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ホーム全日病ニュース(2023年)第1040回/2023年9月15日号猪口会長、神野副会長が物価高騰等に対応できる改定訴える

猪口会長、神野副会長が物価高騰等に対応できる改定訴える

猪口会長、神野副会長が物価高騰等に対応できる改定訴える

【社保審医療保険部会・医療部会】2024年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論がスタート

 社会保障審議会の医療保険部会(田辺国昭部会長)と医療部会(遠藤久夫部会長)が2024年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論を開始した。全日病の猪口雄二会長(日本医師会副会長)は医療保険部会(8月24日)で、神野正博副会長は医療部会(8月25日)で、2024年度改定に向けて、最近の物価高騰・賃金上昇、新型コロナを含む新興感染症、医療DXなどに対応できる水準の改定が必要であることを訴えた。
 診療報酬改定の個別具体的な議論は中医協で行い、中医協で諮問・答申が行われるが、基本方針は、社会保障審議会の医療保険部会と医療部会が策定することになっている。また、改定率は予算編成過程で内閣が決定する。基本方針は今回も両部会で検討を重ね、前回改定と同じように、12月上旬に策定することになるとみられる。
 なお、中医協は、すでに春から改定の議論を開始しており、夏に第1ラウンドの議論を終えた。秋以降、本格的な議論に入る。2024年度改定は、薬価改定以外は4月ではなく6月に実施することになった。だが、諮問・答申や法令の公布は通常どおりの日程で行われる予定となっている。

骨太方針に基づく対応求める
 猪口会長は、骨太方針2023を参照しつつ、主張を行った。骨太方針2023では、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の改定について、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う」との文言になっている。
 玉虫色の表現だが、全日病や日本医師会を含む医療・介護関係団体が政治・行政に働きかけた結果、原案の厳しい表現が見直された経緯がある。物価高騰・賃金上昇などを踏まえ、「必要な対応を行う」ことが明示された。猪口会長は、「骨太方針2023に基づいて同時改定が行われることを強く求める」と強調した。
 特に、入院時食事療養費については、制度導入から30年近く同水準に据え置かれている。病院の給食部門が慢性的に赤字となっている状況に追い打ちをかけるように、最近の物価高騰・賃金上昇がある。猪口会長は、病院の給食が継続できない事態に陥っていることへの危機感を訴えた。
 新型コロナについては、感染症法の位置づけが2類相当から5類になり、2024年度に向け、診療報酬の時限的・特例的な対応も段階的に縮小される方向にある。2024年度からは、時限的・特例的な対応が基本的には終了する予定であることを踏まえ、「新型コロナに限らず、新興感染症に対応することのできる診療報酬上の評価が必要になる」と述べた。
 診療報酬DXについては、診療報酬の改定時期の後ろ倒しだけでなく、医療機関の負担の極小化を実現するための共通算定モジュールや標準型レセプトコンピュータ・電子カルテの開発などの取組みに期待を示した。
 2024年度からスタートする医師の働き方改革に向けては、「第一義的な目的は、勤務医の健康を守ることだが、同時に、地域医療の継続性や医療の質を損なうものになってはいけない」との懸念を示した。その上で、「これまで講じてきた診療報酬や地域医療介護総合確保基金の対応を継続・発展させなければ、医師の働き方改革は実現できない」と強調した。

高齢者救急は『出口』問題が大事
 医療部会で、神野副会長も同様に、物価高騰・賃金上昇、新型コロナを含む新興感染症、医療DXなどに対応できる改定が必要であることを訴えた。
 特に、新興感染症対応については、「有事に対応できるよう、普段の稼働率が6~7割でも十分運営できる余裕を持たせた病院の体制が必要。そういった意味では、医療そのものの『戦略』を国として見直してほしい」と提案した。入院時食事療養費については、病院給食が、全国レベルで公民問わず、大病院も中小病院も赤字であることを強調した。
 また、中医協で、軽症・中等症の高齢者救急の入院先として、急性期病棟から地域包括ケア病棟等への移行を促すことが議論されている。
 これを踏まえ、「高齢者救急の『入口』の問題が議論されているが、例えば、人が倒れた時点で、その人が重症であるか軽症であるかはわからない。(搬送先としての)『入口』よりも、(急性期病棟での退院・転院を早める)『出口』の議論がより重要だ。今回は、介護報酬、障害福祉報酬等サービスとの同時改定であり、まさに、介護の介入など急性期病棟入院後の対応について、全体のマネジメントを行うことを評価する視点が特に大事になってくる」と強調した。
 医療保険部会・医療部会では、医療関係団体の委員がそれぞれ発言し、猪口会長や神野副会長と同様に、物価高騰・賃金上昇への対応ができる改定とすることが強く求められた。
 その中で、日本病院会の泉並木副会長(会長代行)は、物価高騰・賃金上昇などへの対応は、入院基本料の引上げで行うべきであるとした。医師の働き方改革については、病院薬剤師を確保できる診療報酬上の対応を求めた。
 日本医師会の角田徹副会長は、すべての医療機関の経営を安定させることのできる改定が必要と強調。同会の釜萢敏常任理事は、医療機関が賃上げできないと、必要な人材が確保できなくなることへの懸念を示した。

 

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