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ホーム全日病ニュース(2022年)第1016回/2022年9月1日号次期医師確保計画に向けて「地元出身者枠」の活用など議論

次期医師確保計画に向けて「地元出身者枠」の活用など議論

次期医師確保計画に向けて「地元出身者枠」の活用など議論

【厚労省・地域医療構想・医師確保WG】医学部恒久定員内に設定し地元定着に期待

 厚生労働省の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)は8月10日、2024年度からの第2期医師確保計画に向けて、医学部定員における地域枠や地元枠の設定、周産期の医師確保などを議論した。医師不足の都道府県に定着する医師を増やすため、医学部恒久定員内に「地元出身者枠」を設定することも検討していく方向だ。
 同WGは、2024年度からの第8次医療計画に盛り込む医師確保計画を各都道府県が策定する際に参照する「医師確保計画策定ガイドライン」の見直しに取り組んでいる。
 8月10日の会合では、医学部の恒久定員内への地域枠や地元枠の設置を促進するための取組みを議論した。現在、恒久定員内に地域枠を設置しているのは21道府県にとどまっている。地域枠は別枠方式で選抜を行うもので、地域枠の卒業生には当該都道府県内で一定期間、医師として従事する要件を課す。
 一方、「地元出身者枠」とは、地元出身者のみが出願できる枠で、必ずしも別枠で選抜を行うものではなく、従事要件を設けなければいけないわけではない。従事要件を課さない地元出身者枠を恒久定員内に設置しているのは、現在は3道県のみである。
 厚労省は、医師不足の都道府県に定着する医師を増やす観点から、恒久定員内に「地域枠と比較して都道府県が柔軟に運用できる地元出身者枠も活用することが考えられる」と提案した。
 また、大学に地域枠や地元出身者枠を設置して医師確保を行う際には、医師養成や配置について大学と都道府県が連携して検討していくことが重要との方向を示した。
 委員からは、「地元出身の出願要件を設けた地域枠と、地元出身者枠の設定は医師確保に有効」「今後、臨時定員が減少していけば恒久定員内に地元出身者枠を設定しなければいけない」などの意見が出された。

周産期の医師養成を進める方針
 WGでは、産科・小児科の医師確保についても議論した。周産期医療に携わる医師は長時間の時間外労働となる割合が高いことから、厚労省は、医師の派遣調整や勤務環境の改善(タスクシェアやタスクシフト)、地域枠等によって小児科や産科・産婦人科の医師養成を進めていくことを提案した。この提案に異論はなかった。
 全日病副会長の織田正道委員は、「一般病院では産科・産婦人科医療を非常勤医師でカバーしている面がある。分娩件数から産科医師の必要数を推計したら、都道府県がそれを目指してどのように医師数を増やすかを具体的に示してもらいたい。好事例を示すだけではなく、ある程度の形を示すべき」と提案した。
 また、次期医師確保計画では、産科医師偏在指標を精緻化する方向で一致した。分娩を取り扱う医師数を、2018年の指標算出時には把握することができなかったが、現在は三師統計により把握できるようになったため、精緻化が可能になる。

計画の効果を把握する手法を議論
 医師確保計画策定ガイドラインでは、医師確保計画の効果を測るため、医師確保計画の見直し時において、最新データに基づく医師偏在指標と、目標を達成した場合の医師偏在指標を比較することを求めている。
 2024年から2026年の第8次前期医療計画には、2020年から2023年の第7次医師確保計画の評価結果を記載することになる。医師偏在指標の算出には、詳細なデータである三師統計を用いるのが望ましいが、その時点で得られる最新の三師統計は2020年12月末時点のデータとなり、2023年までの第7次医師確保計画の施策の効果を反映したものとならない。
 そこで厚労省は代替のデータとして、毎年度の医師数の把握が可能な病床機能報告のデータを活用することを提案した。今後、各都道府県における医師確保計画の効果の測定・評価方法の好事例を横展開する考えも示した。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「ICTを駆使して、最新のデータをもっと早く得られるようにしてもらいたい」と要望した。また、病床機能報告では無床診療所の医師数が把握できないことにも懸念を示した。厚労省は、「さまざまな統計があるので、活用できるデータが他にないか、検討していきたい」と述べた。
 同WGは、8月10日の会合までで、次期医師確保計画策定ガイドラインに向けた論点を一通り議論したことになる。9月からは、各論点について、より具体的な方向を固める第2ラウンドの検討に着手する見通し。

 

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