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ホーム全日病ニュース(2023年)第1046回/2023年12月15日号中医協の診療側委員が医療機関経営の厳しさ訴える

中医協の診療側委員が医療機関経営の厳しさ訴える

中医協の診療側委員が医療機関経営の厳しさ訴える

【医療経済実態調査】2022年度の医療法人病院の損益率は1.3%の赤字

 2024年度診療報酬改定に向けた議論を行っている中央社会保険医療協議会の診療側委員は12月1日、厚生労働省が11月24日に報告した医療経済実態調査の結果に対する見解を表明した。「病院・診療所とも、コロナ後の経営状況は非常に厳しい状況にあると言え、さらに、物価高騰・賃金上昇を支える対応が必要な状況」であることを訴えた。一般病院全体の損益率は、コロナ補助金を含めないと▲6.7%の赤字。足元の状況はさらに悪化しており、2023年度は▲10.2%にまで落ち込むと予測されている。2022年度の医療法人病院の損益率は▲1.3%となっている。
 診療側は、「2021年度、2022年度の損益率は、一般病院はそれぞれ▲5.6%、▲6.8%、一般診療所はそれぞれ6.0%、6.9%」と説明している。これは医療経済実態調査の総損益率から、コロナに関する診療報酬特例や補助金、かかりまし費用などの影響を除外した数字である。
 医療経済実態調査での一般病院全体の損益率は2021年度が▲5.5%、2022年度が▲6.7%、コロナ補助金を含めると2021年度が3.7%、2022年度が1.4%。一般診療所(医療法人)の損益率は2021年度が7.1%、2022年度が8.3%、コロナ補助金を含めると2021年度が8.7%、2022年度が9.7%となっている。
 コロナ補助金を含めない損益率にも、収入としての診療報酬特例や費用としてのかかりまし経費が入っているので、コロナの影響を取り除くため、両者も除外し厚労省が推計したものが、診療側が示した数字ということになる。コロナ補助金や診療報酬特例は一過性の収益であり、すべての医療機関が対象ではないため、診療側はこれらを除外した数字をみるのが妥当とした。
 また、一般病院全体には、常に赤字基調の公立病院などが入っている。医療法人病院だけの損益率をみると、2022年度は、コロナ補助金を含めなければ赤字(▲1.3%)、コロナ補助金を含めると黒字(3.3%)になる。損益率は2021年度(▲0.2%)から2022年度(▲1.3%)にかけて悪化している。コロナ補助金がなければ、医療法人であっても赤字に陥ってしまう。その中でコロナ補助金はポストコロナに向け、解消される方向にある。
 経営悪化に拍車をかけているのが、費用の増加だ。一般病院全体の医業収益は、2021年度から2022年度にかけて2.1%(入院診療収益が2.2%、外来診療収益が2.8%)上昇した。これに対し、医業・介護費用は3.2%の上昇で、収益の増加より費用の増加が大きい。医業・介護費用のうち、上昇が大きい費用項目をみると、最も割合が高いのは水道光熱費の32.2%、次いで紹介手数料20.1%、人材委託費6.4%、医薬品費の5.6%となっている。給与費は1.9%の伸びにとどまっている。

一般診療所は7.1%から8.3%に改善
 一般診療所(医療法人)の損益率をみると、コロナ補助金を含めないと、2021年度の7.1%から2022年度の8.3%に改善している。コロナ補助金を含めると、2021年度の8.7%から2022年度の9.7%に改善している。コロナ補助金に加えて、診療報酬特例やかかりまし費用などの影響を除外すると、それぞれ6.0%、6.9%となる。
 財務省などは病院と比べ、診療所の損益率が高く、コロナ禍を経て改善しており、「極めて良好な直近の経営状況にある」と指摘している。診療側の見解では、これに反論した。
 2024年度の損益率(コロナ補助金を除く)の分布をみると、一般診療所の約3割が赤字。「物価高騰、賃金上昇が続く中、現状、コロナ特例は大幅に縮小されてきている。今後特例が廃止となり、さらに収益が下がれば、赤字施設の割合がさらに増え、地域の医療提供体制が維持できなくなる。そもそも経営基盤が脆弱な診療所では、倒産が相次ぐ恐れがある」と主張した。

2期連続赤字病院が4割超える
 全日病、日本病院会、日本医療法人協会は11月28日、2023年度病院経営定期調査の結果を発表した。
 2021年度と2022年度の比較では、概ね医療経済実態調査と同様の傾向だが、一般病院全体の2022年度の損益率は、コロナ補助金を含めないと▲7.6%、コロナ補助金を含めると0.1%であり、医療経済実態調査よりも低い損益率を示した。2021年度と2022年度を比較すると、経常利益が赤字病院の割合は、コロナ補助金を含めないと51.4%から60.1%に拡大、コロナ補助金を含めると18.1%から23.3%に拡大している。
 病院経営定期調査では、2022年6月と2023年6月を比較した定点調査の結果も示している。それによると、経常利益が赤字病院の割合は、コロナ補助金を含めないと57.5%から65.7%に拡大、コロナ補助金を含めると55.5%から64.4%に拡大している。また2期続けて赤字となった病院は4割を大きく超えていた。
 これらの結果について、病院経営定期調査では、「(2021年度と2022年度の比較において)医業費用では経費の上昇が際立ち、特に水道光熱費は約40%の伸びを示し、材料費、給与費等の増加も大きく、2022年、2023年6月期の前年同月比をみても、医療利益および経常利益における赤字病院割合の増加、赤字額の拡大がみられ、病院経営が逼迫する状況が厳しさを増している」と解説している。

 

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