患者でも、顔面熱傷や気道熱傷の場合は全身管理が必要になることが指摘されている。このため、城守委員は、「指標による評価と、行われている治療を含めて評価できるようにすることが重要」と述べた。
 なお、2020年度改定により、救急医療管理加算を算定する患者の状態を把握するため、「イ・意識障害または昏睡」、「ウ・呼吸不全または心不全で重篤な状態」、「オ・ショック」、「カ・重篤な代謝障害」、「キ・広範囲熱傷」に該当する場合は、それぞれの入院時の状態に係る指標を記載している。

医療資源重点活用外来の評価
 外来については、来年度以降に位置付けられる「医療資源を重点的に活用する外来」を担う病院の評価が論点となった。入院医療における評価と、紹介元に患者を戻す際に情報提供を行った場合の診療情報提供料(Ⅲ)での評価が議論になった。
 入院医療の評価では、現状で定額負担が義務化されている地域医療支援病院に対して、入院初日の地域医療支援病院入院診療加算(1,000点)がある。診療側の委員はこの加算と整合性のある入院医療での評価を求めた。しかし、支払側の委員は、入院医療での評価自体に対し慎重姿勢を示した。
 医療資源重点活用外来を担う病院が紹介元への情報提供で、診療情報提供料(Ⅲ)を算定できるようにする方向性では、診療側・支払側とも概ね意見が一致した。
 また、政府の「全世代型社会保障改革の方針」(2020年12月15日閣議決定)では、紹介状なしで外来受診した場合に定額負担を求めている仕組みを、「地域の実情に応じて明確化される『紹介患者への外来を基本とする医療機関』のうち、一般病床200床以上の病院にも対象を拡大する」ことを明記した。その上で、「外来機能の分化の実効性が上がるよう、保険給付の範囲から一定額を控除し、それと同額以上の定額負担を追加的に求めるよう仕組みを拡充する」ことが示された。
 この一定額について、初診で初診料に相当する2,000円程度、再診で再診料に相当する500円程度が例示され、診療側・支払側から異論は出なかった。ただ、定額負担が医療機関の収入にならず、医療保険から控除されるという仕組みがわかりづらく、患者・住民への説明が難しいといった意見が相次いだ。診療側は、周知のため、保険者の協力も不可欠と主張し、支払側も同意した。
 定額負担が除外される要件の明確化も課題となった。厚労省は、現状の除外要件の該当で不明確な「その他」の内容を分析。「院内出生病児」、「移植ドナーの患者」、「紹介先の医療機関が新型コロナによる診療休止のためやむを得ず受診した患者」、「予約受診の患者」などであることが示された。

 

全日病ニュース2021年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2021.12.1 No.999

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211201.pdf

    2021/12/01 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は11月. 10日、2022年度診療報酬改定に ... 厚労省はこれらを論点にあげ、診療 ... 大腿骨頸部骨折」が多く、自宅等から.

  • [2] 2021.8.1 No.991

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210801.pdf

    2021/08/01 ... 「大腿骨転子部骨折・大腿骨頸部骨折」 ... 地域包括ケア病棟等と回復期リハ病棟を論点に議論 ... 医協総会(小塩隆士会長)は7月14日、.

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