全日病ニュース

続報・全日本病院学会 in 広島
「かかりつけ医機能支援病院」として、気概をもって地域を支える

【プライマリ・ケア検討委員会企画】

　本年５月、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ改正医療法などが可決、成立した。2025年４月に施行となるこの改正法では、かかりつけ医機能を「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置、その他の医療の提供を行う機能」と明記し、かかりつけ医機能を持つ医療機関は時間外診療の可否などを都道府県に報告することとなる。
　冒頭、座長を務めた牧角寛郎委員長（社会医療法人聖医会　サザン・リージョン病院　理事長）から、全日病が2022年12月に発出した「かかりつけ医機能に関する全日本病院協会の考え方」の紹介があった。この中で「（地域に密着し）地域医療を担う病院＝かかりつけ医機能支援病院」という考え方とともに会員病院への支援方針が提示されており、その支援の一環として、大都市、地方都市、離島という異なる３地域における事例を共有する場として、本企画の趣旨を説明した。
　柳川達生講師（公益財団法人東京都医療保健協会　練馬総合病院　理事長）からは、東京都の急性期病院の視点から取組みをご紹介いただいた。病院のある練馬区は現在も人口が増加しており、病床不足地域で、救急医療の60％は区外に搬送されている。地域の二次救急病院としての役割を果たしながら、在宅医療・在宅療養の支援機能を発揮し、行政とも足並みを揃えながら「かかりつけ医機能支援病院」の役回りを担うことが地域における存在感を高めることになるとの見解を示した。
　横倉義典講師（社会医療法人弘恵会　ヨコクラ病院　病院長）は、二次救急や災害拠点病院、COVID-19対応など地域のニーズに応える医療を提供してきた一方で、自院のある福岡県みやま市が高齢化率約40％の人口減少地域であることを紹介。働き方改革の推進とマンパワーの不足の中でニーズに応える医療を維持するためにも、かかりつけ医機能が重要であるとの見解を示した。また、「かかりつけ医」について医療側と患者側の認識の齟齬から着想した「かかりつけ患者登録制度」の取組みを紹介。救急、入院のみならず在宅療養支援病院として、さらにかかりつけ医機能を果たしながら、かかりつけ医をサポートする地域密着型の病院として、自院の役割を位置付けた。
　橋本孝来講師（医療法人上善会　かりゆし病院　理事長）はまず自院の成立ちを紹介。石垣島に位置し、八重山地域唯一の慢性期病院として始まり、現在はケアミックス型の医療を提供している。八重山地域では過去の反省から、中核病院の過剰負荷を避けるため多くの医療機関がかかりつけ医の機能を担っており、離島という立地から、行政や地域の海運会社等との密接な連携が築かれている。また、全職員が心肺蘇生術の講習を受講しており、自院でインストラクターも育成。地域の期待に応える中で、「かかりつけ医機能」を担う病院としての意識が醸成されている。
　総合討論では、座長の小川聡子副委員長（医療法人東山会　調布東山病院）から地域の救急医療体制に関する政策等への見解について投げかけがあり、柳川講師、横倉講師からは今後増加が見込まれる高齢者救急対応への懸念が示された。また特に在宅医療における連携について、確立したノウハウを持つ生活に根差した医療者との協力が必要との意見が挙がった。
　フロアからはかかりつけ医機能を地域で担う上での留意点について質問があり、橋本講師は、様々な相談に応じるというかかりつけ医特有の負担感を緩和していくことが肝要との見解を示した。
　最後に学会のテーマでもある「未来の子どもたちへ」に向けて、地域の医療を如何に構築するかの検討があり、地域医療構想調整会議等の話し合いの場を地域にとって「役に立つ」ものとし、地域の医療を支える気概のもと、将来的な展望を持った取組みを継続していくことが求められるのではないかとの見解で、本企画の締めくくりとした。