全日病ニュース

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公的保険外の新産業創出や医療の国際展開等で中長期の施策

公的保険外の新産業創出や医療の国際展開等で中長期の施策

【「健康・医療戦略」案】
「健康・医療戦略」案を意見募集。閣議決定へ

 内閣官房の健康・医療戦略室は7月4日に「健康・医療戦略」案を発表し、意見募集を開始した。7月14日まで受け付ける。意見募集を経て「健康・医療戦略」案は閣議決定にもちこまれる。
 「健康・医療戦略」は先の通常国会で成立した健康・医療戦略推進法にもとづいて策定されるもので、健康・医療にかかわる、日本医療研究開発機構(来年4月誕生)を活かした先端的研究開発の施策とともに産業競争力向上と新産業創出そして国際展開に関する基本的施策等を総合的・計画的に推進する中長期の計画をまとめたもの。
 10年程度を視野に入れつつ、2014年度からの5年間を対象としている。策定から5年後をめどに見直しが行なわれるが、フォローアップの結果によっては随時見直される。
 健康・医療戦略は、6月10日に設置された、全閣僚を構成員とし、内閣総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部が推進にあたる。健康・医療戦略担当大臣には菅義偉内閣官房長官が任命されている。
 「健康・医療戦略」案の骨子は以下のとおり。  

「健康・医療戦略」案から

○健康・医療戦略の位置付け
日本経済再生に向けた成長戦略「日本再興戦略」が2013年6月に閣議決定され、「日本産業再興プラン」「戦略市場創造プラン」「国際展開戦略」の3つのアクションプランが掲げられた。その「戦略市場創造プラン」に「国民の『健康寿命』の延伸」が掲げられ、2030年の在るべき姿として、
①効果的な予防サービスや健康管理の充実により、健やかに生活し、老いることができる社会
②医療関連産業の活性化により、必要な世界最先端の医療等が受けられる社会
③病気やけがをしても、良質な医療・介護へのアクセスにより、早く社会に復帰できる社会の実現を目指すこととされた。
 14年6月24日に「日本再興戦略改訂」が閣議決定され、引き続き「国民の『健康寿命』の延伸」実現に向け、「公的保険外のサービス産業の活性化」等について、新たに取組むべき施策が掲げられた。
 今般、健康・医療戦略推進法に従い、本戦略を策定する。

□世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研 究開発等に関する施策 (略)

□健康・医療に関する新産業創出及び国際展開の促進等に関する施策
【健康・医療に関する新産業の創出】

○新事業創出のための環境整備
・「医・農商工連携」など、地域を活用した産業育成を図るため、地域版「次世代ヘルスケア産業協議会」の全国展開を図り、新事業に関するモデル実証事業を支援する。
・高齢者自身やNPO、ボランティア、社会福祉法人、民間企業等による多様な生活支援サービスを充実する。
・自治体による新しいヘルスケア社会システム(公的保険外の民間サービスの存在を考慮した地域保健等)の確立を目指す。
・介護・医療の関連情報を国民も含めて広く共有(「見える化」)するためのシステム構築等を推進するとともに、地域包括ケアに関わる多様な主体の情報共有・連携を推進する。
・医療機関と連携した生活習慣病の基礎疾患に関する重症化予防事業等を実施する。また、糖尿病が疑われる者等を対象に「宿泊型新保健指導プログラム(仮称)」を本年度に開発し、試行事業等を経た上で、その普及促進を図る。
・各保険者によるレセプト・健診情報等を活用した「データヘルス計画」の作成・公表を行い、データ分析に基づく保健事業の実施を推進する。
・特定健診の受診率向上に向けたインセンティブであるヘルスケアポイントに関する実証事業を実施する。また、後期高齢者支援金の加算・減算制度について具体策の取りまとめを行う。
・健康投資を行う企業が評価される仕組みとして、東京証券取引所における新たなテーマ銘柄「健康経営銘柄(仮称)」の設定、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」やCSR報告書等への「従業員等の健康管理や疾病予防に関する取組」の記載を進める。
・企業・健康保険組合の健康投資を評価し、また、健康増進に係る取り組みを企業間・健康保険組合間で比較可能とする指標を構築する。
○国際医療事業を通じた国際展開
・MEJ(メディカルエクセレンスジャパン)を国際医療事業推進の中核組織と位置づけ、医療サービス等の国際展開に向けて、我が国の医療機関や企業等が海外で自立的・継続的な形で医療サービス事業等を提供する拠点構築等を支援する。
○高齢者等が安心して健康に暮らせる住宅・まちづくり・交通の実現
・民間資金の活用を図るため、ヘルスケアリートの活用に向け、高齢者向け住宅及び病院(自治体病院を含む)等の取得・運用に関するガイドラインの整備、普及啓発等を行う。
○医療・介護・健康分野のデジタル基盤の構築
・健康・医療戦略推進本部の下の「次世代医療ICTタスクフォース」を「次世代医療ICT基盤協議会(仮称)」へと発展的に改組する。
・地域包括ケアを行うため、医療データと介護データの共有化に必要な標準化を行う。
○医療適正化と国民の健康増進の総合的な推進
・DPCデータをレセプトと同時にオンラインで厚労省に提出できるように検討する。急性期病院に加え、慢性期病院等についてもDPCデータによる集計・分析を試みる。
・レセプトデータ、特定健診データ等を連携させた国保中央会の国保データベースシステムを市町村国保等が利活用し、地域の医療費分析や健康課題の把握等の実施により、医療介護情報の統合的利活用を推進する。
○達成すべき成果目標
(2020年までの達成目標)
・健康増進・予防、生活支援関連産業の市場規模を拡大(4兆円→10兆円)
・海外に日本の医療拠点を創設(2カ所→10カ所程度)(2020頃までの達成目標)
・健診受診率(40~74歳)を80%(特定健診を含む)(2030年までの達成目標)
・日本の医療技術・サービスが獲得する海外市場規模を5兆円
・国民の健康寿命を1歳以上延伸
・メタボ人口を2008年度比25%減