全日病ニュース

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「地域における公益的活動の実施義務明記を検討すべき」

「地域における公益的活動の実施義務明記を検討すべき」

【社会福祉法人のあり方見直し報告書】
「福祉の実績関心ある者が参入できる仕組みとなるよう」認可要件の見直しを提起

 6月16日に開催された「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」は、2013年9月から12回にわたって議論を重ねてきた社会福祉法人制度見直しの方向性に関する考え方をまとめ、厚労省は7月4日に報告書を公表した。
 社会福祉法人に対しては、11年に「多額な内部留保をためこんでいる」という批判をなされたことを契機に批判が強まり、13年6月の規制改革実施計画で財務諸表の公表が、同月の日本再興戦略では財務諸表公表と規模拡大など経営高度化の仕組みの構築が、さらに、8月の社会保障制度改革国民会議報告書では、医療法人ともども法人間合併や権利移転ができる制度改正と非課税にふさわしい社会貢献が提言されるにいたり、その後も、規制改革会議で介護事業等における株式会社やNPOとのイコールフッティングについて検討が重ねられ、現在にいたっている。
 こうした指摘を受け、厚労省は検討会を設置して多面的な見直しを行なった結果、(1)地域ニーズへの対応、(2)財務諸表等の開示、(3)ガバナンスの確保、(4)他経営主体との公平性(イコールフッティング)などの論点を中心に、制度改革の方向性をまとめたもの。
 今後、厚労省は報告書に沿って15年の通常国会に社会福祉法改正案などを提出するとしている。報告書に盛り込まれた論点は要旨以下の通り。  

社会福祉法人制度の見直しにおける論点(要旨)
*検討会報告「社会福祉法人制度の在り方について」から

1. 地域における公益的な活動の推進
・社会福祉法人に地域における公益的活動の実施義務を明記することを検討すべきである。
・地域における公益的な活動を特別の事情なく実施しない法人は行政指導の対象とすることを検討するべきである。

2. 法人組織の態勢強化
・理事等の執行権限とこれに応じた責任を明確にする。
・非営利法人としての活動を外部・地域に「見える化」し、第3者の目による点検や評価をいつでも可能とするなど、法人活動の透明性と信頼を高める。
・すべての社会福祉法人に評議員会を設置することを検討すべきである。複数の社会福祉法人が共同で評議員会を設置する仕組みも検討するべきである。
・一定規模以上の法人には、理事会の下に法人本部事務局を設置するなど、組織の見直しを検討するべきである。
・資金管理を施設単位から法人とすることを検討するべきである。
・法人運営に関する理事の損害賠償責任、特別背任罪の適用等を、併せて、賠償責任補填の考え方の適用を検討すべきである。

3. 法人の規模拡大・共同化
・合併・事業譲渡の要件や手続の見直しを検討するべきである。
・組織再編の手段として分割の手続を検討するべきである。
・経営者は複数法人の理事を兼務できるよう、必要な規制緩和を検討するべきである。
・社会福祉法人は事業から生じた剰余金を法人外へ拠出することができないが、社会福祉事業や地方公共団体が認定した事業には拠出できるよう、規制緩和を検討するべきである。
・複数の非営利法人が社団型の社会福祉法人を設立できる仕組みを検討するべきである。
・社団型の社会福祉法人に評議員会の設置する仕組みを検討するべきである。

4. 法人運営の透明性確保
・全ての社会福祉法人は財務諸表等をホームページで公表すべきあり、財務諸表等の公表は法律上の義務とすることを検討するべきである。
・剰余金については、目的を持った積立として整理することや積立の目的や積立額について、法人が利用者や地域住民などに説明責任を果たす仕組みを検討するべきである。
・社会福祉法人に定款や役員名簿、役員報酬規程等の公表の義務付けを検討すべきである。
・社会福祉法人に対する補助金の額を公表することを検討すべきである。
・客観的指標を用いた法人の経営状況診断を行ない、地域住民等への説明責任や社会福祉法人経営支援に資する仕組みを導入するべきである。

5. 法人の監督の見直し 
・財務に係る監査については、外部監査の活用を積極的に図るなどの見直しを検討するべきである。
・法人監査の中で、定款内容や理事会等の開催状況だけでなく、地域における公益的な活動の実施状況やサービスの質向上の取組も確認する等、監査の仕組みの変更を検討するべきである。
・社会福祉法人の設立認可は資産だけを基準にしているが、それに加え、NPO等における事業実施やボランティア等での活動実績を重要な要件とするなど、福祉への実績あるいは関心・理解のある者が参入できる仕組みとなるよう見直しを検討するべきである。
・一定の規模以上社会福祉法人には公認会計士等の専門家による外部監査を義務付けることを検討するべきである。
・会計帳簿は財務諸表の作成元となる書類であり、適時・正確な会計帳簿が作成されることが重要であるため、社会福祉法においても必要な法令の整備を検討するべきである。
・所轄庁だけでなく、国も全社会福祉法人の現況を把握する仕組みを構築するべきである。
・所轄庁に提出する事業計画書に受審の有無を記載させるなど、多くの法人で第3者評価の受審が進むよう具体的な方策を検討するべきである。
・ISOや地域で社会福祉法人の取組を評価する仕組みなど、福祉サービスの質を担保する方法として広義の第3者評価の枠組みを活用していくことを検討するべきである。