主張・要望・調査報告
「病院のあり方に関する報告書」
はじめに
医療は、患者(国民)と医療人が協力して構築すべき公共財であり、国民の健康・生活に直接関係する点で極めて重要である。従って、医療に関する諸議論は、広く国民、関係諸団体、医療人が参加し、議論の過程についても透明性が確保された上で、かつ長期的な視野に立って行われる必要がある。
公益社団法人全日本病院協会(以下:全日病)は、医療を提供する約2,450 の会員病院を有する団体として、客観的な現状分析を行い、医療・病院・全日病のあり方、医療提供体制等の今後進むべき方向について議論を重ね、できるだけ具体的に内外に示すことが、その責務であると考える。
「病院のあり方に関する報告書」は、1998 年以来ほぼ隔年で発刊され、本報告書が7度目の報告である。本報告書作成にあたり、「高齢社会がピークに達する2025 年の医療・介護提供体制のあり方の検討と提言」を病院のあり方委員会に委嘱した。予測される超少子高齢社会における医療・介護提供体制は既存体系の延長では不可能であり、喫緊な検討課題である。また、世界でも類を見ない速度で高齢化が進む日本においてどのような議論がなされたかを内外に示すことは、今後高齢化を迎えるであろう諸外国に対して日本が果たすべき責務でもある。
全日病は、「関係者との信頼関係に基づいて、病院経営の質の向上に努め、良質、効率的かつ組織的な医療の提供を通して、社会の健康および福祉の増進を図ることを使命とする」という理念を達成するため活動を重ねてきた。本報告書は、これまでと同様、全日病の具体的な活動の基本と位置づけられ、各種委員会を中心に種々の取り組みがなされる予定である。
本報告書では、「病院の基本的あり方」に関する質・安全・情報などの重要性に加え、「理想的な医療提供体制のあり方」を国民、会員、医療関係者に示し、報告書の理解とそれに基づいた実践を強く求めるものである。また、医療の環境整備と充実に向けて今後も全日病が自立・自律した組織として主体的に関わるという意思表明である。
公益社団法人全日本病院協会
会長 西澤 寬俊