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ホーム全日病ニュース(2023年)第1037回/2023年8月1日号オン診や外来、外来腫瘍化学療法、入退院支援をテーマに議論

オン診や外来、外来腫瘍化学療法、入退院支援をテーマに議論

オン診や外来、外来腫瘍化学療法、入退院支援をテーマに議論

【中医協・入院医療等分科会】オンライン診療は特定の医療機関・傷病名に偏る状況示される

 中医協の入院・外来医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は7月20日、2024年度診療報酬改定に向け、オンライン診療、外来医療、外来腫瘍化学療法、入退院支援をテーマに議論を行った。
 オンライン診療については、2018年度改定で診療報酬の評価を新設。対面診療が原則との考え方のもと、厳格な要件が設定された。2020年度改定では、実態に応じた見直しが行われ、若干の緩和となった。2020年以降に、新型コロナの感染拡大が起き、政府は時限的な特例として、初診からのオンライン診療を含め大幅な緩和を実施した。その後、ガイドラインを見直し、恒久的なルールとして、初診からのオンライン診療を可能とした。これに合わせて2022年度改定が行われている。
 オンライン診療の届出医療機関数は経時的に増加しており、2023年4月1日時点で7,500施設。2020年10月時点の実態調査であるが、大半の届出施設において、実施実績がなく、15回以上の算定実績があるのは、初診料で全体の2.4%、再診料・外来診療料で全体の9.3%の施設に過ぎなかった。算定する医学管理料は、特定疾患療養管理料が最多であり、特定の医療機関で飛び抜けて算定が多かった(695件)。
 患者の所在が医療機関と異なる市町村または特別区のオンライン診療の件数の割合が97.5%を超える医療機関は239施設(13.7%)。また、全診療件数のうち、オンライン診療が1割を超える医療機関は112施設(6.9%)、5割を超える医療機関は7施設となっている(0.4%)。オンライン診療の初診料、再診料・外来診療料の算定件数で、最も多い傷病名はいずれも新型コロナ。一方、対面診療の割合が5割未満の医療機関における再診料・外来診療料の件数では、不眠症が4割で最多であった(いずれも2022年5月診療分)。
 全日病常任理事の津留英智委員は、不眠症が最多であることについて「初診で向精神薬の処方はできないので、安全だが、再診では処方できる。適切なオンライン診療が行われているのか。実態が気になる」と指摘した。
 他の委員からも、現状のオンライン診療の件数が特定の分野、医療機関で多いことへの懸念を表明する意見が相次いだ。地域医療機能推進機構理事長の山本修一委員は、「鳴り物入りで登場したオンライン診療が、一部の医療機関で偏った使われ方をしているのではないか。指導という体制を考える必要があると強く思った」と述べた。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「オンライン診療は、離島・へき地において効果を発揮する。一部いかがなものかと思われる使われ方があるが、こちらでの積極的な活用を推進すべきである」と強調した。

生活習慣病を管理する評価を議論
 生活習慣病を管理する評価に、かかりつけ医機能に近いものでは地域包括診療料・加算があり、専門的な医学管理に近いものでは生活習慣病管理料があるが、両点数の算定は低調である。一方、多くの医療機関は特定疾患療養管理料を算定しており、同点数の位置づけが不明確との指摘がある。
 特定疾患療養管理料の評価は診療所で225点、100床未満の病院で147点、100床以上200床未満で87点であるのに対し、生活習慣病管理料は570 ~ 720点と高い。また、地域包括診療加算と特定疾患療養管理料は併算定ができる。
 生活習慣病管理料を算定している回数・医療機関は2016~ 2022年で、ともに若干上昇しているが、概ね横ばいである。生活習慣病管理料の算定で困難を感じることでは、「療養計画書を作成し、説明の上計画書に署名を受けること」、「自己負担額について患者の理解を得にくいこと」が多くなっている。
 健康保険組合連合会参与の中野惠委員は、「最新技術などを活用すれば、生活習慣病管理料の療養計画書作成の困難さを軽減することができるのではないか。それにより、効率化が図れれば、点数もそれに見合ったものにできる」と述べ、特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行を促した。
 2022年10月から特定機能病院や200床以上の地域医療支援病院で、紹介状なしで受診する場合に、患者に求める定額負担が7千円以上となり、定額負担を求めない場合の見直しも行われた。今後、地域で位置づけられる紹介受診重点医療機関も対象となる。2022年度改定では、紹介・逆紹介割合に基づく減算規定も厳格化された。
 それ以前から、紹介なしで外来受診した患者の割合は、病床規模が大きい病院ほど、低下傾向にある。
 日本病院会常任理事の牧野憲一委員は、「(紹介受診が中心とされる病院の外来が制限される一方で、)地域包括診療料などかかりつけ医機能を象徴する診療報酬の算定は伸びていない。外来医療の機能分化は、(紹介する側と紹介される側の)両者が機能しないと成り立たないが、かかりつけ医機能の充実はまだ進んでいない」と指摘した。
 これに対し、厚生労働省担当者は、「先の国会でかかりつけ医機能の制度整備の規定を盛り込んだ法改正が行われた。(具体的なかかりつけ医機能の項目など)省令改正はこれからだが、その議論を踏まえて、診療報酬の評価を検討したい」と回答した。

