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ホーム全日病ニュース(2023年)第1046回/2023年12月15日号SDGsを通じ課題を「自分事」とした活動の実践を

SDGsを通じ課題を「自分事」とした活動の実践を

続報・全日本病院学会 in 広島
SDGsを通じ課題を「自分事」とした活動の実践を

【病院のあり方委員会企画】

 SDGs(持続可能な開発目標)は、2001年に採択されたミレニアム開発目標の後継として、2015年の国連サミットにて経済・社会・環境の3要素を統合して設定されたものであり、現在、2030年に向け17の目標と169のターゲットが示されている。
 2022年度の病院のあり方委員会では「SDGsに全日病はどう対応すべきか」の検討を行ってきた。委員会で専門家から意見を伺う中で、肯定的な見地からは「17の目標は一体で不可分」「全国連加盟国が合意」「目標への取組み方は各国の自由」という特徴が示されたうえで、2030年に向けた折り返しを過ぎた現在も問題が山積状態にあり、目標への取組みに関する日本の国際的評価の低下や、SDGsの国際的な推進の中で、取組みを進めないと国際社会から乗り遅れる状況にあること等が指摘された。一方で懐疑的な視点として「17項目の目標がいずれもトレードオフの関係にあること」への注意が示された。特に17項目全てに関わる気候変動とエネルギー問題を中心に「脱炭素」が政治化され、利権化されている現状が示され、SDGsの各項目に対応することには異論のない一方、組織としての社会への貢献は、医療も含め各事業体が本業をまず優先すべきとの指摘があった。
 2023年1月に当協会会員に向けて実施したアンケート調査では、SDGsの「内容を含めてよく知っている」と回答したのは約半数であったが、73%が17目標は内外に実現を約束するコミットメントと捉えており、実際に取り組みを行っている施設が38%、取組みを計画している施設が38%あった。
 徳田禎久座長(社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院 理事長)は基調講演で上記の経緯を説明し、SDGsの内容を理解した上で17目標に関連する前向きな取組みに期待する一方、懐疑的な指摘もあり、協会が推進役となるべきかどうかは、各病院が取組む中で改めて検討が必要である、という現段階での見解を示した。一方で、SDGsが社会に定着しつつある中で各医療機関における目標達成に向けた取組みは重要であり、指定演題として取り上げた2つの事例を参考として示す。
 諸井尚徳講師(医療法人東山会 調布東山病院)からは電気使用量削減の取組みの紹介があった。使用量削減の取組みを掲げた初年度は声掛けのみにとどまるも、2022年度は経営方針に「電気使用量5%削減」を掲げ、結果として9%の削減に成功。経営方針に掲げたことに伴い、部署別にデータを示したうえで具体的な削減に向けた「施策表」の提出を求め、施策を「YWT(Y=やってみたこと、W=わかったこと、T =次にやること)」に分けて発表する等の取組みを推進。SDGsへの対応を職員が自分事として取組む風土の醸成が結果につながったとした。
 中村俊太郎講師(公益財団法人脳血管研究所 美原記念病院)からは「Wエコプロジェクト」の実践について紹介があった。Economy(経済)とEcology(自然環境)を掛け合わせたこの取組みは、院内から生じるゴミの削減と省エネルギー化を主とし、活動開始から13年でゴミ廃棄量18%、電気使用量8.5%、CO2排出量40%の削減に成功。削減できた費用は設備投資費等と概ね相殺されるとしながら、継続してSDGs等に向けた活動に取り組んでいることが、病院へのポジティブなイメージとして経済面以上の効果を生んでいるとしている。
 発表後、それぞれの施設でSDGsという目標を通じ、職員一人一人が課題を「自分事」と捉えて活動していることが評価された。また取組みの入口としてデータ化の推進や「YWT」のように、繰り返し行い、検証していく仕組みが重要との声が上がった。徳田座長はこうした意識改革を経た波及効果として新たな取組みが生まれていくことへの期待と、その取組みを会員に共有していくことを協会の役割として示した。

 

全日病ニュース2023年12月15日号 HTML版

 

 

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