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ホーム全日病ニュース第811回/2014年11月1日号「案1」は機能毎の基準病床数で規制、...

「案1」は機能毎の基準病床数で規制、「案2」は機能毎の基準で誘導

「案1」は機能毎の基準病床数で規制、
「案2」は機能毎の基準で誘導

【医療部会】
「都道府県知事は公的病院に医療機能の転換要請、私的病院には要請できる」案も

 

「地域医療ビジョンを実現するために必要な措置(必要な病床の適切な区分、都道府県の役割の強化等)及び新たな財政支援制度の創設について」(概要)

*厚労省が10月11日の医療部会に示した課題・論点の概要(1面記事を参照)

1. 必要な病床の適切な区分の設定及び病床機能報告制度・地域医療ビジョンとの関係
「必要な病床の適切な区分の設定」については以下の2案があると考えられる。
案1●医療法上の一般病床・療養病床について、現行の基準病床数に加えて、病床機能報告制度の医療機能ごとに区分し、各医療機能の基準病床数を定める。
(具体的内容)
・まずは、各医療機能の定性的な基準により病床機能報告制度を開始するが、次の段階で、医療法上の一般病床・療養病床について病床機能報告制度の医療機能ごとに区分し、各医療機能の基準病床数を定める。
・その上で、各医療機能の既存病床数が基準病床数を超えている場合には、当該医療機能の病床の新規開設・増床について、現行の基準病床数に基づく新規開設・増床の許可に係る仕組み(公的医療機関の場合は許可しない、一般医療機関の場合は勧告)を適用する。
案2●医療法上の病床区分は変えずに、病床機能報告制度の医療機能について現状を把握し、その結果を分析から定量的な基準を定めて各医療機能の必要病床数へと誘導していく。
(具体的内容)
・病床機能報告制度は、当初は各医療機能の内容は定性的な基準とするが、報告された情報を分析し、今後、各医療機能の定量的な基準(※)を定める。
※定量的な基準は、例えば、手術や処置等医療の内容を踏まえた指標により設定することを想定しているが、どの指標が良いのか等は、今後、病床機能報告制度の情報を分析して検討。
・定量的な基準は、地域において医療機能に著しい偏りがある等の一定の場合に、都道府県が政策的に一定の範囲内で補正することができる。
・その上で、診療報酬と新たな財政支援の仕組みとを適切に組み合わせて、必要な医療機能の病床数へと誘導していく。
※案1・案2のいずれにしても、各医療機能の基準病床数又は地域医療ビジョンの必要量は、都道府県が地域の事情に応じて一定の補正を行なうことができることを検討。
2. 都道府県の役割の強化等及び新たな財政支援制度の創設について
都道府県の役割の強化等及び新たな財政支援制度の創設について、以下のような内容が考えられるが、これらについてどう考えるか。
(1)医療計画の機能強化等
①医療計画の策定・変更時の医療保険者の意見聴取・医療計画を定め又は変更する時に、現在、都道府県ごとに設置されている保険者協議会の意見を聴くことにしてはどうか。
【課題・論点】
保険者協議会を法定化して機能を強化することが前提となる。
②機能分化・連携のための圏域ごとの協議の場の設置
・現在、5疾病・5事業・在宅医療のために都道府県が必要に応じて2次医療圏ごとに設けている圏域連携会議で、地域ごとの機能分化・連携の推進について議論してはどうか。
・この議論の場に、地域の病院の開設者等の医療関係者、都道府県、医療保険者の代表等、地域の機能分化・連携に係る主要な関係者の参画を求めてはどうか。
【課題・論点】
医療機能の分化・連携を2次医療圏ごとに協議する場を医療法上規定するべきか。
③医療と介護の一体的推進のための医療計画の役割強化
 都道府県が策定する医療計画と介護保険事業支援計画を、一体的・強い整合性を持った形で策定することとしてはどうか。具体的には、
・国が定める両計画の基本方針を整合的なものにして策定する
