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ホーム全日病ニュース(2022年)第1014回/2022年8月1日号入院料への上乗せ145点超でも不足の病院への対応を議論

入院料への上乗せ145点超でも不足の病院への対応を議論

入院料への上乗せ145点超でも不足の病院への対応を議論

【中医協・入院・外来医療等分科会】診療報酬による看護の処遇改善の制度設計

 中医協の入院・外来等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は7月20日、診療報酬により実施する看護の処遇改善をめぐり、厚生労働省が示したシミュレーション結果を踏まえ、処遇改善の必要額に不足が生じる医療機関への対応のあり方を議論した。入院料への点数設定について、前回のシミュレーションで設定した100種類から、145種類まで増やすと、99.5%の医療機関がカバーできるが、それでも不足が生じる医療機関が直近データで8施設あることも示された。
 前回の分科会では、厚労省が看護の処遇改善を診療報酬で行うために、入院料等の算定回数と看護職員数を紐づけて、それぞれに点数を設定した場合のシミュレーション結果を示した。
 それによると、入院料に100種類の点数を設定すると、各病院への処遇改善の必要額と、上乗せ点数の合計額の過不足のばらつきを小さくすることができることが確認され、制度設計に向けた道が開けた。
 ただ、ばらつきを小さくすることはできるものの、一定数の病院に過不足が生じてしまう。特に、処遇改善の必要額に対し、収入見込み額(診療報酬による上乗せ)が不足する病院が出てきてしまうことには問題がある。
 このため、全日病常任理事の津留英智委員らは、「マックスで必要額にどれだけの過不足が生じているかのデータも示してほしい」と前回の分科会で要望。今回、厚労省が詳細なデータを示した。
 前回のシミュレーションでは、8通りのモデルを設定し、過不足のばらつきの状況をみた。その中で、ばらつきが小さく、点数設定も簡素であるため、委員の間で、有力候補との賛同が得られている入院料のみ100種類の点数を設定するモデルの場合で、乖離額の状況をみていく。

8施設が145点超でも不足生じる
 処遇改善の必要額に対し、収入見込み額が大きく不足するのは、モデルの上限である100点を超える点数を設定しないと、必要額に見合う収入見込み額が得られない場合だ。
 例えば、直近のデータ(2022年5月1日時点)を用いた特別調査によると、100点までだと97.7%の医療機関をカバーし、120点までだと99.0%、145点までだと99.5%をカバーできる。大部分の医療機関に必要額が行き渡ることを期待できるが、いわゆる「外れ値」の病院が一定数生じる。
 具体的には、145点を超える点数設定が必要となる医療機関は、特別調査のデータで8施設、前回シミュレーションのデータ(2020年7月等)で7施設、2019年病床機能報告のデータで5施設となっている(下図を参照)。なお、特別調査のデータで、補助金を申請している医療機関の中で、最高点は339点となっている。
 また、特別調査で、必要点数が100点を超える医療機関は37施設ある。その要因として、看護職員を手厚く配置していると考えられる医療機関が25施設あった。内訳は三次救急医療施設が19施設、子ども病院が6施設、周産期母子医療センターが16施設となっている。また、必要額が145点を超える8施設のうち6施設が100床未満の小規模の病院であった(重複あり)。

一時的な患者減をどう考えるか
 これらの結果を踏まえ、全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「今回のデータでは、ベッド数が比較的少なく、看護職員の配置が手厚い病院で、必要額に不足が生じることがわかった。ただ、新型コロナの影響で、一時的に患者数が減ったために、高い点数の設定が必要になっている病院もあると思う。患者が減れば、高い点数を設定しないと、必要額に見合わなくなる。しかし、患者数が戻れば、点数をつけすぎることになってしまう」と指摘。「そのような場合まで加味して対応する制度設計とすることは難しいのではないか」と述べた。
 津留委員も、新型コロナの影響による一時的な変化である可能性を厚労省に質問した。厚労省は、必要額が145点超の医療機関は、2019年度病床機能報告のデータで5施設、2020年7月等の前回シミュレーションのデータで7施設、2022年5月1日のデータで8施設と、新型コロナの感染拡大の期間に増えていることから、新型コロナの影響が一定程度あると想定できるとの考えを示した。
 産業医科大学病院医療情報部部長の林田賢史委員は、より高い点数を設定すると、それに応じて患者負担も上昇することから、「点数設定で対応するより、別の方法で補てんする方法を考えた方がよい」と主張した。
 入院料に加え、外来の初再診料にも点数設定を行うモデルに対しては、消極的な意見が多かった。
 法政大学経済学部教授の菅原琢磨委員は、「外来を含めることには、メリット・デメリットがある。デメリットとしては、医療機能分化で外来医療を縮小する病院があることや、患者の受診抑制による患者減の影響が入院料より大きい。一定以上の所得のある後期高齢者への患者負担割合の引上げも10月からで時期が重なるため、丁寧に説明しないと批判を受ける恐れがある。一方、入院料だけの点数設定のほうが、結果検証もやりやすく、受診抑制も生じにくい」と指摘した。
 健康保険組合連合会参与の中野惠委員は、「10月からは医療機関への問い合わせが増えると思う。せめて、新たな診療報酬の項目の名称だけでも、患者にとってわかりやすいものにしてほしい」と要望した。
 また、津留委員は、現状の看護職員等処遇改善補助金を受けていることにかかわりなく、「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関」の条件を満たせば、10月以降、確実に今回対応分の診療報酬を得ることができるかを厚労省に質問したが、厚労省は診療報酬収入が得られる「時点」については、中医協総会で議論されるとの考えを示した。
 看護職員等処遇改善補助金の申請時点において、新型コロナの影響で、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数年200台以上を満たせなかった医療機関に対する今回の診療報酬対応の取扱いについても、中医協総会で議論されると、厚労省は説明した。

 

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