全日病ニュース

公的価格見直して看護・介護・保育の職員の処遇改善

【全世代型社会保障構築会議】岸田首相が年内の中間整理を指示

　政府の全世代型社会保障構築会議・公的価格評価検討委員会合同会議の初会合が11月９日に開催された。全世代型社会保障構築会議は、全世代型社会保障検討会議の後継組織であり、給付と負担の問題を含む、社会保障の幅広いテーマが議論の対象としている。ただ、当面の課題は、岸田文雄内閣が重視する分配政策の一環としての看護・介護・保育・幼稚園の職員の処遇改善とし、公的価格のあり方の抜本的見直しに関して、年内に中間報告をまとめるとの方針が示された。
　岸田首相は合同会議終了時に発言し、公的価格のあり方の見直しの必要性を強調。「看護・介護・保育・幼稚園などの現場で働く方々の収入の引き上げは、最優先の課題である。その第一歩として、民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、今回の経済対策において、必要な措置を行い、前倒しで引上げを実施する」との考えを示した（新たな経済対策については１面を参照）。
　新たに設置する公的価格評価検討委員会に対しては、「その後の更なる引上げに向け、各制度における公的価格の制度の比較、処遇改善につながる制度の見直し、処遇改善目標などを議論し、安定財源とあわせた道筋を考えていただきたい」と、各制度の報酬改定での講論を求めた。
　看護師については、診療報酬が賃金の主な原資だが、診療報酬に賃金改善を直接の目的とする仕組みはない。間接的には、看護師等の負担軽減のため、看護職員や看護補助者の配置増に対する加算などがある。また、医療では医師や看護職員、リハビリテーション専門職がチームでサービス提供を行っているとの留意点もある。
　同会議に提出された資料に職種別の平均賃金がある。それによると、2020年の平均賃金（役職者除く）は全産業の35.2万円に対し、看護師は39.4万円で看護師の方が4.2万円高い。女性の全産業平均をみると、31.8万円で7.6万円の開きがある。これに対して、介護分野の職員は29.3万円、保育士（女性）は30.2万円と低い。なお、宿泊業や飲食サービス業など対人サービス産業の平均賃金は26.6万円とさらに低くなる。
　このように看護師は相対的に賃金水準が高い。しかし、財務省の財政制度等審議会の資料によると、女性・非正規問題との関連が深く、新型コロナ対応の最前線である医療現場で働いている看護師の処遇が不十分との問題意識がある。
　介護職員の賃金の主な原資となる介護・障害福祉サービス等報酬に対しては、介護報酬等に処遇改善加算を組み込んでおり、順次の拡大を実施している。保育士に対しては、子ども・子育て支援新制度で公定価格により、賃金水準が決まっている。保育士の処遇改善も段階的に実施している。
　また、岸田首相は、社会保障制度改革について、「どんな働き方をしても安心できる勤労者皆保険の実現や効率的で、質が高く、持続可能な医療提供体制の実現など、課題は山積している。人生100年時代にふさわしい、すべての方が支え合う、持続可能な全世代型社会保障に向けた取組みを前に進める」との決意を示した。
　医療機能の分化・連携、強化など医療提供体制の見直しや社会保険の適用拡大など社会保障・税一体改革の積み残しの課題なども同会議で議論される見込みだ。
【全世代型社会保障構築会議】（敬称略）
座長＝清家篤（日本私学校振興・共済事業団理事長・慶應義塾学事顧問）
座長代理＝増田寬也（東京大学公共政策大学院客員教授）、
構成員＝秋田喜代美（学習院大学文学部教授）、落合陽一（メディアアーティスト）、笠木映里（東京大学大学院法学政治学研究科教授）、香取照幸（上智大学総合人間科学部教授）、菊池馨実（早稲田大学法学学術院教授）、熊谷亮丸（大和総研副理事長）、権丈善一（慶應義塾大学商学部教授）、國土典宏（国立国際医療研究センター理事長）、高久玲音（一橋大学経済学研究科准教授）、武田洋子（三菱総合研究所シンクタンク部門副部門長、田辺国昭（国立社会保障・人口問題研究所所長）、土居丈朗（慶應義塾大学経済学部教授）、沼尾波子（東洋大学国際学部国際地域学科教授）、水島郁子（大阪大学理事・副学長）、横山泉（一橋大学大学院経済学研究科准教授）
【公的価格評価検討委員会】（敬称略）
座長＝増田寛也、座長代理＝武田洋子
構成員＝秋田喜代美、菊池馨実、権丈善一、田辺国昭