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ホーム全日病ニュース第811回/2014年11月1日号中医協総会2014年度改定の議論...

中医協総会2014年度改定の議論:厚労省在宅24時間対応と薬剤一元管理等、主治医機能の評価を提起

中医協総会2014年度改定の議論:厚労省在宅24時間対応と薬剤一元管理等、主治医機能の評価を提起

後期高齢者診療料とは異なる概念。支払側・診療側ともに否定的

10月9日●外来医療(3)主治医機能について

【論点】
 14年度改定における外来医療の課題は1月23日と6月12日に続く、3回目となる。
 1月23日は「複数の慢性疾患を持つ患者に対する適切な医療の提供と外来の機能分化のさらなる推進」が検討課題にあげられ、6月12日には「複数の慢性疾患を有する患者に対する主治医機能をもつ医師の総合的な評価」と「診療所の機能と初・再診料」が論点となった。
 この日は6月12日に提起した「主治医機能」について、事務局(厚労省保険局医療課)は、より踏み込んだ考え方を示した。それは、「主治医」を5つ機能にもとづいて評価する、したがって算定要件にしてはどうかという提起であった。
 具体的には、以下の機能を論点にあげた。
①対象医療機関と対象患者診療所と中小病院を対象とし、対象患者は高血圧症、糖尿病、脂質異常症や認知症を有する患者とする(年齢による区分は行なわない)。
②服薬管理院内処方等により、医師または配置薬剤師等が一元的な服薬管理を行なう。
③健康管理健康診断・検診の受診勧奨を行ない、その結果等をカルテに記載する。評価結果をもとに患者の健康状態を管理し、健康相談できる体制をとる。また、たばこ対策を行なう。
④介護保険制度の理解と連携要介護認定の主治医意見書の作成や居宅療養管理指導等の介護サービスを提供する等⑤在宅医療の提供および24時間の対応外来から在宅医療までの継続した医療の提供を行ない、24時間の対応を行なう(夜間の連絡先も含めて患者に対して説明と同意を求める等)。
 論点によると、かつての後期高齢者診療料を全年齢層に適用拡大した包括評価にみえる。
 ただし、対象疾患を生活習慣病と認知症に絞るのか、後期高齢者診療料並みに拡げるかは現時点で不明。また、対象医療機関に200床未満の病院を想定している点も後期高齢者診療料と異なる。また、生活習慣病管理料と対象疾患が重なるため、この導入は生活習慣病管理料の要件に影響を与えよう。
 後期高齢者診療料と大きく異なるのは、「主治医」に一元的な服薬管理を求めている点だ。これが薬剤を包括に含めることにつながるかは現時点で不明。
 いずれにしても、医薬分業がここまで普及した中、薬剤師を配置していない診療所にはハードルが高い話だ。
 9月25日付医政局総務課長通知(医政総発0925第9号)は、常勤医が3人超診療所の専属薬剤師設置義務に関する「都道府県知事の許可を受けた場合はこの限りでない」という但し書きの取り扱いに柔軟な対応を求めており、「主治医」評価に薬剤師の配置を求める方向性の保険局医療課と医政局総務課の間に、視点の違いがあるとも受け取れる。
 「主治医」評価の提案が後期高齢者診療料と決定的に異なるのは、主治医意見書の作成や居宅療養管理指導等介護保険サービスへの参入を求めている点だ。さらに、24時間の在宅対応を要件とみなしている点で、後期高齢者医療とは別のカテゴリーの導入を企図しているとも解釈できる。
 介護との連携および24時間対応には、中小病院と診療所を地域包括ケアに包含していく視点がある。とくに、主治医意見書や居宅療養管理指導はケアマネとの連携を促すということにもなる。さらに、24時間対応には、在支病・在支診を補完する在宅医療提供体制を整える意図がうかがえる。
【議論】
 診療側から示された「この提案がフリーアクセスの制限につながるのでは」という懸念に、宇都宮医療課長は「そういう体制は考えていない。かかりつけ医の機能も海外のかたちは違ってしかるべきだろう。適切に病院や専門医に紹介するかたちを推進していきたい」と否定した。
 支払側からは「院内処方の評価は医薬分業と矛盾しない範囲で考えるべきだ」という意見が示された。また、健診の受診勧奨を含む健康管理に違和感を訴える声もあがった。さらには、介護との連携で「地域ケア会議への出席も評価対象とすべき」との意見も。
 花井委員(連合)は「主治医のすべてに24時間対応を求めるのは難しい。地域の体制作りが大切だ」と論じた。
 そうした中、健保連の白川委員は「主治医機能を診療報酬にどう結びつけるかという難しい問題。どういうイメージをもっているのか」とたずねた。
 宇都宮課長は、「服薬管理は医薬分業を変えるものではないが、薬局がない地域もある上、分業の下で医師の薬剤への関心低下や他所での投薬との連携不足という問題がある。また、家族を支えるレスパイトという手段もあるのに、それを知らずに緊急入院を手配しかねないという面もある。こうした、現在は評価対象となっていない、様々な知識、情報、健康管理を含めたものを評価していく、出来高ではない評価もあるのではないか」と説明した。
 これに対して白川委員は、「主治医機能の評価は当然。だが、そのことと診療報酬上の評価は別だ。ここに書かれた1つ1つはどれもよいが、それを包括するとどうなるか、もっと時間をかけて論じるべきではないか。診療所の医師に薬剤管理を求めるのは勤務過剰ではないか。もっと機能分担と連携を考えて設計されるべきだ。効率化もあるが、しかし、質の担保ももっと大切ではないか」と、事務局提案に消極的な反応を示した。
 診療側の鈴木委員(日医常任理事)は、「主治医機能に何でも放り込まれたら診療所の医師は大変。ここには有床診や中小病院も入る。地域包括ケアの中で、診療所、有床診、中小病院をどう位置づけていくかを考えなければならない」と問題提起した。「1人の医師に何もかも期待できるのか」という疑問は、支払側からもあがった。
 森田会長(学習院大学教授)は、議論を「主治医機能の内容に反対はないが、それをどう評価していくか、併せて、かかりつけ医との関係をどう整理するという点が問題である」と整理した。

