全日病ニュース

2022年度改定の基本方針の骨子案を了承

【社保審・医療部会】看護師等の収入引上げ等の対応の文言も盛り込む

　社会保障審議会・医療部会（永井良三部会長）は11月29日、2022年度診療報酬改定の基本方針の骨子案を大筋で了承した。骨子案は基本方針とほぼ同様の内容であり、12月初旬に基本方針として、医療保険部会での議論の結果と調整した上で、決定する。中医協ではすでに改定の議論が行われているが、基本方針と整合性のある改定内容が求められることになる。
　改定の基本的視点と具体的方向性は４つ。重点課題は２つで「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」と「安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進」となった。残りの２つは「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」と「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」である。
　重要課題の「安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進」の中に、これまでの議論では出てこなかった「看護の現場で働く方々の収入の引上げ等に係る必要な対応について検討するとともに、負担軽減に資する取組を推進」との文言が盛り込まれた。
　これは、11月19日に閣議決定された新たな経済対策において、岸田政権が重視する分配戦略を踏まえたものだ。これに関し、全日病副会長の神野正博委員は、「閣議決定された政策に反対するものではないが、この文言が入ったことにより、多くの人がより目にすると思われる概要版で、タスク・シェアリング／タスク・シフティングによる『負担軽減に資する取組の推進』の文言が後退した。骨子案に閣議決定の内容が書いてあるので、概要版では、タスク・シェアリング／タスク・シフティングの推進をもっと強調したほうがよいのではないか」と主張した。
　また、「将来を見据えた課題」において、「患者自身が納得して医療を受けられるよう、患者にとって身近で分かりやすい医療を実現する」とある。
　一方で、中医協では、200床以上の一般病院のうち、紹介状なしの受診で定額負担が患者に生じる病院を拡大するため、「医療資源を重点的に活用する外来」を担う基幹的な医療機関に対する診療報酬の評価が検討されている。この新たな受診時定額負担制度の仕組みが患者・国民にとって複雑でわかりにくい。
　神野委員は厚生労働省に、「この制度を周知し、納得のいく、わかりやすい説明を患者・国民に行う責務がある」とくぎを刺した。
　さらに、「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」に関して、骨子案にある「質の高い在宅医療・訪問看護を確保するとともに、医療機関間・医療介護間等の連携の取組の推進」が概要版では抜けているので、「連携の取組」の明記を求めた。
　骨子案は、いくつかの追加修正があったほかは、ほぼ異論なく、了承された。しかし、そもそもの病院の診療報酬の水準の低さや、診療報酬と補助金の関係のあり方については、病院側の不満を含め、様々な意見があった。
　また、閣議決定された新たな経済対策による「看護の現場で働く方々の収入の引上げ等に係る必要な対応」については、特定の機能を担う病院の特定の医療従事者に対象を限定して、収入の引上げ等を診療報酬で図ることに対して、強い懸念が示された。介護施設の介護職員の収入を政策的に上げると、病院に看護補助者がさらに集まらなくなることへの不安も示された。