全日病ニュース

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4会員病院が地域包括ケア病棟(病床)届出の根拠等を披露

4会員病院が地域包括ケア病棟(病床)届出の根拠等を披露

【全日病の経営セミナー】
「地域包括ケア病棟への移行」に150人の参加。8月上旬に同内容で2回追加開催

 全日本病院協会は「2025年に生き残るための経営セミナー」の第3弾として「地域包括ケア病棟への移行」というテーマを選び、7月9日に本部会議室で開催した。
 セミナーで、地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)の選択事例として4つの会員病院が、届け出を決めるにいたった背景と同病棟(病室)活用のプランを披露。また、それらの施設基準や算定要件に関する参加者の細かな質問に厚労省の担当官が答えた。
 地域包括ケア病棟に対する会員病院の関心はきわめて高く、定員100人に300人を超える申込みがあったため、急遽定員を150人に増やして対応した。このため、執行部は、8月7日と8日に、同じ内容のセミナーを2回追加開催することを決めた。  

 この日のセミナーには厚労省保険局医療課の田村圭主査が招かれ、14年度改定で新設された地域包括ケア病棟(病室)の特徴と要件のポイントを説明、疑義解釈における重要箇所を解説した。
 その中で、これまで、①急性期からの受け入れ、②緊急時の受け入れ、③在宅・生活復帰支援の3つとされてきた地域包括ケア病棟(病室)の機能を「データ提出を含めた4つが主な役割である」と述べ、入院患者データの収集によって「亜急性期・回復期」の患者像と医療提供内容を分析していくことが厚労省にとって重要な課題になっているとの認識を吐露した。
 事例紹介では、恵寿総合病院の神野正博理事長(全日病副会長)と芳珠記念病院の仲井培雄理事長が地域包括ケア病棟入院料について、大倉山記念病院の西本育夫事務長と寿康会病院の戸口慶応医事課長が地域包括ケア病棟入院医療管理料について、各病院が置かれた環境と医療資源の実態と今後の展望を踏まえた選択動機等を具体的に語り、ケースメソッドとした。
 いずれも、医療提供の確かな理念と冷静なケースミックス分析、そして医療環境の変化に対する予測に支えられた決断であることがうかがえる、説得力ある事例発表であった。
 その中で、神野副会長は、「7対1は普通の病院に過ぎない。高度急性期をするならそれ以上の配置が必要となる」と指摘した上で、「今後は、例えば、HCU加算と地域包括ケア病棟(病室)が組み合わさっていく可能性もある」と、今後の機能分化と連携に新たなモデルが増えたとの認識を披露した。
 さらに、医療と介護を地域で連携させる地域包括ケアの視点から同病棟の役割を洞察し、「包括というが、実は統合が重要となる。院内で、地域で、どう統合した意思決定をつくっていくか。つまりはガバナンスが求められる」のが地域包括ケアであり、地域包括ケア病棟であり、医療と福祉の連携であり、かつ、それらを成功させるカギであると述べた。
 グループ内に高度急性期を含む医療機能をまんべんなく整備してきた芳珠記念病院の仲井培雄理事長は、今後は「高度急性期は得意分野に注力」し、その分他機能の質量アップに力を注ぐとともに、他との連携を活かしつつ、DPCから地域包括ケア病棟に移行する患者の流れを療養病床や老健等を加えた流れとし、それを地域に広げて「地域内の患者の流れを創る」ことが大切と語り、「これまでの自院はデパート型ケアミックス病院であったが、今後は、地域包括ケアミックス病院になる」と宣言。その成功の「カギはガバナンスである」とした。

 

医療保険・診療報酬委員会 地域包括ケア病棟の疑義解釈を再度整理。後日会員に公表

 同セミナーでは、事前に参加者から地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)に関する質問をもらい、医療課の田村主査から回答を得た。
 しかし、中には即答できずに持ち帰るという難問もあった。また、参加者から「地方厚生局の解釈と異なる」と指摘される疑義解釈もあった。
 こうした、今後も、医療課による疑義解釈の追加が見込まれる地域包括ケア病棟をめぐる算定要件の問題点について、この日のセミナーを担当した医療保険・診療報酬委員会(委員長・猪口雄二副会長)は「委員会で整理した上であらためて厚労省に投げかけ、正式な回答を得た後に、会員に発表するようにしたい」としている。
 さらに、不明な解釈に拘泥する地方厚生局についても「委員会に相談いただければ、我々が間に入って医療課の指導を得るなど、解決に努めたい」(猪口副会長)と述べた。

 

緊急調査205病院が地域包括ケア病棟(病室)参入を予定

 7月9日の「地域包括ケア病棟への移行」に関する経営セミナーの冒頭で挨拶した西澤会長は、全会員病院を対象に、地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)の届け出に関する緊急調査を行なったことを報告、その中間集計の一端を明らかにした。
 調査は6月末に実施され、7月8日までに545病院から回答を得た。
 その結果、すでに44病院が届出を終えており、その内訳は入院料が20病院(うち療養は1病院)、管理料は24病院であった。
 また、今後の届け出を予定しているのは161病院で、入院料は66病院(療養は10病院)、管理料は95病院という内訳であった。
 この結果、計205病院が地域包括ケア病棟(病室)への参入を見込んでいることが判明した。