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ホーム全日病ニュース(2023年)第1040回/2023年9月15日号2024年度改定の第1ラウンドの議論をまとめる

2024年度改定の第1ラウンドの議論をまとめる

2024年度改定の第1ラウンドの議論をまとめる

【中医協総会】医療DX、医療計画、働き方改革の推進、外来、入院、在宅、感染症などを整理

 厚生労働省は8月30日、2024年度診療報酬改定に向けた第1ラウンドの議論の概要を中医協総会(小塩隆士会長)に報告した。各議題について、厚労省が提示した課題と論点に対する委員の主な意見を紹介している。議論の概要を踏まえ、中医協は秋以降、2024年度改定の本格的な議論を始める。
 議題は、医療DX(その1)、医療計画、働き方改革の推進、外来(その1)、入院(その1)、在宅(その1)、歯科(その1)、感染症(その1)、調剤(その1)、個別事項(小児周産期)、医療DX(その2)となっている。
 医療DXだけ、(その2)まであるが、これは4月26日に(その1)の議論を行い、それを受け、8月2日の中医協総会の(その2)の議論で、「2024度診療報酬改定より施行時期を6月1日施行とする」、「薬価改定の施行に関しては例年通り4月1日に改定とする」ことを決定しているためだ。
 なお、(その1)の議論では、政府の医療DXの工程表にある「全国医療情報プラットフォーム」や診療報酬DXにおける共通算定モジュール導入による医療機関・ベンダの負担軽減の可能性、医療機関のサイバーセキュリティ対策、医療DXによる医療従事者の勤務環境改善策の議論も行っている。
 2024年度からの第8次医療計画については、新興感染症発生・まん延時における医療を除いた5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療)を対象にし、特に、救急医療に関する意見が委員から多く出た。
 具体的には、「本来、二次救急医療機関で対応すべき患者も第三次医療機関で対応されていることが問題」、「救急搬送における高齢患者について、誤嚥性肺炎や尿路感染症が迅速に治療され、結果的に早期に回復する場合でも、発症の段階では、重篤な疾患との判別が困難であり、不必要に救急搬送されている場合が多いわけではない」、「救急搬送で三次救急医療機関に搬送され、結果的に三次救急医療機関以外でも対応可能な病態の患者であった場合には、迅速に下り搬送を行うことが重要」などの意見があった。
 外来については、かかりつけ医機能と生活習慣病対策、オンライン診療が主な論点となった。支払側からは、かかりつけ医機能に関して、かかりつけ医機能の制度整備を法定化した医療法改正と整合する形の体系的な見直しを行うべきとの意見があった。診療側からは、現段階で体系的な見直しを行うことには慎重な対応を求める意見が出た。オンライン診療については、不適切なオンライン診療が一部で行われていることが、データから示唆され、オンライン診療の適切な実施に関する指針が遵守されているかを含めた評価のあり方の検討が必要との意見が出ている。
 入院については、急性期、回復期、慢性期にわたって幅広い課題と論点が示され、さまざまな意見が出ている。ただし、入院・外来医療等の調査・評価分科会でより詳しいデータや論点で議論がなされており、分科会からの報告を踏まえて、今後、具体的な論点に関する議論が行われることになる。
 その中で特に、高齢者救急をめぐる課題について、医療計画での議論と同様に、厚労省の論点に対し、診療側から慎重な検討を求める意見が相次いだ。具体的には、「誤嚥性肺炎や尿路感染症の入院医療について、対応可能な地域包括ケア病棟における一層の対応が必要ではないか。ただし、地域包括ケア病棟は、看護配置が13対1であることなどから、対応できる救急医療には限界があることを認識すべき」などの意見が出ている。
 在宅については、在宅医療の需要増大を踏まえ、地域で在宅医療を支える体制づくりに向けた課題が示されている。具体的な意見では、「在宅医療の24時間体制については、訪問診療と訪問看護をセットで考え、どのように維持するかを考える必要がある」、「在宅医療提供体制は医師が一人で24時間365日の対応をするのではなく、近隣の診療所や中小病院との連携の下に構築する必要があり、在宅療養移行加算のような連携の仕組みを普及していくのが喫緊の課題」などの意見が出されている。

宿日直と治療室のあり方を整理
 感染症については、特に、2022年度改定で再編された感染対策向上加算の施設基準に、新興感染症の発生時の対応が含まれており、新型コロナの感染拡大時には、新型コロナ対応の重点医療機関・協力医療機関などの枠組みと連動していることを踏まえ、今後の新興感染症に備えるための第8次医療計画における協定の枠組みとの整合性を図ることが課題となった。
 また、薬剤対策については、アクションプランにおける微生物の薬剤耐性率や抗菌薬使用量などの目標の達成に資する評価のあり方が課題とされた。
 個別事項の働き方改革の推進については、支払側が、地域医療体制確保加算を算定している医療機関で、時間外労働時間が長い医師の割合が高くなっていることを問題視し、効果のある医師の労働時間短縮の取組みが進む施設基準の設定を求めた。また、「宿日直許可を取得できないような医師にも宿日直が許可されるようなことが常態化してしまえば、医師の働き方改革に逆行する」との意見も出され、宿日直許可と治療室の医師の配置を整理する必要性が指摘されている。
 個別事項では、そのほか、小児・周産期医療が議題となっている。
 小児については、「小児病棟で、現状、看護補助者の配置に対する評価がなく、配置が進んでいない状況にある」ことから、看護補助者配置への評価が必要との意見が出た。周産期については、「2026年度改定で正常分娩の保険適用が論点となることが予想されるため、その全体像が明らかになった段階で、周産期医療全体の評価のあり方を検討すべきであり、2024年度改定では、周産期医療の評価について、慎重に判断するべき」との意見が出た。

 

全日病ニュース2023年9月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2023.8.15 No.1038

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2023/230815.pdf

    2023/08/15 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は7月26. 日、2024年度診療報酬改定に向け感染. 症をテーマに議論を行った。医療計画. に追加された新興感染症やそれ以外の.

  • [2] 中医協が改定時期含め医療DX の議論を開始|第1032回/2023年5月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20230515/news02.html

    2023/05/15 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は4月26日、2024年度診療報酬改定に向け、 ... 関係者が対応してきたことを踏まえ、医療機関やベンダの負担軽減の効果を ...

  • [3] 2023.2.1 No.1025

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2023/230201.pdf

    2023/02/01 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は1月18 ... 法人協会会長)、「有床診療所が『その ... (1)「2023年2月末までにベンダーと.

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