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ホーム全日病ニュース(2023年)第1033回/2023年6月1日号人生の最終段階における医療・介護のあり方などを議論

人生の最終段階における医療・介護のあり方などを議論

人生の最終段階における医療・介護のあり方などを議論

【厚労省・同時報酬改定に向けた意見交換会】本人の意思決定支援を推進する対応が課題

 厚生労働省の「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」は5月18日、「人生の最終段階における医療・介護」と「訪問看護」をテーマとした。看取りにおける本人の意思決定支援を推進するための対応などが課題とされた。一方、これまで3回実施した意見交換会は今回で終了。厚労省が結果をまとめ、中医協と介護給付費分科会に示し、今後の同時改定に活用する。
 「人生の最終段階における医療・介護」については、「患者・利用者本人が住み慣れた場所で望む生活を続け、尊厳ある死を迎える」ことを支援するため、医療・介護関係者が連携し、より早期からの本人の意思決定支援を進めることが求められている。
 ただ、重度の認知症であるなど、本人の意思が確認できないことがある。その場合は、本人以外の人が、本人にとっての最善の方針を選ぶことになるが、簡単なことではない。本人の意思であっても、その時点の本人の意思であって、状況によって変わり得る。
 そのような困難がある中で、一律の基準で決められた実績を報酬で評価する仕組みを作ることはさらに難しい。このため、意思決定を支援する体制の整備や関係者の情報共有を推進することを報酬で評価することが、対応すべき課題とされた。
 例えば、「人生の最終段階における意思決定に係る指針」を策定していない在宅医療を行っている医療機関は「約半数」との調査結果が示された。意識調査では、在宅医療を提供する医療機関のうち、「介護従事者を含めたチームと十分な話し合いを行うこと」の指針を定めている医療機関は約76.2%という現状が報告された。
 厚労省は、これらを踏まえ、「医療機関や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などの意思決定に困難を抱える者や困難を抱えることが予測される者に関わる機関に求められる役割・機能」を明確にすることや、救急現場を含めた「患者の家族等や医療・介護従事者における情報の共有」を検討の視点として提示。委員間でも、そのような視点を持ち、報酬改定に臨むことの共通認識を得た形となった。
 なお、在宅療養支援診療所・病院や地域包括ケア病棟入院料等、療養病棟入院基本料では、「人生の最終段階における意思決定に係る指針」の策定は、要件となっている。
 また、在宅等や介護施設において、苦痛を伴う看取りを行う場合に、がんでは疼痛管理を評価する報酬があるが、非がんでは明確な評価が位置づけられていないため、対応を求める意見も相次いだ。
 「訪問看護」については、多様化する利用者や地域のニーズを踏まえ、訪問看護の質の担保・向上の方策を図るための議論が行われた。
 特に、ターミナルケアの実施や医療ニーズが高い特別な管理を要する者への対応などが課題となる。日本慢性期医療協会常任理事の田中志子委員は、特定行為研修を修了した看護師を配置する訪問看護ステーションを報酬で評価することを主張した。日本医師会常任理事の江澤和彦委員は、規模が小さく、対応能力の低い訪看ステーションがあることを踏まえ、他法人の医療機関を含め、地域での連携を強化することで体制確保を図るべきであるとした。

各会長が感想を述べる
 意見交換会を終えるにあたり、中医協の小塩隆士会長は、「2000年度に介護保険制度が導入され、医療と介護がそれぞれの強みを活かす制度に変更し、一定の効果を上げたが、連携という課題も生じた。とりわけ、要介護の高齢者の病状が急変した場合の対応をどうするかということがある。個人差・地域差が大きく、画一的な制度設計を行うことは難しい。しかし、現場が最善を尽くしているにもかかわらず、よくない結果が伴うのであれば、直さないといけない」と述べた。
 介護給付費分科会の田辺国昭分科会長は、「前回(6年前)の意見交換会では、介護医療院の創設や維持期リハビリテーションの整理など制度移行期の課題が大きなテーマだった。今回は、高齢者が在宅、施設、医療機関を空間的に移動する、あるいは制度的に移動することで生じる様々な問題が指摘された。連携を図るということでは、今回、関係者で情報を共有することが、具体的な課題として示されたと思う」との考えを示した。
 委員からの総論的な意見では、日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員が、「6年に1度の開催とはせずに、定期的に開催し、また、今回の意見交換会が2024年度同時改定にどう影響したかの検証も行ってほしい」と要望。田中委員は、次回は、障害福祉サービスとの連携を考慮することを求めた。

 

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