連携型含む機能強化型の要件強化を提案

10月16日●DPC評価分科会「中間報告」

 DPC評価分科会より、14年度改定に向けたDPC評価見直し検討に関する中間報告が行なわれた(中間報告の骨子は9月15日号と10月1日号を参照)。
 【議論】中間報告で「Ⅱ群病院から協力型臨床研修病院を外す」とされたことについて、事務局は「12年改定のデータで見る限り、この変更でⅡ群から外れる病院は1つである」ことを明らかにした。
 3日以内再入院について、検証調査結果は「病名が一致しないものが半分超えているが、4日目以降はその率が下がる」としている点について、白川委員は「これはルールの悪用ではないか」と指摘。関連して、コーディングミスとして発見された件数の報告を求めた。
 また、「病名が一致した場合に一連の入院とみなす」という規定に疑問を示し、「関連した病名とする方法もある。悪用されないような仕組みをお願いしたい」と見直しを求めた。
 地域医療指数の対象に在宅医療は入れないという考え方に、支払側の伊藤委員(津島市長)は、「中医協総会では、(在支病の)200床未満という枠を少し広げてはどうかという議論もなされている。総会の議論との整合性を確保したかたちで検討してほしい」と提起。
 小山DPC評価分科会長は、「在宅をしているDPC病院は非常に少ないが、在宅支援をしているところは多い。在宅支援の評価を考える方向で議論は進んでいる」と答えた。

10月23日●在宅医療(4)在支病・在支診と訪看ステーション

【論点】
 事務局は、在支病・在支診に関して、①連携型の機能強化型は各医療機関がそれぞれ実績要件を満たすべきとすべきではないか②常勤医要件を満たさなくても十分な実績をもつ在支病・在支診を評価してはどうか③機能強化型の実績要件(年間の緊急往診件数と看取り件数)を引き上げてはどうか④在支診の緊急時受け入れ先となっている医療機関の緊急時受け入れを評価してはどうか⑤緊急時受け入れ医療機関が在支診と共同で行なう訪問診療や往診を評価してはどうかを論点にあげた。
 また、訪問看護ステーションのサテライト設置を認める、その高機能の面について評価を設ける、さらに「機能強化型」を評価するという提案を行なった。また、外来部門を設けない在宅医療専門の保険医療機関を認めるべきかと提起した(この論点は未審議)。
【議論】
 診療側西澤委員(全日病会長)は前出①の考え方を強く否定。提案の底流にある実績主義に疑問を示し、「方向性として、在宅に取り組む裾野を広げる視点に立つべきである」と主張するなど、2年前に導入したばかりの機能強化型を安易につくりかえることに反対した。
 鈴木委員も在支診のハードルを上げることは「かかりつけ医機能の強化充実と逆行する」と否定的見解を示した。
 一方、支払側は、おおむね提案の方向で見直すべきとしたが、論点が多いこともあって、この日の議論は深まらなかった。同じく訪問看護ステーションをめぐる議論の時間がなく、今後にもちこされた。