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ホーム全日病ニュース(2023年)第1046回/2023年12月15日号AIやChatGPTが切り開く医療DXの未来を講義

AIやChatGPTが切り開く医療DXの未来を講義

AIやChatGPTが切り開く医療DXの未来を講義

【医療DX人材育成プログラム⑦】
病院でのオンライン診療の取組みも報告
高橋泰 国際医療福祉大学教授、全日病広報委員会特別委員

 院内のDX化が適切に推進できる院内人材を養成する目的で、全日本病院協会は、広報委員会を担当委員会とし、日本医療教育財団、介護・医療見える化・効率化協会と共同共催で、「2023年度医療DX人材育成プログラム(全10回)」を開講した。今回は、第7回目の講習会の内容を紹介する。第7回講習会は、10月5日(木)13時〜16時にZoomで開催され、136病院、312人が参加した。
 日頃使用しているスマホやタブレットの種々のアプリ、キャッシュレス決済、ネットバンキングや飛行機の予約システムに使用されているアプリは、全てクラウド・ネイティブな環境下でWEBという技術を中心に開発されている。本講習会の主要な目的は、「世界のDXを牽引しているWEBという手法を用いて開発された“安価”、“高機能”、“高セキュリティー”の情報機器を、日本の病院に取り入れるために必要な知識を提供すること」である。本講習会の第5回目においては、日本で最初にクラウド・ネイティブWEBカルテを用いて病院システムを構築した医療法人正幸会病院のこれまでの取り組みを、ケーススタディーの手法を用いて紹介した。
 今回(第7回)の講習会の前半は、第5回にケーススタディーで紹介した正幸会病院の東大里院長を招き、「医療DXに取り組んでみた」というタイトルの講演が行われた。東先生は講演の冒頭、「予約は電話のみ、決済は現金のみ、長い待ち時間で対面診療、電子カルテの普及は41%であり、日本の病院は、デジタル&クラウドを活用できていない」と指摘した。次に、AI(人工知能)やChatGPTが切り開く未来について語り、AI を適切に使わないことによって生じる不利益やリスクを説明した。その中で、ChatGPTを含めたクラウドサービスは、無尽蔵のIT 資源の中から必要なときに必要な分だけ利用するサービスであり、導入のハードルが低く(初期費用が安い、スペース不要)、どこからでもアクセス可能であり、バックアップの必要なし(災害時のリスクが少ない)、システム更新作業が不要な技術であることを強調した。
 続いて、スマホ、パソコンを使ってのオンライン診療の話が始まった。オンライン診療を取り入れたきっかけは2018年3月診療報酬改定でオンライン診療料、オンライン医学管理料が新設されたことであり、「大阪初のオンライン診療の病院になろう」という思いがきっかけであった。開始早々コロナが始まり、オンライン診療の件数が急増、withコロナ、Afterコロナの時代になっても件数が維持されている。そこから得た結論は、オンライン診療を希望する人は固定されるということであり、スマホを使いこなすITリテラシーの高い人は可能な限りオンライン診療を利用し脱落しにくいということである。
 図に現在、正幸会病院が使用しているクラウドアプリを示す。既存のビジネスで世界中で使用されている高機能で、医療に特化して開発されたアプリと比べ格段に安いアプリをAPIで接続し、病院システムを構成している。日本初のクラウド・ネイティブの電子カルテであるヘンリーの電子カルテも、図に示す情報管理のアプリと並ぶ、病院情報システムの一構成要素である。
 後半の小林土巳宏氏(株式会社MEMORI)による「システム開発」についての講義が行われた。
 最初の講義項目である「①開発環境」とは、プログラミングにおいて、システムやアプリケーション等のプログラムを開発するためのソフトウェア等の組み合わせを意味し、システム開発に必要なプログラムの概要(役割分担)と、システム開発の概要(全体像)が説明された。
 次の「②開発標準化の流れ」の講義では、2020年のデータヘルス改革に関する閣議検定の抜粋などを用いて、「技術は10年単位で推移、統一された電子カルテ、画一化された製品は現実的ではなく、クラウドベースで効率的で安全なシステムとなる可能性も追求する必要もある」、「HL7 FHIRなどの標準フォーマットで出力するAPIの実装」などの国の目指している方向を説明した。
 「③医療システムの課題」では、多方面からの課題の俯瞰を行った。
 「④要件定義」では、システム導入の業務委託において、発注側の医療機関が、発注先(受注)企業に対して提示する自院の要件や要望を示した書類「要件定義書」(Request For Proposalの略)がシステム導入の要であることが説明され、どのようなプロセスを経て、どのような内容が決められているかの説明が行われた。
 最後の講義である「⑤プロジェクトマネジメント」とは、プロジェクトの体制や運用方法を管理することであり、どのようなツールを使い管理するかの説明が行われた。
 最後にオンラインを通して講義内容の振り返りテストを行い、第7回の講習会が終了した。

 

全日病ニュース2023年12月15日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2017/170403_3.pdf

    2017/03/31 ... ... 多職種によるチームによる支援体制を作ること. 全日本病院協会 医療行政情報 http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/. Page 64. 61. ・ 医療機関(救急 ...

  • [2] はじめに

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2007_arikata.pdf

    医療は、患者(国民)と医療人が協力して構築すべき公共財で. あり、国民の健康・生活に直接関係する点で極めて重要である。従. って、医療に関する諸議論は、広く ...

  • [3] NEWS 6/15

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