全日病ニュース

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出産育児一時金の42万円据え置きを決定

出産育児一時金の42万円据え置きを決定

【医療保険部会】
国保の都道府県運営で国と地方の協議進まず。保険料上限の引き上げも俎上に

 7月7日の社会保障審議会医療保険部会は、プログラム法にもとづいて事務局(厚労省保険局総務課)が提案した、(1)国民健康保険料徴収の賦課限度額と被用者保険標準報酬月額の上限の引き上げ、(2)所得水準の高い国保組合に対する国庫補助の削減について議論した。(1面に関連記事)

 保険料収入を増額させる手段は保険料率と賦課限度額の引き上げという2つであるが、保険料率の変更は被保険者全員に影響が及ぶのに対して、賦課限度額見直しの影響は高所得層にとどまる。
 国保料徴収の限度額と被用者保険標準報酬月額の上限は、所得に応じて保険料負担を上げても給付は診療報酬等にもとづいて一律になされるために、給付と負担のバランスが失われることで被保険者の納付意識に悪影響を及ぼす等の理由から設定されている。
 国保料の限度額(2014年度)は医療分67万円を含む年間81万円で、医療分の限度額でみると年間の給与収入1,000万円(給与所得780万円)以上が該当するが、その世帯の割合は2.66%に過ぎない。
 一方、2007年度以降据え置かれている健康保険の標準報酬月額の上限は121万円で、その該当者の割合は0.95%ときわめて少ない。
 したがって、両者とも上限の引き上げで増収となる保険料はそれほど大きな額とはならないが、社会保障制度改革国民会議報告書やプログラム法は、「世代内の公平を図る観点から」負担能力に応じた保険料負担を求める視点から、それらの見直しを提起した。
 議論において、被用者保険の委員は「法改正をしてまですべきことか」と慎重な対応を求めたが、他方で、国保の関係者は保険料率の保険者間格差が大きいことに触れ、「保険料賦課方式や保険料率の平準化を図る中で賦課限度額を見直さないと、年収500万円の人も1,000万円の人も年間81万円を負担するという矛盾が生じる」と指摘、拙速な対応を戒めた。
 一方、「国民健康保険組合に対する国庫補助の見直し」は、164(被保険者数302万人)ある国保組合に対する国庫支出金を減額するというもの。補助金は12年度で3,234億円あり、経常収入(8,284億円)の39%に達している。
 したがって、その減額は国保の各組合には大きな痛手となるが、国保組合の1人あたり保険料負担の平均は一般業種の組合の8割と低水準であることもあり、「国民の負担の公平を図る観点から」補助金を見直す提案に、日医と日歯の委員を除くと、特段の異論は出なかった。
 また、出産育児一時金に関して、事務局は現行42万円の据え置きを提案した。
 4月の医療保険部会は、在胎週数を32週以上、出生体重1,400g以上とする補償対象基準の見直し結果にもとづいて産科医療補償制度の掛金を3万円から1.6万円に引き下げて、15年1月以降の分娩から適用することを決めた。
 掛け金の減額にもかかわらず、出産育児一時金42万円を据え置くという提案は、前回の改定から4年半が経過し、平均的な出産費用は増加しているというデータにもとづくもの。
 この考えに保険者の委員は「納得できない」と反発したが、「次期見直しに向けて改定のルールを定めること等を条件に了承してはどうか」という遠藤部会長(学習院大学教授)の提案を受け入れたため、部会として42万円の据え置きを了承した。
 この日の部会に、事務局は「国保基盤強化協議会の中間整理案」を報告した。
 国保基盤強化協議会は、プログラム法に「財政運営をはじめとして国保の運営は都道府県が担うことを基本とし、その保険料の賦課・徴収、保健事業の実施等に関する都道府県と市町村の役割分担を明らかにする」ことが明記されたことを受け、国と地方3団体とで協議を重ねる場として今年1月に設置された。
 「中間整理案」は事務担当レベルによるWGの協議の結果をまとめたもので、今後、政務レベルの協議に移行するための中間まとめとなる。
 「中間整理案」は、「国保が抱える財政上の構造問題の解決を図ることが国保の運営を都道府県が担う前提条件」とし、「追加公費の規模も含めた財政基盤強化の具体策と効果を明らかにすることが必要である」としたが、医療保険制度改革の議論が進展していないことから、「現時点で追加公費の規模も含めた財政基盤強化の具体策を明らかにできる状況にはない」と公費投入の見通しを棚上げし、具体策も「例えば、財政安定化基金の創設や2年を一期とした財政運営の導入」などの例示にとどめた。
 その一方で、追加公費に関しては「後期高齢者支援金への全面総報酬割を導入した場合に生じる国費を活用する」可能性に言及した。