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高額薬剤への対応 包括点数を入院期間Ⅰで償還する方式の拡大で合意


高額薬剤への対応
包括点数を入院期間Ⅰで償還する方式の拡大で合意

【DPC評価分科会】
厚労省 14年改定後の課題に医療機関群の「医療機能分化との整合性」を提起

 6月28日の診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会は、2014年度改定にかかわる算定ルールの見直しと医療機関群Ⅱ群の要件の見直しについて検討。併せて、14年度改定以降の課題についても議論した。
 事務局(厚労省保険局医療課)は、算定ルール等見直しの課題として、(1)高額薬剤に対応する点数設定方式の取り扱い、(2)DPC病床から亜急性期病床への転床への対応、(3)入院期間Ⅲ経過後の高額な材料・薬剤を用いた検査の取り扱い、(4)退院後3日以内に再入院となった場合の算定ルール、(5)持参薬への対応、の6点を提起した。
 (1)は、高額薬剤を使用する疾患について、在院日数の延長を抑止するために、入院期間が短くても要した医療費が償還できるよう、入院基本料を除く包括範囲の1入院あたり点数を入院期間Ⅰの点数に組込んだ点数設定方式をどうするかという問題である。
 この方式は、前回12年度改定で、試行的に22の診断群分類に導入された。
 12年度上半期のデータから、事務局は「試行導入した22の診断群分類のうち20で平均在院日数の短縮が認められた」とし、①当該方式の継続、②高額薬剤を使用する22以外の診断群分類にも当該方式を適用する、③高額薬剤だけでなく高額な材料を用いる検査等にも拡げる、ことを提案。分科会はこの提案を概ね支持、事務局に、次回会合にその具体案を示すよう求めた。
 (2)は、DPCを算定する病床から亜急性期入院医療管理料を算定する病室への転床が、入院期間Ⅱが始まる11日目と同Ⅲが始まる20日目に集中している事態にどう対応するか、という問題提起である。
 この問題は過去の中医協総会や最近の入院医療分科会でも取り上げられている。事務局は「転床の背景に点数の格差がある」と指摘、対応の必要を認めた。しかし、入院医療分科会で亜急性期の議論が行なわれていることから、「その議論の行方を見守りつつ、DPCとしての対応を考えていくのがよいのではないか」と説明。分科会もそうした方向を了承した。
 (3)は、特定入院期間が過ぎて出来高算定になってから高額な材料・薬剤を用いる検査が行なわれることへの対応を問うもの。
 すでに、悪性腫瘍患者への化学療法にかかわる分類や特定の薬剤(成分)名を冠する分類には、「入院期間Ⅲまでに当該検査が実施されなかった場合、Ⅲを超えた日以降に実施された当該検査の薬剤費、材料費は算定できない」というルールが導入されている。
 事務局の提案は同様ルールの適用を他の診断群分類にも拡大するというもの。しかし、一部の委員から「レセプトのチェックが難しい」という懸念も出たため、(2)と併せて、秋口に再度議論することで合意した。
 (4)の「退院後3日以内に再入院となった場合の算定ルール」に関しては、現在、前回入院の「医療資源を最も投入した傷病名」と再入院の契機となった傷病名コードの上6桁が同じ場合は前回入院と一連の入院であるものとみなし、入院期間の起算日は初回入院の入院日として算定する取り扱いになっている。
 事務局は、一連の入院とみなすか否かについて、①再入院時は「入院の契機となった傷病名」によって評価しているが、再入院時についても「医療資源を最も投入した傷病名」によって評価する、②「3日」という日数設定の是非、を論点にあげた。
 議論の結果、再入院時も「医療資源を最も投入した傷病名」で評価することは概ね合意されたが、「3日」の見直しに関しては現行どおりでいいという意見が大勢を占めた。

 

美原常任理事 「質」と「役割」を基準にⅢ群病院の分化再編を提起

 医療機関群Ⅱ群の要件に関しては、「①診療密度、②医師研修の実施、③高度な医療技術、④重症患者に対する診療の各実績要件がすべてⅠ群の最低値をクリアする」という現行方式を継続することが確認されている。
 問題は各要件の具体的な評価手法をどうするかという点で、事務局は②を除く各要件とも「現行評価方法の継続」を提起。②の医師研修の実施についてのみ、「協力型臨床研修指定病院の臨床研修医数は評価対象から除外する」と提案、分科会は事務局方針を支持した。
 この医療機関群のあり方に関連して、14年度改定以降の検討課題がとりあげられた。テーマは、①医師派遣機能の評価、②外科系以外の高度な医療技術の評価、③急性期病床の医療機能の分化との整合性の3点。
 医師派遣機能は、金田道弘委員(金田病院長)がⅡ群病院の要件および評価項目に位置づけるよう再三提起してきたもの。この日も、「後期研修ぐらいの時期に、例えば3ヵ月単位で地域研修を義務づけではどうか。大学病院に準じる機能の発揮によって地域も蘇り、医師も総合的に診る能力が身につく、すべてがうまくいくのではないか」と発言、急性期大型病院の機能に位置づけるよう提案した。
 外科系以外の医療技術の評価は、とくに工藤翔二委員(結核予防会複十字病院長)が、内科系の治療実績をⅡ群要件に組み込むよう求めてきた。いずれも、次期改定以降の課題ではあるもの、事務局として正式な検討テーマにとりあげた。
 最後の「急性期病床の医療機能の分化との整合性」は、一体改革が掲げる病床機能分化の追求に沿うもので、医政局で議論されている病床機能情報報告制度とそれにもとづくチーム医療ビジョン策定と連動するテーマだ。
 このテーマに関連して、美原盤委員(脳血管研究所附属美原記念病院・全日病常任理事)はⅢ群病院の再編の必要性をあらためて提起し、次のように論じた。
 「入院医療分科会の資料によると、7対1病院は大きく、平均在院日数の短い大規模病院と平均在院日数の長い小規模病院の2つに分かれるという。7対1の中には効率性が低く、複雑性も低い、肺炎等の患者が多い病院があるが、医政局の検討会の考え方によると、これらは亜急性期の病院に当たる。つまり、DPC病院の1部は亜急性的な機能をもっているということであるが、それと急性期機能とが一緒にⅢ群に入っているのはおかしいのではないか。Ⅲ群のあり方を見直し、しっかり分けることを検討していただきたい」美原委員は、また、亜急性的な機能をもつ病院を振り分ける一助として入院経路をDPCコードに組み込むことを提案。さらに、医療機関別係数が基礎係数に偏重し、機能評価係数Ⅱの比重が小さいなど、全体に大規模病院に有利な評価方式になっていることがⅡ群をめぐるDPC病院の確執の背景にあると指摘。
 「いい医療を提供する病院が報われる診療報酬にするべきである」と述べ、「機能評価係数Ⅱの点数配分」を見直すよう訴えた。
 これに対して、金田委員は、「Ⅱ群やⅢ群の病院は2次医療圏で急性期の中心的役割を果たしている。そこで、質だけの評価でいくと、質を追求するあまりに医療圏内で急性期病院同士の競争が起きかねない。質だけでなく、その医療圏で果たしている役割、つまり、質と役割の両面からの評価があってこそ、初めて、協調しながら、一緒に責任をもっていくシステム作りができる。そういう、役割を評価する視点を、とくにⅢ群の中に入れていく必要がある」という見解を表わした。