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中医協が2022年度診療報酬改定を答申

中医協が2022年度診療報酬改定を答申

【中医協総会】診療側・支払側の代表、小塩会長が改定論議を振り返る

 中医協総会(小塩隆士会長)は2月9日、2022年度診療報酬改定を後藤茂之厚生労働大臣に答申した。中医協の場では、小塩会長が佐藤英道厚労副大臣に答申書を手渡した。2022年度改定は、薬価・材料価格改定を含め、医科・歯科・調剤の各分野にわたり、さまざまな改定内容を盛り込んでいる。今後、告示・通知の発出を経て、4月から改定が実施される。経過措置が設定されている項目も数多い。
 佐藤副大臣は、答申を受け取った上で、「長期間にわたり、精力的に議論された集大成を頂戴した。今回は新型コロナ発生後の初めての改定。感染拡大により明らかになったさまざまな課題を踏まえ、効率的で質の高い医療提供体制のための議論が中医協で行われたと受け止めており、答申を受け、関係法令の発出など、今後は施行に向け万全を期す。附帯意見に記載された20項目の残された課題についても、真摯に対応する」と述べた。
 小塩会長も、改定論議を振り返り発言した。「今回改定では、本格的な高齢社会を迎えるなかで、制度の効率性と持続可能性を高めるという中長期的な課題、新型コロナの感染拡大というリアルタイムの課題、不妊治療の保険適用やオンライン診療などの新たな課題への対応という、3つの課題に答える連立方程式を解かなければならない異例の改定となった。しかし、極めて精力的・真摯な議論が行われ、ベストな解を得ることができた」と強調した。
 2024年度改定に向けては、「新型コロナの状況を含め、事態は流動的だが、改定の効果について、エビデンスを確認しながら、しっかりと検証していく必要がある」と述べた。また、「診療報酬の仕組みが複雑になっており、わかりやすく情報公開を進めることの重要性も指摘された」と述べた。


小塩会長が佐藤副大臣に答申書を渡す。

医療現場に問題あれば迅速に対応
 診療側の日本医師会常任理事の城守国斗委員と、支払側の健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、それぞれ各側を代表して、総括的な意見を披歴した。
 城守委員は、個別改定項目には言及せず、新型コロナの爆発的な感染拡大が生じている現状に対する認識の共有を求めた。
 具体的には、「前回改定の施行と同時期に新型コロナの感染拡大があり、その後も収束せず、感染拡大が何度も押し寄せ、その対応に医療機関は疲弊している。新型コロナに対応しながらの2022年度改定の議論は、例年通りとはいかず、さまざまな困難があったが、日程的には、例年通りの予定で答申までたどり着くことができた。しかし、今まさに第6波が猛威を振るっている。無理な厳格化を実施すると、医療現場が崩壊し取り返しのつかない影響を及ぼす恐れがある」との懸念を示した。
 その上で、「中医協の改定論議では、支払側とは意見の異なることがあったが、医療現場の状況をしっかりと把握しつつ、問題があれば迅速に対応する必要があるということでは、意見は同じであると思う」と、認識の共有を支払側に求めた。
 なお、城守委員は、個別改定項目と答申書附帯意見の議論を終えた2月2日の中医協総会において、改定論議を振り返り、懸念される事項として2点を指摘している。
 1つ目は、中医協で議論されるべき改定の詳細な事項まで、中医協以外の場で決められることが増えていることだ。改定率を決めた昨年12月21日の後藤厚労大臣と鈴木俊一財務大臣との大臣折衝での決定事項で、不妊治療の保険適用や看護職員等への処遇改善、リフィル処方箋導入の改定率への影響まで定められたことや、入院医療の評価の適正化の方針などが明記されたことが背景にある。
 城守委員は、「中医協は、社会保障審議会の基本方針を踏まえ、エビデンスに基づき、医療保険財政も勘案し、診療報酬改定を議論している。これまでも、政治色の強い政策については、中医協以外で方針が決まることはあった。しかし、中身の詳細まで中医協以外で決められることが増えているのはいかがなものか」と述べた。
 2つ目は、医療技術などの保険適用を決める際の要因についてで、「安全性・有効性のあるものは速やかに保険適用するという考え方で対応している。しかし、最近は『利便性』という要因が重視される議論が増えている。利便性も大事だが、有効性・安全性が大前提であることを理解してほしい」と述べた。初診からのオンライン診療の要件設定や点数設定で、経済界や規制改革推進派の意向が働き、日医と意見が対立し、中医協では公益裁定での決定になったことなどが背景にある。

機能分化が推進できたと評価
 支払側の松本委員は個別項目にわたって、詳細に意見を述べた。
 まず、「新型コロナの感染拡大があり、団塊世代が2024年にかけて後期高齢者に達していく時期であるという前例のない局面での改定の議論だった」と指摘。その両方に対応するための観点で、今回の改定において、「医療資源投入量に応じた評価を設定し、入院医療・外来医療の機能分化を推進する方向での改定を一定程度行うことができた」と評価した。
 利便性を含め、患者へのサービスを向上させる観点としては、かかりつけ医機能を評価する機能強化加算の趣旨の明確化やオンライン診療の評価の設定、リフィル処方箋の導入などが実現したことを評価した。
 一方、急性期から回復期、慢性期にわたり入院医療の機能分化を図りつつも、「重症度、医療・看護必要度」に関しては、課題が残るとの考えを示した。
 外来医療の機能分化では、紹介状なしの受診時定額負担が新たに義務化される一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関に対する入院診療の評価(入院初日800点)が設けられたことに対し、実際に、紹介受診重点医療機関の手上げが一定数出てくるかについては、今後の動向を注視するとの姿勢を示した。

 

全日病ニュース2022年3月1日号 HTML版

 

 

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