外来腫瘍化学療法診療料の状況
 外来腫瘍化学療法については、外来における安心・安全な化学療法の実施を推進するため、2022年度改定で外来腫瘍化学療法診療料を新設した。従来の外来化学療法加算よりも、治療管理期間の副作用対応や24時間相談できる連絡体制を評価する点数となっている。
 実態調査では、◇外来化学療法加算1の9割以上の医療機関が外来腫瘍化学療法診療料1に移行した◇外来腫瘍化学療法診療料2については、2021年度と比較し、移行している施設数は3割台◇外来化学療法室において、薬剤師は看護師や医師と比較し、配置数が少ない─ことなどが確認できた。
 「急性期充実体制加算及び総合入院体制加算を届け出ている施設で、化学療法を実施した実患者数のうち、すべてを入院で実施した実患者数の割合の中央値は29.2%、24.5%」との状況も示され、これを問題視する意見が相次いだ。急性期充実体制加算の施設基準の手術等の実績で、「化学療法(外来腫瘍化学療法診療料1の届出を行っており、かつ、レジメンの4割が外来で実施可能であること)」が影響しているとの指摘があり、施設基準を見直すことの提案もあった。
 津留委員は、外来腫瘍化学療法を推進するための外来腫瘍化学療法診療料の趣旨に賛同した上で、外来腫瘍化学療法診療料届出施設において、外来栄養食事指導料の注2・注3の届出を行っていた施設の割合が33%、17%と低いことに懸念を示した。施設基準を満たすのが困難な要件としては、「管理栄養士が医療関係団体等による悪性腫瘍に関する栄養管理方法等の習得を目的とした研修を修了していない」、「専任の管理栄養士が悪性腫瘍の栄養管理に関する研修…を修了することが困難である」との回答が多かった。
 津留委員は、「栄養管理指導が重要になるが、特定の医療関係団体等が実施する300時間以上の研修など施設基準のハードルが高い」と指摘。施設基準の緩和の検討を提案した。

退院困難な患者対応を評価すべき
 入退院支援については、病気になり入院しても住み慣れた地域で継続して生活できるよう、入院前から関係者との連携を推進するために、入退院支援加算による評価を実施するとともに、入院時支援加算などにより、外来部門と病棟との連携強化を推進している。
 津留委員は、「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」で、「医療においてはより『生活』に配慮した質の高い医療を、介護においてはより『医療』の視点を含めたケアマネジメントを行うために必要な情報提供の内容や連携のあり方」が課題とされたことも踏まえ、「老人保健施設など介護側の医療への対応強化」が重要と強調した。
 猪口委員は、入院時支援加算の届出がある場合には、急性期一般入院基本料、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料のいずれにおいても、届出がない場合と比較して、平均在院日数が短かったということを示す資料に対して、「そもそも入院時支援加算を取得できる病院は、クリニカルパスに合った予定入院患者が多いために、在院日数を短縮できる」と因果関係が逆であることを指摘。「むしろ、生活に困難を抱え、退院先が見つからないなど、退院が難しい患者が入院する病院の努力をより評価すべき」と主張した。
 他の委員からは、急性期一般入院料で「緊急入院」が退院困難な理由としてあがったため、「緊急入院」への退院支援を評価すべきとの意見が出た。

 

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