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ホーム全日病ニュース(2023年)第1033回/2023年6月1日号オンライン診療などの推進に向けた基本方針を大筋で了承

オンライン診療などの推進に向けた基本方針を大筋で了承

オンライン診療などの推進に向けた基本方針を大筋で了承

【社保審・医療部会】医師等の医療従事者間の遠隔医療の取扱いは別に整理

 社会保障審議会・医療部会(遠藤久夫部会長)は5月12日、「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」を大筋で了承した。同日の議論を踏まえ、厚生労働省は、修文などを行った上で、改めて医療部会に報告するとともに、通知として発出する。
 ただ、患者が介在しない医師同士の遠隔コンサルテーションなど医療従事者間でのやり取りを含む遠隔医療については、個別事例を積み重ねるなかで、さらなる整理が必要との意見が相次いだ。

規制改革実施計画などを受け策定
 基本方針は、政府の規制改革実施計画(2021年6月18日閣議決定)に、「国民、医療関係者双方のオンライン診療への理解が進み、地域において、オンライン診療が幅広く実施されるよう、オンライン診療のさらなる活用に向けた基本方針を策定し、地域の関係者や関係学会の協力を得て、オンライン診療活用の好事例の展開を進める」と明記されたことなどを受けたもの(下表を参照)。初診からのオンライン診療の規則を定めるため、2022年1月に改訂された厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」での議論も踏まえている。
 全体の構成としては、基本方針の目的を明らかにした上で、「オンライン診療(医師と患者間での遠隔診療)」と「医師等医療従事者間での遠隔医療」を分けて整理した。
 前者は、オンライン診療に加え、「患者向けに、診察、診断、診断結果の伝達、処方、医療機関への受診勧奨等をリアルタイムで行う行為」としてのオンライン受診勧奨を含んでいる。後者では、「遠隔放射線画像診断、遠隔病理画像診断、遠隔コンサルテーション、遠隔カンファレンス、遠隔救急支援、12誘導心電図伝送、遠隔ICU、遠隔手術指導等」をあげている。
 検討の視点としては、①地域の医療提供体制の確保において、遠隔医療が果たす役割②国、都道府県、医療関係者、それぞれが取り組むべき内容③患者・住民の理解を進めるための取組み④個人情報の取扱いや情報セキュリティのあり方─を示した。
 基本方針の目的は、「厚労省が、オンライン診療その他の遠隔医療の実施形態およびその特徴を整理した上で、導入および実施上の課題およびその解決に向けて、国、都道府県、市町村を中心とする関係者の望ましい取組みの方向性を提示することで、遠隔医療の導入のための環境の整備を進め、もってオンライン診療その他の遠隔医療の適正かつ幅広い普及に資すること」としている。
 この中にある「適正」な推進について、「安全性、必要性、有効性、プライバシーの保護等の個別の医療の質を確保するという観点に加え、対面診療と一体的に、地域の医療提供体制を確保する観点も含まれる」ことも明確にしている。

あらゆる可能性を否定せず対応
 全日病副会長の神野正博委員は、基本方針案の全体に対して、賛意を示した上で、「オンライン診療などについては、こうだと決め打ちにしてしまうのではなく、技術の進展に伴って生じてくる、あらゆる可能性を否定せずに対応することが必要だ。一方、基本方針案にある『適正かつ幅広い普及に資することが目的』というところの『適正』に関連しては、例えば、不適切事例をチェックする(統一的な)組織体を設置して、速やかに指導できる体制が求められる」と述べた。
 また、神野委員は、「過疎地の病院に、都会の専門医が、遠隔コンサルテーションを行うことは、医療の質を担保するために有効な手段だ。オンライン診療については、コロナ禍で、私が理事長を務める恵寿総合病院(石川県七尾市)の、ある医師が濃厚接触者になり、予約も一杯だったので、患者は病院で、医師は自宅からというオンライン診療を行った。他の医師が同席して、D to P with D となった。患者は病院にいるので、検査などを行うにも都合がよい。そのような経験もあり、オンライン診療、遠隔診療を推進すべきということへの確信を持つことができた」と強調した。
 さらに、オンライン診療、遠隔診療の各形態において、「D to P」、「D to P with D」、「D to P with N」、「D to P with その他医療従事者」、「D to P with オンライン診療支援者(医療従事者以外)」がある(D=doctor、P=patient、N=nurse)。医療・介護等の2024年度同時改定の議論が進んでいることもあり、これらを推進するにあたって、診療報酬上のそれぞれの取扱いを整理することを、神野委員は求めた。
 日本病院会会長の相澤孝夫委員も、「地域の医療提供体制を確保する上で、オンライン診療は非常に大きな意味がある。病院に来れない患者が増えて、通院用のバスを走らせ、病院に来てもらう方法を取っている病院もあるが、オンライン診療を積極的に活用すべきだ」と主張した。一方、医師等の医療従事者間での遠隔医療については、「まだ、きちんと整理されていないと感じる」と述べた。
 報酬の配分などの取扱いを含め、医師等の医療従事者間での遠隔医療について、改めて今後の整理が必要との意見は、日本医師会常任理事の釜萢敏委員や日本医療法人協会会長の加納繁照委員、国際医療福祉大学大学院教授の島崎謙治委員などからも出された。これに対し、厚労省担当官は、現状では、さまざまな状況があり、各学会などからの意見を聴取しつつ、個別事例を積み上げながら、必要な整理を検討したいとの考えを示した。
 なお、5月8日に、新型コロナの感染症法上の位置づけが2類相当から5類になったことに伴い、基本的には、オンライン開催となっていた医療部会は、中医協などと同様に、同日から会場とオンラインのハイブリッド開催となっている。神野委員も会場で参加した(写真)。

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211101.pdf

    2021/11/01 ... また、新型コロナ禍で授業などがオ ... 加することに、診療側は賛意を示した。 ... らは、医療相談や受診勧奨に相当する.

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