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報告案を提示。特定機能病院に「専門特化」の類型

報告案を提示。特定機能病院に「専門特化」の類型

【特定機能病院・地域医療支援病院のあり方に関する検討会】
とりまとめに西澤会長等が異議。なお議論続行で合意

 6月28日の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局総務課)は両病院類型の新たな要件をまとめた報告案を示した。
 新たな要件は、一部がより厳しい方向で手直しされているものの、基本的には、前回(5月30日)提示した考え方を踏襲。「特定領域の特定機能病院」の具体的要件を示したほか、新たな要件を2014年4月に施行する方針を明記した。
 事務局は早期のとりまとめを求めたが、西澤構成員(全日病会長)は「報告案には十分議論が尽くされていない事項が盛り込まれている」としてさらなる議論の必要を提起、他の構成員からも疑義が示されるなどしたため、とりまとめは次回以降にもちこされた。

 

 報告案によると、特定機能病院は現行タイプ(総合型)とがん・脳卒中・心臓病等に専門特化したタイプ(特定領域型)の2類型に分けた上で、「総合型」には、(1)別定16診療科の標榜、(2)医師配置基準の半数以上が専門医、(3)紹介率50%以上・逆紹介率40%以上などの要件が、「特定領域型」には、(1)16診療科のうちの10以上の標榜、(2)紹介率80%以上・逆紹介率60%以上、(3)先駆的な診療の実施、専門的人材(他医療機関)の育成、主導的臨床研究・医師主導治験の実施と、総じて「総合型」よりも厳しい要件が、それぞれ課せられる。
 地域医療支援病院の新たな要件は、(1)紹介率・逆紹介率は現行どおり(ただし紹介率から救急搬送患者数を除く)、(2)共同利用も現行どおり、(3)救急搬送患者受け入れを独立要件とし、①2次医療圏(または救急医療圏)の救急搬送の5%以上、②救急医療圏の人口が一定以上の地域は上記に加えて年間1,000件以上の受け入れを要件とする(ただし、救急搬送受入数と基準値の乖離がやむを得ない範囲にあると認めたときは承認を行なうことができる=特例規定)、(4)地域の医療従事者に対する研修は、院内職員向け研修を除いて年12回以上主催する、というもの。
 地域医療支援病院には、努力目標ながら、「退院調整部門の設置」「地域連携パスの策定」「その役割の地域への情報発信」という要件が新たに設けられる。
 今回の報告案は前回の内容を踏まえたものだが、「特定領域の特定機能病院」紹介率の具体的設定や、地域医療支援病院の救急受入要件に盛り込まれた特例規定や努力目標など、前回までの議論にはなかった事項が少なくない。
 この日は、特定機能病院を区分する際に用いられた「総合型」という呼称に「総合病院とまぎらわしい」との異論が唱えられ、事務局は再検討する意向を示した。
 上記以外には報告案に対する大きな異論は出なかったため、一見とりまとめは可能と思われた中、複数の委員が議論の進め方に異議を唱えた。
 1人は島崎委員(政策研究大学院大学教授)で、特定機能病院に新たな類型を加えるとした点に、「これは医療法によらずに改正するという今回議論の枠を超えるものだ」と疑義を示した。
 もう1人は西澤委員(全日病会長)で、「我々は機能強化の視点から要件の見直しに賛成した。しかし、十分に議論されることなく、特定機能病院を2類型としたり、地域医療支援病院の救急要件に実績が足りなくても承認できるという特例を設けるなどには疑問が残る。このままでは医療部会で色々な批判を招く可能性がある。もっとしっかりと議論してはどうか」と批判した。
 地域医療支援病院の救急受入要件に書き込まれた特例規定(前出)については、堺委員(日病会長)も「これによって救急受入要件がなし崩されることはないか」と懸念を示すなど、細部に関して議論が尽くされたとはいえないというのが検討会の状況だ。
 検討会は次回も議論することで合意、とりまとめは次回以降に持ち越された。