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ホーム全日病ニュース(2023年)第1046回/2023年12月15日号医療事故調査制度への医療機関の対応と課題

医療事故調査制度への医療機関の対応と課題

続報・全日本病院学会 in 広島
医療事故調査制度への医療機関の対応と課題

【医療安全・医療事故調査等支援担当委員会企画】適切に院内調査できる体制の構築

 学会2日目に医療安全・医療事故調査等支援担当委員会の企画セミナーが開催された。本セミナーでは医療事故調査に対して多くの会員病院の認識を深めることを目的としている。
 初めに当委員会の細川吉博副委員長から、事故調査が余計な訴訟を防ぎ、職員、ひいては病院を守ることになるとの開催挨拶を行った。
 次に飯田修平委員から、事故調査の関心が薄いのは、法令解釈の違いと院長としての管理者の認識不足との指摘がなされた。事故調査、原因究明(再発防止)と責任追及が混同されていると述べた。
 続いて飯田委員の座長により進行され、永井庸次特別委員からは本調査の対象は「医療に起因する、予期しない医療事故」であり、予期しないとは説明を個別に行ってそれがしっかりとカルテ上に記録されているものを示すとのこと。また医療法第25条第1項では院長の研修会への参加と事故調査の指示の必要性について指摘された。院長としての管理者研修と合わせて院内での職員研修の必要性を述べられた。事故報告書については事実に基づき時系列に示し、再発防止策が必要であって過失の有無の検証にはしないこととの指摘があった。
 長谷川友紀特別委員からは、事故調査委員会での外部委員の立場からのご講演を頂いた。この制度の目的はあくまで医療安全の確保であり、個人の責任追及ではないとのことをまず前提に、外部委員はしっかりとした助言や事態の気付きを通じて委員会が適切に機能していることを示し、病院が開かれた健全な組織である事をアピールしていくことにも繋がると述べられた。
 弁護士の立場から宮澤潤特別委員は、事故調査に迷った時は調査した方がいいと断言された。医療事故を広く捉えて解釈して調査することで原因究明を目指さなければ、遺族にとって行動を起こすとしたら刑事、民事訴訟しかなく、不用意な訴訟の可能性があるとの事だった。その上で管理者への報告では再発防止策を追求すると同時に個人の責任追及の可能性も皆無ではないと言及された。遺族への報告では全面的開示が信頼感を生み、疑念を発生させず結果自らを守ることになると指摘された。医療事故調査センターへの報告では、病院からの申し立てで調査が始まるのに平均2年4ヶ月の時間を要しているため、その間に裁判に持ち込まれる例もあるとのことだった。
 病院における医療安全管理者の立場からとして練馬総合病院看護師長でもある安藤敦子氏からご発言をいただいた。報告する体制の大切さは院内教育の充実必要とのこと。そして当該職員の特にメンタルでの支援の必要性、遺族への真摯な対応が不可欠と話された。
 最後に演者が壇上に揃って総合討議が行われた。特に職員にとって万が一責任追及となっても民事訴訟については病院が補償するが、刑事訴訟法は個人に対して訴追されるとの指摘に対しても、宮澤特別委員から報告書で報告される例はおおよそ示談が完結しており、不起訴の可能性が大きいと指摘された。安藤様からは、遺族対応で職員の立ち振る舞いが遺族に見られているからこそ、事例の共有が大切との発言があった。
 永井特別委員は再発防止策を作成して必ず実行することの大切さ、長谷川特別委員から事故調査制度を活用してオープンな病院にしていくことの大切さ、宮澤特別委員からは何よりも訴訟を防ぐという対応の大切さ、安藤様からはこの制度が職員の自己研鑽の場にもなっているとの発言があった。
 限られた時間のセミナーではあったが非常に内容が豊富で、参加された方におかれてはきっと自院に戻りすぐに実行していける内容にまとまっていたと感じた。実際に支援を相談される医療機関は決して多くはないが、今後の当委員会の活用をお願いし、報告とする。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2018.11.15 No.929

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/181115.pdf

    2018/11/15 ... 厚生労働省の地域医療構想に関する. ワーキンググループ(尾形裕也座長). は10月26日、厚労省から地域医療構想. 調整会議の進捗状況について報告を受.

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