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ホーム全日病ニュース(2023年)第1037回/2023年8月1日号増加する需要を踏まえ、在宅医療をテーマに議論

増加する需要を踏まえ、在宅医療をテーマに議論

増加する需要を踏まえ、在宅医療をテーマに議論

【中医協総会】診療側委員は在宅専門診療所とそれ以外の「効率性の違い」強調

 中医協総会(小塩隆士会長)は7月12日、2024年度診療報酬改定に向け、在宅医療をテーマに議論を行った。増加する在宅医療の需要に対し、関係機関が連携し、地域でネットワークとして在宅患者を支える体制が求められた。診療側委員は、在宅医療の評価を考える上で、かかりつけ医がいる医療機関と在宅専門医療機関の訪問診療や往診の「効率性の違い」を強調した。
 在宅医療を取り巻く状況をみると、死亡数は2040年まで増加が見込まれ、今後の日本は高齢多死社会を迎える。一方、2022年度の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によると、国民の一定割合は、最期を迎えたい場所やそれまでの医療・ケアを受けたい場所を自宅と考えている。
 第8次医療計画では、増加する訪問診療・訪問看護の需要に対し、適切な在宅医療の圏域を設定し、地域での協議・調整を通じ、より実効性のある体制整備を進める必要があるとした。
 連携の形では、診療のバックアップ体制や夜間輪番などの在宅医療を担う医師による相互協力や多職種連携に基づく水平連携と、急変時に入院を要する在宅患者のための垂直連携の仕組みによる取組みが地域で進んでいる。
 医療と介護の連携については、2015年度から在宅医療・介護連携推進事業が実施されている。ただ、実態調査では、在宅医療で医療の対応が必要とされる4つの場面(日常の療養支援、看取り、急変時の対応、入退院支援)のうち、「急変時の対応」が十分に進んでいないとの結果が示されている。

引き続き常時対応の体制が課題
 次に、診療報酬の状況をみると、在宅患者訪問診療料の算定回数は一貫して増加傾向にある。都道府県のばらつきが大きく、人口千人当たりの1年間の在宅患者訪問診療料の算定回数は最大3.5倍の差がある。最多は大阪府で、最少は沖縄県である。
 往診料の全体の算定回数は横ばいだが、夜間・深夜往診加算、休日往診加算の算定回数は近年大きく増加している。地域のばらつきがあり、2015年から2022年のこれらの算定回数の増加率をみると、東京都や神奈川県など、一部地域で増加率が高い。
 緊急往診加算の算定回数は2022年に急増した。新型コロナ特例で、往診に関する診療報酬の要件緩和・評価の充実が行われたため、その影響も考えられる。特例は2023年5月8日の取扱いの変更に伴い、一部廃止となり、今後解消される予定なので、今後の動向が注目される。
 在宅療養支援病院の届出は、近年増加傾向にある。2022年で、機能強化型(単独型)は267施設、機能強化型(連携型)は454施設、従来型は973施設である。在宅療養支援診療所の届出は、近年横ばいであったが、2022年は増加している。機能強化型(単独型)は244施設、機能強化型(連携型)は3,630施設、従来型は11,390施設である。
 在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の届出医療機関数と算定回数も増加傾向にある。看取り加算・在宅ターミナルケア加算の算定回数は、地域のばらつきはあるが、2015年以降、全体として増加している。
 在宅医療の需要に応えるため、近年の診療報酬改定では、多くの医療機関が在宅医療に参画できるよう、診療報酬の見直しを行ってきた。
 例えば、複数の疾病がある在宅患者に対応するため、主治医の依頼を受けた他の医療機関が訪問診療を行った場合の評価として、2018年度改定で新設した在宅患者訪問診療料(Ⅰ)2の算定回数は、新設後増加しており、対象病名では皮膚疾患、依頼先の診療科では皮膚科が多くなっている。
 在支診・病以外の医療機関が算定し、2022年度改定で、24時間の往診体制と連絡体制の要件を緩和した「2」を設け、「継続診療加算」から名称を変更した「在宅療養移行加算」の状況では、算定していない理由としては、見直し理由であった「24時間の往診体制の確保ができない」が最も多く、引き続き課題が残っている。
 訪問リハビリテーションについては、医療保険による在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料の算定回数は、近年横ばいの状況にある。一方、訪問リハビリテーションの請求事業所は年々増加している。開設者種別では、約8割が医療機関、約2割が介護老人保健施設となっている。
 委員からは、在宅医療に関し、個別の診療報酬項目にはあまり踏み込まない総論的な発言が多かった。
 日本医師会常任理事の長島公之委員は、第8次医療計画で、在支診・病など「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」を位置づけ、適切な在宅医療の圏域を設定するとされたことを踏まえ、「地域の実情に応じた取り組みの推進」が在宅医療の体制において求められるとした。病診連携では、ICTの活用が有効であると指摘した。患者への常時対応は医療機関と訪問看護のセットで考えるべきとし、かかりつけ医が実施する在宅医療と在宅医療専門医療機関が実施する在宅医療は「効率性が異なる」ことを強調した。
 日医常任理事の江澤和彦委員は、在宅医療の患者にも、リハビリテーション・栄養・口腔ケアが一体的に提供される体制が重要であるにもかかわらず、地域の取組みは不足していると指摘。「まずはスクリーニングを実施し、必要性を把握した上で、近隣の医療機関や老健施設、歯科診療所から派遣される」ことを評価する改定を求めた。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、在宅医療の提供主体として、「かかりつけ医の医療機関、訪問診療専門医療機関、大規模グループがある」とした上で、それぞれのメリットは地域性により異なるが、それぞれが補完しあう形で、かかりつけ医機能を確保すべきとした。その際、在宅医療を支援する病院の役割も大きいと主張した。

 

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  • [1] 2020.9.1 No.970

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200901.pdf

    2020/09/01 ... 小塩隆士会長)に、2020年度診療報. 酬改定で設けた9月30日までの経過措. 置の一部を、半年間延長することを提. 案した。入院基本料の「重症度、医療 ...

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