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ホーム全日病ニュース第811回/2014年11月1日号新たな定員は東京、京都、大阪、福岡で減少。...

新たな定員は東京、京都、大阪、福岡で減少。大都市近郊は大幅増

▲医師臨床研修部会に臨む神野副会長(左から2人目)

新たな定員は東京、京都、大阪、福岡で減少。大都市近郊は大幅増

【医師臨床研修制度】
2015年度研修からの改正内容まとまる。パブコメ後に最終決定

 

 10月24日の医道審議会医師臨床研修部会は、医師臨床研修制度の2015年度研修からの改正について最終合意に達し、議論を終えた。
 「プライマリ・ケアの基本的な診療能力を身に付ける」という基本理念は堅持することで意見は一致したが、到達目標と到達度評価方式に関しては、医療の変化等を見据えつつ、次回見直しの5年後までに検討を行なうことにした。
 そのため、研修期間、プログラム内容、基幹型研修病院の要件など骨格部分の見直しは新たな到達目標の下であらためて検討するとされたため、制度の大枠は現行のまま15年度からの研修に臨むことになる。
 ただし、必修科目の指導医必置と指導医講習会の受講義務、プログラム責任者の受講努力義務、研修病院の第3者評価の努力目標化と将来的な義務化、防衛医大や自治医大を除く地域枠研修医のマッチングを介した研修病院確保など、細部は、少なからぬ点で改正方針が打ち出されている。
 一方、募集定員に関しては、10年度研修から適用された都道府県と研修病院の募集定員設定に対する激変緩和措置を13年度末で廃止することを確認。
 さらに、研修医分布の全国的な均衡を図る視点から、マッチングに参加する志望者と定員全体数の乖離を段階的に小さくする方針を打ち出し、都道府県別定員数算定方法の見直しを行なった。
 事務局(厚労省医政局総務課医師臨床研修推進室)が示した、都道府県別募集定員の新たな算定方式にもとづいた試算(別掲)によると、東京、京都、大阪、福岡の4都府県の15年度研修医募集定員数は13年度から減少。栃木、埼玉、千葉、山梨、兵庫など大都市に隣接する県を中心に増加をたどるなど、研修医の大都市偏在の是正が進められる。
 とくに京都府の削減数が大きく、委員からは“同情”の声も出たが、制度運営の安定性を全体として確保するためには止むを得ないというのが部会の判断となった。
 募集定員数は、今後5年をかけて研修志望数と定員数との差を現在の約1.237倍から約1.1倍へと圧縮していく。大都市の定員が少なくなる分、研修医は地方へ向かうというわけだ。
 部会は、まとめの最終段階で、基本理念にある「プライマリ・ケア」をめぐって興味深い議論を展開した。
 プライマリ・ケアという理念の堅持を確認する過程で、その意味について“統一見解”を明記すべきとの意見が大勢を占め、いったんは解釈を注記することで一致した。それが、解釈から参考となる見解の注記へと変わり、さらに、この日の議論で、参考となる見解注記も見送ることであらためて合意したのである。
 この問題で、委員を務める神野氏(社会医療法人財団董仙会理事長・全日病副会長)は終始一貫、「プライマリ・ケアの概念は時代とともに変わるもの。
 無理に定義したり、解釈を参照する必要はない」と主張し続けたが、結局、神野委員の言うとおり決着した。
 今回の見直しで、再指定のハードルが上がった以外、基幹型研修病院の要件は、「自院における研修期間は1年以上を目指す(ことが望ましい)」など、あり方の方向性は打ち出されたものの、具体的な変更はなかった。
 3,000症例数の要件は維持されるが、その柔軟な運用が認められた。ただし、専門病院の指定は事実上難しくなった。
 一方で、中医協付設のDPC分科会は、Ⅱ群から協力型研修病院を外す方向の見直しを企図している。したがって、Ⅱ群を目指す病院は基幹型研修病院への志向を強める可能性がある。
 こうした医療提供体制と診療報酬上の方向のずれについて、神野委員は「医政局と保険局はよく連絡し、整合性の確保に努めていただきたい」と注文をつけた。
 報告書案の末尾「終わりに」には「今回の制度見直しの施行後5年以内に所要の見直しを行う」旨が明記されているが、ここに続く段落として、「検討に際しては、どのような医師を育成すべきかを踏まえた上で、卒前教育、国家試験、専門研修、生涯教育との連続性の観点を十分に考慮すべきである」という一文が挿入された。
 前回(10月10日)に、小川委員(岩手医科大学理事長・学長)が挿入を要求したためであるが、この文章は、その直前の「4. その他」の「2)医師養成全体との関係」の「見直しの方向」に書き込まれた文章と主旨が同じであり、重複するものだが、「繰り返しではないか」と違和感を示す意見に、提案者の小川委員は「それだけ大事なものだ」と譲らず、やむなく採用されたものだ。
 大学病院の委員は、終始一貫、医師臨床研修の制度を医学部復権の方向で設計しなおすよう求めてきた。今回の見直しが大枠で据え置かれ、本格的な見直しが5年後に先送りされたのは、大学病院側と研修病院側との考え方の不一致を克服できなかったためであるが、大学病院の委員は、医学部教育の改革や専門医制度の開始を踏まえ、次回の見直しで、より専門医志向に応じた制度設計を期待している。そうした“執念”が「終わりに」の修正に反映された格好だ。
 部会は、この日示された文案の修正作業を部会長に一任し、近日中に意見募集にかけることを了承した。医師臨床研修部会は、パブコメ後に再度会合を開いて最終報告をまとめる方針だ。