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ホーム全日病ニュース(2022年)第1014回/2022年8月1日号地域包括ケア病棟入院料・回復期リハ病棟入院料について

地域包括ケア病棟入院料・回復期リハ病棟入院料について

地域包括ケア病棟入院料・回復期リハ病棟入院料について

診療報酬改定シリーズ●2022年度改定への対応③ 全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会委員  増田好美

【初めに】
 地域包括ケア(以下地ケア)病棟入院料、回復期リハビリテーション(以下回リハ)病棟入院料について、今回基本的な入院料の引き下げは行われなかった。しかし後述する様々な施設基準の厳格化により、地ケア病棟は基準を満たせない場合にはその減算全てが掛け合わせとなった。また回リハ病棟は実質4段階評価となり、重症患者割合が引き上げられ、結果として極めて厳しい改定となった。

【地域包括ケア病棟入院料の見直し】
 地ケア病棟に求められる3つの役割(Ⅰ. 急性期治療を経過した患者の受け入れ、Ⅱ. 在宅で療養を行っている患者等の受け入れ、Ⅲ. 在宅復帰支援)のバランスと救急対応について中央社会保険医療協議会(中医協)において議論され、複雑な施設基準(右図参照)の要件厳格化と、今までに無かった減算の掛け合わせというやり方で、地ケア病棟を有するどの医療機関においても頭を悩ます改定となった。今回、重症度、医療・看護必要度の見直しでA項目から「心電図モニター」が除外されたが、地ケア病棟においては、必要度Ⅰで14%から12%以上に、必要度Ⅱで11%から8%以上と若干引き下げにはなった。ただし、これは減算項目ではなく必須項目であることには注意が必要である。

【Ⅰ. ポストアキュートについて】
 自院の一般病棟からの転棟患者割合6割未満の要件を許可病床数200床以上の地ケア病棟2・4に拡大し、満たさない場合には15%減算となった。自院からのポストアキュートの割合が100%依存の急性期ケアミックス病院は多数存在しており、情け容赦ない梯子外しとなった。

【Ⅱ.サブアキュートについて】
 在宅患者の受入等に関しては、地ケア病棟1・3について①自宅等からの入棟患者割合を2割以上に、②自宅等からの緊急入院患者受入れが3月で9人以上と実績要件を厳格化し、地ケア病棟2・4に関しては新たに要件を設置し、上記①、②及び③在宅医療等の実績をいずれか1つ以上満たすこととし、満たさない場合には10%減算とした。一般病床には二次救急又は救急病院であること(許可病床数200床未満では救急外来や24時間の救急医療提供)が必須の要件とされた。
 療養病床で地ケア病棟を算定する場合は5%の減算算定が要件となり、減算を回避するためには、(1)上記①を6割以上、(2)上記②を30人以上、(3)救急告示ありのいずれかを満たす必要があるとされた。

【Ⅲ. 在宅復帰支援について】
 許可病床数100床以上の地ケア病棟1・2は入退院支援加算1の届出が義務化され、満たさない場合には10%減算となったが、専従の人員配置が必要なため、対応に追われている医療機関も少なくない。
 また、在宅復帰率7割以上の要件が地ケア病棟3・4にも課せられることになり、満たさない場合には10%減算、地ケア病棟1・2は在宅復帰率7割2分5厘以上と引き上げられ、これは減算ではなく必須要件となっている。在宅復帰率は6か月平均であり、コロナ対応をする中小病院の病床運営の中では非常に厳しい状況となっている。

【救急・在宅等支援病床初期加算の見直し】
 急性期患者病床初期加算は、許可病床数400床以上か400床未満かと、一般病棟からの受け入れが自院か他院かの4区分になり、他院からの転棟は増点、自院からの転棟は減点となった。在宅患者支援病床初期加算については、介護老人保健施設からの入院かその他かの2区分に再編され、いずれも増点となった。ただし、介護老人保健施設の場合は、在宅復帰率の対象外であることに注意が必要だ。

【回復期リハビリテーション病棟入院料の見直し】
 回リハ病棟については、入院料5が廃止され従前の入院料6を入院料5とし、5段階評価になったが、新たな入院料5は新規届出から2年間に限るとされたため、実質は4段階の評価となった。また、新規入院患者に占める重症患者の割合が、入院料1・2は4割以上に、入院料3・4は3割以上に引き上げられ、実績指数(FIM)が求められる入院料1・3には第三者評価を受けていることが望ましいとされた。回リハ病棟の対象に「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」が追加され、算定上限日数は90日以内とされた。

【まとめ】
 今回、地ケア病棟ではポストアキュートの抑制、サブアキュート機能と在宅復帰支援の強化が、要件の厳格化等による減算の掛け合わせで断行された。回リハ病棟に対しては、急性期病棟から発症後や術後早期の重症患者の受け入れがより求められる厳しい改定となった。今回減算となっている項目等により、地ケア病棟及び回リハ病棟を有し地域を支える多くの中小民間病院にとってどのような影響が及んだのか、しっかりと検証を行い、次の2024年度の改定ではどのような評価となるのか注視すべきと考える。

 

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