全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2023年)第1037回/2023年8月1日号院内で医療DXを進める人材育成プログラムの第1回講習会を開催

院内で医療DXを進める人材育成プログラムの第1回講習会を開催

院内で医療DXを進める人材育成プログラムの第1回講習会を開催

【医療DX人材育成プログラム①】病院が目指すべき医療情報システムを高橋教授が説明

 2023年6月2日に総理大臣官邸で第2回医療DX推進本部が実施され、岸田総理自らが医療DXの推進を宣言した。今後、日本のすべての病院が、院内のDXの推進を求められるようになる。このような時代の要請に各病院が適切に対応するために必要な院内人材を養成する目的で、全日本病院協会は、広報委員会を担当委員会とし、日本医療教育財団、介護・医療見える化・効率化協会と共催で、「2023年度医療DX人材育成プログラム(全10回)」を開講した。今後、本紙において毎回の講習会の内容を紹介する。
 第1回講習会が、6月29日(木)13時〜 16時にZoom で開催され、132病院、334人が参加した。まず、本プログラムの開講にあたり、宮地千尋広報委員長(医療法人明倫会 宮地病院)が開会の挨拶として、受講に対する感謝の意を表し、趣旨説明を行った。
 最初の総論講義(1)において高橋泰教授(国際医療福祉大学)は、今回のプログラムの主要な目的は、「2030年頃の自院の情報システムの到達地点(図 右下の丸で囲まれた地点)と、そこに至るまでの経路(図の矢印)を想像できるようになる」ことであると説明した。
 また図を示しながら、「オンプレミス電子カルテ+穴の開いた閉域網(インターネットと接続しない閉じたネットワーク)」という医療情報システムを有する我が国の多くの病院(図左上の丸で囲まれた状況)は、他の業界と比べ格段に高い料金を支払っているにもかかわらず、電子カルテ用端末から利用者がインターネットを利用できず、しかも病院情報システムがウイルス感染の危機に曝されるという、「泣き面に蜂」の状況にあると指摘。
 この現状を抜け出すために多くの病院が目指すべき医療情報システムは、「価格が安く高機能なWEBカルテ+WEBカルテと連動したモバイルシステム」により構成されたシステムであるとした。また、6月2日に公表された医療DX令和ビジョン2023に示された日本の医療情報システムの目指す方向性は図の矢印と同じ方向だが、医療DXの根幹であるAPI接続やモバイルという用語が使われなかったことが問題である、という指摘も行われた。
 総論講義(2)では、石川賀代理事長(社会医療法人石川記念会 HITO病院)が、業務用のスマホやタブレットなどのモバイル機器を用いたチームチャット、電子カルテ連携や現在HITO病院で実践されている多職種協働セルケア方式®の報告を行った。これらの導入により、看護師の1日当たりの歩行距離が8km から3kmに減少し、ベッドサイドでケアに当たる時間が1日100分増えたこと、リハビリスタッフが1日に提供できる施術時間が1単位増えたなど、具体的な成果が紹介された。
 最後の小林土巳宏氏( 株式会社MEMORI)によるIT基礎についての講義では、①Web+Webシステム、②ソーシャルサービス、③電子メール、④業務システム(VDI等)、⑤教育システム(e-ラーニング)についての説明があった。
 最後にオンラインを通して講義内容の振り返りテストを行い、第1回の講習会が終了した。
 今後、「総論講義」で、受講生が自院の病院情報システムが進むべき方向性を理解し、「各論講義」で、セキュリティーを含めた自院のシステムのデザインや業者との交渉において必要な用語や知識を身に付けることができるよう講義を行い、テストを行いながら知識が着実に習得できるようプログラムを進めていく予定である。

 

全日病ニュース2023年8月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。