・現在、医療計画の期間は5年、介護保険事業支援計画は3年であるが、両者の整合を図るために医療計画の策定サイクルを見直す(両者の期間が揃うよう2018年度以降計画期間を6年とし、在宅医療など介護保険と関係する部分等は中間の3年で見直す)
・国、都道府県、市町村(介護保険事業計画を策定)において、こうした整合的な基本方針や計画を策定し、進めるための協議を行なう
・訪問看護など市町村の介護保険事業計画に盛り込まれた在宅医療サービスを確保するための取り組みを医療計画に記載すること等が考えられるのではないか。
【課題・論点】
 都道府県・市町村が協議する上で、既存の医療や介護に係る協議との役割分担を整理し、効率的に行なっていくことが必要。
④地域医療ビジョンの達成のための都道府県知事による診療報酬に関する意見提出
 都道府県が地域医療ビジョンを実現していく上で、診療報酬を活用して医療機能の分化・連携を推進していくことができるよう、現行の医療費適正化計画に係る都道府県の診療報酬への意見提出のような仕組みを導入することが考えられないか。
【課題・論点】
 医療費適正化計画との整合を図るとともに、医療費適正化に資する意見を提出することとするなど、医療保険財政への影響も踏まえた議論が必要ではないか。
(2)新たな財政支援制度の創設
 新たな財政支援の仕組みは消費税増収分を活用して設けることとし、医療機関の施設や設備の整備だけでなく、地域における医療従事者の確保や病床の機能分化及び連携等に伴う介護サービスの充実等も対象とする柔軟なものとすべきではないか。また、病院の機能転換や病床の統廃合など計画から実行まで一定の期間が必要なものもあることから、都道府県に基金を造成する仕組みとしてはどうか。
【課題・論点】
①消費税増収分を活用する前提として、地域医療ビジョン、介護保険事業計画等の策定を通じて、実効ある医療・介護サービス提供体制の改革の姿を示していくことが必要。
②地域医療再生基金、介護基盤緊急整備等臨時特例基金で実施している基盤整備との関係について整理が必要。
(3)病床の有効利用に係る都道府県の役割の強化
①一定期間稼働していない病床に対する都道府県知事による稼働・削減措置の要請都道府県知事は、公的医療機関等以外の医療機関の病床が、基準病床数を超えている地域で正当な理由なく一定期間稼働していないときは、医療審議会の意見を聴いて、当該医療機関の開設者等に、一定期限までに稼働させるか、削減の措置を講ずるよう要請することができるようにしてはどうか。
【課題・論点】
a. 一定期間稼働していない病床の定義をどうするか。
 今年度から、医療法の立入調査で「2013年4月1日時点で1年間稼働していない病床を除いた」稼働病床数を調査することにしているが、これと同様の考え方とするか。
b. 第5次医療法改正(06年)で導入した公的医療機関の稼働していない病床に対する削減命令の活用実績がない中で、まずは、これの活用を図っていくべきではないか。
②都道府県知事による医療機関に対する医療機能の転換等の要請・指示都道府県知事は、地域医療ビジョンで定めた必要量の達成に必要と認める時は、公的医療機関に、必要量に照らして過剰となっている医療機能から不足している医療機能への転換や回復期機能の充実等を指示することができるようにしてはどうか。公的以外の一般医療機関にも、過剰な医療機能からの転換等を要請することができるようにしてはどうか。
【課題・論点】
機能転換を要請・指示するとしても、医療機関の経営方針や経営改革の方向、また、開設者や医療従事者等の意向等も踏まえ、都道府県と関係者とでよく調整・協議してもらう必要がある。
【参考1】
公的医療機関に対する行政の関与(命令や規制)具体的には、医療法上、以下のものが規定されている。
①病床過剰地域における開設・増床の許可制限(医療法第7条の2第1項)
②稼働していない病床の削減の命令(医療法第7条の2第3項)
③医療従事者の確保等の都道府県の施策への公的医療機関の協力義務(医療法第31条)
④公的医療機関の設置命令(医療法第34条)
⑤公的医療機関に対する命令及び指示※(医療法第35条)
※建物・設備の共用、医師の実地修練等のための整備、救急医療等確保事業に係る必要な措置の実施に係る命令・指示