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ホーム全日病ニュース第805回/2013年7月15日号細部にわたる論点で様々な意見。...

細部にわたる論点で様々な意見。議論集約にはなお時間が?

細部にわたる論点で様々な意見。議論集約にはなお時間が?

細部にわたる論点で様々な意見。
議論集約にはなお時間が?

【医師臨床研修部会】
事務局は次々回に報告素案を用意。8月以降、全体像を基に各論を詰める議論

 医道審議会医師分科会の医師臨床研修部会は、6月27日の会合に京都府と青森県の各関係者を招いて、研修医募集定員数設定に対する意見をきいた。また、公立陶生病院(愛知県)から、名古屋大学方式にもとづいて実施されている同院の臨床研修に関する報告を得た。
 研修医の募集定員は、医師臨床研修制度が開始された2004年度からは一定の範囲で各病院が募集定員を自由に設定できたが、都市部病院への研修医集中を是正するために、10年度の研修から受入数等の実績等を踏まえて研修病院の定員数を決めるとともに、各都道府県には募集定員の上限を設けるなどの方式を導入する一方、これによって定員数が大幅に減ることがないよう激変を緩和する措置をとってきた。
 2015年度からの医師臨床研修制度見直しについて議論している医師臨床研修部会は、制度改正の見直しに伴い、「募集定員が前年度の内定者数を下回らないようにする」激変緩和措置を13年度をもって止めることで合意している。
 ヒアリングは激変緩和措置廃止に対する意見を聞くために行なわれたもので、現行方式によって定員数の増加が図れた青森県と激変緩和の廃止で定員数減少が免れない京都府を招聘した。
 京都府の説明によると、措置廃止が反映される15年度からの研修医の募集定員は、措置の有無によって29%(-82人)も変化するという。これは、また、13年度の採用実績(265人)からは32.0%(-85人)も落ち込むものであり、同じく影響を受ける東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の減少率が1桁から10%前後にとどまるのと比べても、「突出した影響を受ける」と説明した。
 このため、京都府は、措置廃止への対応として、①医師を養成するための医師派遣に対する評価(医師派遣加算算定方法の見直し)、②医師確保困難地域など地域医療の充実(地域枠加算の新設)、③国際的な医学研究への評価(医学研究加算の新設)を設け、募集定員数の調整を図るよう要望した。
 これに対して、青森県は、制度開始移行順調に募集定員数を増やしてきたが、現行制度になってからさらに定員枠を増やし、青森県医師臨床研修対策協議会による合同の取り組みの効果もあり、マッチング率も40%台から60%近くへと向上した結果、採用数(13年度実績で76人)も増加傾向で推移していることを明らかにした。
 激変緩和措置で合意していることもあり、窮状を訴える京都府の説明に、部会の委員からは特段の意見は出なかった。
 一方、公立陶生病院の酒井和好院長は、全国最大規模で知られる名古屋大学病院・関連病院の臨床研修ネットワーク(70病院)に参加している研修病院として、同院における「非入局スーパーローテート方式」にもとづく研修の現状と成果について報告した。
 「当院は定員16名にマッチング率は毎年100%。(3年目の先輩が必ず1名現場で指導する)屋根瓦方式のプライマリーケアとスペシャリティの融合に共感して、全国から研修医が集まってくる。しかも、過去5年次にわたって、8割が後期研修で引き続いて当院に残った」という公立陶生病院であるが、激変緩和措置の廃止に対しては、「我々のネットワークも定員が減る。地域医療に大きな影響が生じるとみている」と懸念を示した。
 ヒアリングが終わり、この日は、①研修医の処遇等の確保、②第3者評価、③都道府県の役割、④制度運用上の問題、⑤研修の中断と再開・修了、⑥地域医療の安定的確保、について議論した。
 第3者評価について、神野委員(恵寿総合病院理事長・全日病副会長)は、「研修病院の評価方法は多々あるだろうが、最初の試みとしては病院機能評価がよいのではないか」とあらためて提起した。これに対して、大学病院の委員は難色を示す意見を表明した。
 神野委員は、また、指導医に講習会受講を義務づける件を取り上げ、「これは必須とすべきだ。プログラム責任者の受講も、せめて努力義務ぐらいにはするべきではないか」と主張した。
 「研修の中断と再開・修了」に関しては、主に、女性研修医の出産・育児と鬱などのケースの取り扱いが議論された。
 現行の規定は、「中断とは途中で臨床研修を中止する場合を指し、原則として病院を変更して研修を再開する。未修了とは、研修終了の評価において、修了基準を満たしていない等の理由により管理者が当該研修医の臨床研修修了を認めないことをいうもので、原則として、引き続き同一の研修プログラムで研修を行なう」というもの。
 こうした規程に、神野委員は、「出産の場合は特にそうだが、病気で中断した場合も別の研修病院に移るというのはどうか。元の病院で再開させるべきではないか。また、中断というのは特殊なケースに限られるべきだろう。メンタルな病気の場合も環境が変われば改善されることもある」と疑問を投げかけたが、他の委員からも、「出産がなぜ中断になるのか」「出産と障害を同列にみるのはおかしい」などの疑問や批判が相次いだ。
 「地域医療の安定的確保」に関しては、主に、地域枠の取り扱いが論じられた。事務局も「マッチングの中に地域枠をどう位置づけるか。かつ、それはどういう枠組みであるのかをきちんと議論願いたい」と要請した。
 ただし、バリエーションに富む地域枠の実態は今ひとつ定かではない。委員からは「文科省と協議し、各大学に地域医療枠に関する実態を報告させるべきではないか」という注文も出た。
 「地域医療の安定的確保」に関連して、神野委員は地域医療支援センターを取り上げ、「都道府県に圏内拠点病院の医師を過疎地に派遣させる役割を課すことは可能なのか」と疑問を示した。
 ヒアリングに応じた青森県の担当者は「大学病院に対しては強制力がなければ難しい」と都道府県として率直な実感をのぞかせた答弁を行なったが、「医師の能力を見極める必要がある。医局が絡まないと派遣はムリだ」と醒めた見解を示す大学の委員もいた。
 桐野部会長(国立病院機構理事長)は「もう一度各論の議論を行ない、それ以降は、報告素案を基に全体像を描いた議論とし、とりまとめに入っていきたい」と述べ、8月以降、とりまとめの議論に入る方針を明らかにした。