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ホーム全日病ニュース(2023年)第1044回/2023年11月15日号未来につなげる事業承継と地域活性化

未来につなげる事業承継と地域活性化

続報・全日本病院学会 in 広島
未来につなげる事業承継と地域活性化

【学会企画3】オタフクソース、総合デベロッパー、寺院の社会貢献


佐々木氏 深川氏 吉田氏

 学会企画3の「未来につなげる事業承継と地域活性化」では、異なる業種で、先代からの事業を引き継ぎ、事業を発展させ、地域活性化にも貢献している3人の演者からの講演があった。

家族憲章を制定しガバナンス確保
 オタフクホールディングス株式会社は、広島県民で知らない人はほぼいないお好み焼きのオタフクソースなどを製造販売する会社を含む法人である。代表取締役の佐々木茂喜社長は3代目。「創業者の孫が社長を務める典型的な同族企業」だが、「4代目、5代目となると、親戚・縁者が増え、血も縁も薄まる。それゆえ、3代目は、短期的な相続対策ではなく、長期的な『事業承継』のための『仕組みと決まり』を確立せねばと考えた」と強調した。
 日本企業に長寿企業は多く、100年、200年以上の企業数と比率は世界一。そして、その98%が同族企業である。長寿企業の特徴として、佐々木社長は、①文化・価値観を強く持つ②長期的なアプローチで意思決定を行う③代々蓄積したノウハウや人脈を有する④非財務的業績を重視する─をあげた。その上で、これらは「無形資産」であるため、継承が困難と述べた。
 困難を乗り越えるため、佐々木家では家族憲章を制定した。理念・価値観を明文化し、行動規範や懲罰規定、脱会規定、退職規定などを整えるなど、ガバナンスが働く会社を目指した。佐々木社長は、「成果と効率」を追求するビジネスと、「感情と愛情」が支配する家族という、相容れない価値観や欲求をコントロールするための勘所も整理。「挨拶が一番大事。また、成果を誇らず、少し負け越して後継者に託す『7勝8敗論』なども重要」と強調した。

各事業の社会貢献を指標化
 不動産事業を主に展開する株式会社マリモホールディングスの深川真・代表取締役社長は2代目の後継者で、不動産事業の海外展開や非不動産事業を始めた。非不動産事業には、ウェルネス事業や地方創生事業、環境衛生事業などがあり、社会課題の解決と地域活性化を会社の理念に包含するソーシャルビジネスを推進している。
 マリモホールディングスは、ソーシャルビジネスカンパニーであることをビジョンとし、「ヒューマニティとビジネスの力で社会の課題を解決し、人々の豊かな暮らしを創造し続けること」をパーパスとする。各事業の社会貢献の程度を測定する独自の指標を開発し、それを高める目標を設定した。
 3代目への事業承継に向け、深川社長は、大きく2つのことを準備している。3人の子どもがいるが、会社を継ぐことは強制していない。その代わり、海外への選択肢を示し、早い時期から会社のイベント的な経営方針発表会に参加させ、社長と社員が生き生きと働いている姿を見せ、自分の進路を選択させている。準備とは、事業を多角化し子会社を増やし、自分以外の社員に任せ成長させること、株式の上場を目指すことである。上場は、子どもが会社を承継するしないにかかわらず、会社のガバナンスを高めると考えている。
 また、会社をサスティナブルにするため、同族企業であっても、事業のために株式譲渡し、他会社と資本提携することも始めた。マリモホールディングスは常に長期的視点に立って、社会の中に存在する会社を考えている。

信仰・観光・健康で寺院を活性化
 宮島弥山・大本山大聖院の吉田正裕第77世座主は、座長の野村陽平・廿日市野村病院理事長から、「僧侶に似合わないビジネスセンスと地域活性化の行動力を持つ」と紹介され、登壇した。
 大聖院は広島県廿日市市宮島町にある。真言宗御室派の大本山の寺院で、厳島神社の別当寺として祭祀を司る。明治の廃仏毀釈で保護がなくなり、寺院は危機に陥った。戦後は復興の道をたどったが、「お寺離れ」も進み、高齢化などが、事業承継を含め寺院の存続に深刻な影響を与えている。
 そのような状況で、吉田座主は、第76世の父が掲げた「信仰・観光・健康」の「3こう」を実践している。父の代ではまだ信仰面が圧倒的に強かったが、吉田座主は、「まずはお寺に来てくれること」を目指し、様々な試みを行った。寺院には、信仰の体験を与える対象物がいくつもある。人々の感じ方も違う。吉田座主は人々の信仰体験につながる寺院のあり方を幅広く考えた。
 また、直接的には信仰と関係ないテーマの展覧会やコンサートを開催した。次世代につなげるため、子どもたちが寺院に来てくれるイベントも行った。
 健康面では、大聖院の背後にある弥山に正装で登山するツアーを組んだ。弥山の山頂には御山神社、山麓にかけては大聖院の堂宇が点在し、登山者の数は戻りつつあるという。
 地域活性化については、「お寺は地域の文化・祭りを継承している」と述べ、寺院が地域の暮らしに根差していることを強調。その継承には、大本山の総代、檀家、信仰者の協力が必要不可欠であるとした。

 

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