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ホーム全日病ニュース(2023年)第1033回/2023年6月1日号50年後の人口は現在の7割、65歳以上は全体の4割

50年後の人口は現在の7割、65歳以上は全体の4割

50年後の人口は現在の7割、65歳以上は全体の4割

【社人研】5年に1度の「日本の将来推計人口」を公表

 国立社会保障・人口問題研究所は4月26日、5年に1度の「日本の将来推計人口」(2023年推計)の結果を公表した。50年後の日本の人口動態は、総人口が現在の7割に減少し、65歳以上人口がおよそ4割を占めるという、人口減少と超高齢社会がさらに進展する姿だ。ただ、今回の推計では、前回推計よりも出生率は低下するものの、平均寿命が延伸し、外国人の入国超過増により人口減少の進行はわずかに緩和するという結果だった。
 将来の人口動態は、年金制度をはじめ、医療・介護に対しても、決定的な影響を与える。このため、新たな将来推計人口を念頭に置きながら、今後の医療提供体制などを考えていく必要がある。大きなトレンドはこれまでの将来推計人口と変わっていないが、合計特殊出生率の下方修正や外国人の入国超過増が続くという想定は、地域ごとの将来人口推計により大きな変化を与えている可能性がある。
 日本の将来推計人口とは、将来の出生、死亡および国際人口移動について仮定を設け、これらに基づいて日本全域の将来の人口規模および年齢構成等の人口構造の推移について推計を行ったものである。将来の出生推移・死亡推移についてそれぞれ中位、高位、低位の3仮定を設け、それらの組み合わせにより9通りの推計を行っている。
 以下では、出生・死亡とも中位の組み合わせでの結果の概要を示す。

総人口は2070年に8,700万人
 合計特殊出生率は、新型コロナの感染拡大以前からの低迷を反映し、前回推計の1.44(2065年)から1.36(2070年)に低下する。また、短期的には新型コロナの感染拡大期の婚姻数減少等の影響を受け低調に推移する。平均寿命は、2020年の男性81.58年、女性87.72年が、2070年には男性85.89年、女性91.94年に伸びる。
 国際人口移動は、近年の動向を反映し、日本人の出国超過傾向がわずかに緩和される。一方、外国人の入国超過数は、新型コロナの感染拡大期を除く近年の水準上昇を反映し、前回推計の年間約6万9千人(2035年)から今回推計の年間約16万4千人(2040年)へと増加する。
 総人口は、2020年国勢調査による1億2,615万人が2070年には8,700万人に減少すると推計した。
 総人口に占める65歳以上人口の割合( 高齢化率)は、2020年の28.6%から2070年には38.7%へと上昇する。前回推計と比較すると、2065年時点の総人口は前回8,808万人が今回9,159万人となる。総人口が1億人を下回る時期は2053年が2056年になり、人口減少の速度はわずかに緩む。これは国際人口移動の影響が大きい。
 65歳以上人口割合(高齢化率)は、2065年時点で比較すると前回推計と変わらず38.4%となっている。65歳以上の人口(高齢者数)のピークは、前回は2042年の3,935万人だったが、今回は2043年の3,953万人になる。

出生数と国際人口移動の仮定
 日本の将来推計人口における推計方法は、前回推計と同様、コーホート要因法を基礎としている。コーホート要因法とは、年齢別人口の加齢にともなって生ずる年々の変化をその要因(死亡、出生、国際人口移動)ごとに計算して将来の人口を求める方法である。
 すでに生存する人口については、加齢とともに生ずる死亡数と国際人口移動数を反映して将来の人口を求める。また、新たに生まれる人口については、15~ 49歳の女性人口に生ずる出生数を性比で分け、その生存数および国際人口移動数を順次算出して求め、翌年の0歳人口として組み入れる。

(出生率の中位推計の仮定)
 人口動態調査と同定義の合計特殊出生率は、実績値が1.33であった2020年から、2023年の1.23まで低下し、以後上昇に転じた結果、2070年には1.36へと推移する。前回推計と比較すると、2065年は前回の1.44から今回の1.35に低下し、2070年は1.36となる。

(国際人口移動の仮定)
 外国人の国際人口移動の実績をみると、近いところではリーマンショックや東日本大震災に起因する大規模な出国超過が生じたほか、新型コロナの世界的流行による外国人の新規入国の停止など、外国人の出入国傾向は短期間に大きな変動を示している。しかしながら、長期的には概ね入国超過数が増加する傾向にあるとみられ、さらに2015年以降は、より高い水準に移行したとみられる。
 これまでの仮定値はそれまでの入国超過数の増加の動向を踏まえつつも、概ね直近の平均値付近の水準に収束するとしてきた。そこで、直近(2016~2020年)の動向のうち、新型コロナの世界的流行の影響を受けた2020年を除いた平均値を求め、それを将来に投影することにより、2040年までの仮定値とした。その結果、2022年以降2040年までの将来の外国人の入国超過数は、年間男性8万1,570人、女性8万2,221人、合計で16万3,791人となる。

こども・子育て政策を強化
 加藤勝信厚生労働大臣は4月28日の閣議後会見で、将来推計人口の結果に対する見解を示した。
 前回推計との比較では、「平均寿命が延伸し、外国人の入国超過数が増加するため、人口減少のペースは緩和する見通しとなっている。しかし、将来の出生率は1.44から1.36に低下するなど、引続き少子高齢化や人口減少が継続することが見込まれ、我が国の社会経済や社会保障制度に与える影響も懸念されている」と述べた。
 外国人の入国については、「2016年から2019年にかけて、外国人の入国超過数が年平均16万人という実績を基に将来への投影が行われた。今後、外国人労働者の適正な雇用環境の整備にさらに努める必要があるものと考えている」と、外国人が日本で暮らす環境を整えることが重要とした。
 出生数については、「少子高齢化、人口減少の流れに歯止めをかけるべく、こども・子育て政策の強化について、現在こども未来戦略会議において必要な政策強化の内容、予算、財源について議論が進められており、厚生労働省としても積極的にこうした議論に入っていきたい」との姿勢を示した。

 

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  • [1] 第2章 「想定される2040年の世界」:「病院のあり方に関する報告 ...

    https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2021/02.html

    国立社会保障・人口問題研究所の推計(平成29 年推計)の中位推計では、2040 年 ... するので、消費税率換算で約13%の増税に相当する財源が必要と想定されている。

  • [2] 病院のあり方に関する報告書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2021_arikata.pdf

    29 年推計)の中位推計では、2040 年生産年齢 ... 消費税率換算で約 13%の増税に相当する財源が ... 歯止めがかからず、②③に関して、種々の見直.

  • [3] 病院のあり方に関する報告書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2015_2016_arikata.pdf

    人口問題研究所(http://www.ipss.go.jp/)の中位推計を. 用いる。 ... による需給と財源確保に係わる提言が公表され ... 若年人口の減少は歯止めがきかない。看護、.

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