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ホーム全日病ニュース第811回/2014年11月1日号「改定で自然増に上積みする状況にあるのか」...

「改定で自然増に上積みする状況にあるのか」

「改定で自然増に上積みする状況にあるのか」

【財政制度審議会財政制度分科会】
財務省がプラス改定を否定。病床数管理へ、診療報酬より基金方式の実効性を評価

 

 10月21日に開かれた財政制度審議会財政制度分科会に、財務省主計局は2014年度予算編成における社会保障の位置づけを示す資料を提示、その中で診療報酬改定に対する同省の考え方を提示した。
 14年度予算編成に関して、政府は、(1)社会保障支出も聖域とはせず見直しに取り組む(「経済財政運営と改革の基本方針」=6月14日閣議決定)、(2)年金・医療等の経費は、前年度当初予算に相当する額に自然増9,900億円を加算した額の範囲内で要求するが、自然増を含め、合理化・効率化に最大限に取り組み、その結果を14年度予算に反映させる(「14年度予算の概算要求に当っての基本的な方針」=8月8日閣議了解)という方針を定めている。
 14年度における年金・医療等の自然増のうち、医療は3,500億円、介護は1,500億円を占める。
 財務省は、①国民医療費が2000年度から2010年度までに約7.3兆円増加している、②13年度の国と地方の公費負担(予算ベース)は当初予算の約10.6兆円が約16兆円(国民医療費約42兆円の38.1%)にまで膨らんでいる、③そのうち医師等の人件費が47.7%、医薬品が22.1%を占めている(13年度)、④医療機関別には、病院50.4%、一般診療所22.4%というシェアである(10年度)、⑤国民医療費と介護費を合わせた名目GDPに対する比率は9.4%に達している(10年度)、⑥国民医療費の前年比伸び率は、介護保険制度創立で医療費の一部を移し変えた2000年度とマイナス改定(本体-1.36%、全体-3.16%)であった06年度を除くと一貫して名目GDPの伸び率を上回っている、ことなどを説明。
 さらに、13年度予算の医療費約42兆円を例にあげて、「診療報酬を1%引き上げると医療費は約4,200億円増加する」とも指摘。「自然増に加えて、さらに診療報酬改定により、それを上積みする状況にあるのか」と論じた。
 また、7対1の導入が病床の機能別分布を大きく歪めたことに言及。「診療報酬は一定の要件を満たせば算定できるため、ある診療報酬を算定する病床の数を制限することはできない。(2025年を見据えたときに)単に診療報酬の配分によって対応するということでは行き過ぎた医療提供体制の変化をもたらす可能性があり、まずは、医療法改正による病床の適切な区分の設定などによる実効的な規制手法を講じることが不可欠」という認識を披露。
 また、7対1病床の削減方針にも言及。
 それをもってしてもプラス改定の理由にはならないと断定。さらに、「医療提供体制の実状は地域ごとに異なっており、目指すべき方向性も地域ごとに異なる」が、現行診療報酬は全国一律が前提であり、国民会議が提起した「地域ごとの実状に応じた対応」はできないと論じた。
 では、どうすれば「地域ごとの実状に応じた対応」が可能となるか。
 財務省は、その方策として、①適切な病床区分の設定など実効的な病床数のコントロール、②将来のニーズも踏まえた地域医療ビジョンの策定、③診療報酬以外の財政支援手法という3つを示し、「医療提供体制改革の手順として、まずは、これら(①~③)の方策が適切に講じられるか、見極めていく必要(がある)」と整理した。

「資源・ニーズが異なる地域ごとに対応する必要」を提起

 この考え方は、10月11日の社保審医療部会に厚労省が提案した医療法改定事項と概ね一致するが、財務省は、こうした施策案を例示するにあたって、10月16日の同分科会ヒアリングで国際医療福祉大学の高橋泰教授(全日病広報委員会・介護保険制度委員会各特別委員)が陳述した見解を参考とした。
 2次医療圏ごとの人口構成・医療ニーズの変化と医療・介護提供体制の将来予測をデータベース化した高橋教授は、この4月19日の社会保障制度改革国民会議に参考人として出席し、「資源と需要には地域差があり、それを踏まえた“あるべき提供体制”を計画していかなければならない」などと提言した。
 高橋教授を推薦した同会議の権丈委員(慶大教授)は、その日の国民会議で、(1)病床機能情報報告制度の導入と地域医療ビジョンの前倒し策定、(2)それに沿った分化・連携を促すために消費税増収分を財源とする基金を創設する、(3)2次圏ごとの基準病床数を医療機能別に算定して地域医療計画に盛り込む、(4)都道府県を国保の保険者とし、保険医療機関指定・取消権限を与える等の施策を講じる、(5)医療機関の再編等が可能となるように医療法人制度を見直すことなどを提案、それらを医療法改正で明示すべきと論じている。
 その後の厚労省の動きは、概ね、権丈提言の方向で推移している。権丈教授は4月19日の提言をまとめる上で、高橋教授の2次医療圏ごとの提供体制将来予測を参照している。
 同教授の見解は、国民会議報告書に「国民会議の議論から資源の地域差が浮かび上がり、医療・介護の在り方を地域ごとに考えていく『ご当地医療』の必要性が改めて確認された」と書き込まれた。
 消費税増収分を投入する財政支援に関しては、国民会議報告書を引用した上で、それが地域医療ビジョンを前提とした話であることを指摘。その上で、こうした国民会議の議論は「消費税増収分を活用するか否かにかかわらず、医療提供体制改革とそれに伴う財政支援(診療報酬を含む)の関係一般にあてはまる」という認識を示した。